Brisagram! 海辺の草こよみ vol.32

秋草のあじわい

季節の草に囲まれて草とともに暮らす草文化探求の矢谷左知子さんの湘南の自然の中での暮らしの一コマをお伝えします。
すすき原

台風一過のよいお天気でしたね。
思ったよりはあっさりと通過した台風でした。
とはいえ、家のメインロードである山道には大きなタブの枝が根本から折れて道を塞いでしまいました。
私としてはワクワク。これでもいいのです。
つくづくワイルドな暮らしが好きなようです。

みなさんのところは大丈夫でしたか。

今宵は旧暦の9月13日、十三夜ですね。
十五夜は旧暦の8月15日で、今年は9月の9日でした。
それを「中秋の名月」と呼びますが、十三夜は「後の月」。
また、季節がら「栗名月」ともいいます。
今日はちょうど栗を茹でたので、お月見団子のかわりに13個の栗とススキを月の見える窓辺にお供えしています。

栗

十三夜とは、秋の七草をお供えして、月をお迎えする風習です。
十五夜の時季にはまだ夏の気配ですが、
十三夜の頃には秋風も吹き、空気も澄んで一段と月が輝きを増します。

秋の七草は
薄(すすき)
葛(くず)
女郎花(おみなえし)
萩(はぎ)
撫子(なでしこ)
藤袴(ふじばかま)
桔梗(ききょう)
と言われています。

春の七草はどれも食べられる草、出始めの新芽で若々しいことに比べて、
秋の七草は食べるものではなく、愛でるもの。
そしてどれも成熟し、今年のその季節を終えて、地上から消えていく準備をしているものたち。
それぞれ風情や気品のようなものを感じます。

さてしかし、
私の周囲にいてくれるのは、そんな七草には数え入れてもらえない草たち。

でもそれぞれが、その季節を精一杯生きて、
終る準備をしているところです。

虫食い

ドクダミ

分類して楽しむのは人間だけ、
草たちはみな等しく味わい深い存在。

草がその生を閉じるこれからの季節、
どれもが、驚くほどの造化の妙を見せてくれます。

お月さまと共に、
たっぷりと堪能することにいたしましょう。

やぶまお チカラシバ


文・写真 矢谷左知子


矢谷左知子 プロフィール

草文化探求 / 草の翻訳
身の周りの野生の草を主題に、草から繊維をとり糸にして布を織る「草の布」の制作を長年。近年は草をテーマに、染織はもとより食や癒、道具、暦などさまざまな草文化の探求とワークショップ、ナチュラルなグラフィックデザインの仕事などしています。
海辺の山の中の一軒家に住んで、人よりも草や小動物や星のほうが近い暮らし。海で泳ぐのが大好き。山をうろつくのも大好き、
いい年をしてスラックライン(ツナ渡り)も得意です。
時おり自宅「草舟 on Earth」で草のワークショップ
時々、逗子CINEMA AMIGOで「草ランチ」を出しています。

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