Brisagram! 海辺の草こよみ vol.13

ヨモギの春 その2 ーヨモギ染めー

海を臨む森のなか、季節の草に囲まれて草とともに暮らす草文化探求の矢谷左知子さんの湘南の自然の中での
暮らしの一コマをお伝えします。


煮出し大
蓬(よもぎ)は染めの素材としても大好きな草です。

草で染める、
それは命のうつしかえ。
野生の草の命をいただいて、その命を繊維に移しかえる、映しかえる・・
そうした営みだと思います。

その季節のいっとき、
そして、草のいっとき
そのタイミングだけに出る色があります。

自然は毎年、同じように見えて、同じことは決してありません。
冬が長い年、春が遅い年、
その年によって植物たちは、冬から春への成長をコントロールしていきます。
当然含まれる色素も違ってくるのです。
そのときそのときに出る色をただ、いただくだけ。

黄

春一番のヨモギを染める時は、一瞬、真黄色の色素が現われることがあります。
そうなれば、ライムグリーンの色を見ることが出来る、そのサインです。
この色は、春先のなかでもほんの短い期間だけ、
その前でも後でも、こんなに鮮やかな色は出ません。
でもこれも、一回目だけの色。
何度も染め重ねを必要とする、植物染めでは、そのうちに空気ともなじみ、
初々しい命の色は、落ちついた鼠緑になっていきます。
それも美しい。

糸染め

ヨモギカラー
染めはじめはライムグリーン!

植物染めは、その植物を煮出しながら、一日をかけて、場合によっては何日も、染め重ねていくのですが、
その天然のアロマを一日中、全身で浴びるのはほんとうに心地よいものです。
毛穴からたくさんの草の精分が身体中に満ち渡るようで、
染めが終ったあとは、なんともいえない、リラックス感、
ハーブ湯のお風呂上がりのような、ほぐれた気分となります。
よい労働です。

布
すべてヨモギ染め。媒染で違います。

自然の染めは、染料となる草+媒染剤との合作で出来上がります。
媒染というのは、発色と定着をさせるために、染めの前後に、鉱物系の液につけ込む作業のことです。
私の場合は、排水や身体への影響を考え、たとえ舐めてもだいじょうぶなものだけを自作して
使っていますが、同じ植物で染めても、媒染材が違うと、異る色が引き出されます。
植物染めは、植物と鉱物の合作でできあがる、地球からの贈り物だと思います。

ふだん私たちは、服やタオルや布団や、肌につけるもののほとんどを
化学物質で染めたものに囲まれていますが、
すべてが天然のものだった江戸時代までの人の暮らしや精神性は、
もしかしたら私たちの思いもよらないハイレベルなものだったのではないかしらん、と、
ふと想像してみたりします。

シャツ
春のヨモギで染めたシャツ

文・写真 矢谷左知子


「草講座」葉山芸術祭

糸


ことしも葉山芸術祭がはじまります。
私も5月に連続の「草講座」をします。
野生の草での染めや糸つくり、野ヨモギからモグサつくり・・たくさんの草仕事。
おしらせは随時更新しますので、ご興味のある方は芸術祭webサイトをご覧下さい。
矢谷左知子 プロフィール

草文化探求 / 草の翻訳
身の周りの野生の草を主題に、草から繊維をとり糸にして布を織る「草の布」の制作を長年。近年は草をテーマに、染織はもとより食や癒、道具、暦などさまざまな草文化の探求とワークショップ、ナチュラルなグラフィックデザインの仕事などしています。
海辺の山の中の一軒家に住んで、人よりも草や小動物や星のほうが近い暮らし。海で泳ぐのが大好き。山をうろつくのも大好き、
いい年をしてスラックライン(ツナ渡り)も得意です。
時おり自宅「草舟 on Earth」でワークショップ
時々、逗子CINEMA AMIGOで「草ランチ」を出しています。

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