Brisagram! 海辺の草こよみ vol.42

草の布 紙の布

季節の草に囲まれて草とともに暮らす草文化探求の矢谷左知子さんの湘南の自然の中での暮らしの一コマをお伝えします。
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ことしも葉山芸術祭が始まります。
私は実に第一回目から参加・・途中お休みした年もありましたが、ことしはなんと23回目。
歳月の早さに驚いてしまいます。

今日はすこし宣伝になりますが、そのお知らせをさせていただきます。

今年は「草ギャザリング」と称して、前半に作品の展示、後半に草のワークショップをします。
展示のほうは、私の「草の布」と、少しだけ母の「紙の布」。
「草の布」展示は1993年から2005年までの野生の草の織物の作品。
今回少しだけ、亡き母の作品、紙布の着物と帯も展示させていただきます。
私の草の織物はもうすでにご覧いただいている方もいらっしゃるかと思いますが、母の紙布は十数年ぶりに公開いたします。

紙布とは和紙を細く裁断し、縒りをかけて紡いで糸にし、草木で染めて織り上げるという、
気の遠くなるような工程をともなう工藝です。
そもそもは反古紙を捨てずに再生する、究極のリサイクル、江戸時代までは普通に行われていました。

母は専業主婦でしたが、私と同じくその技法を独学で、素材に聴くスタイルに徹し、
50歳を超えてから取り組み始めた紙布の織物作品に於いて、信じ難い丹精な手仕事を成し遂げました。
しかしながら娘の私が言うのも憚られることですが、大変に謙虚な人で、世に問わない、
ということを課して日々製作だけに打ち込む人でした。

銀花
季刊 銀花」1996
 写真:(C)小林庸浩


私の取材に来られていた工藝の本の方が、母の作品を見て驚嘆し、
世に知られていない人でこんな人がいたのか、と、特集でとりあげてくださったこともありました。
でもその後のさまざまな問合せやオファーには固辞し、ただ紙布つくりに明け暮れる人でありました。
質の高い紙布の着物と帯を、短い間で膨大に織りあげ、
突然の病で、駆け抜けるように逝ってしまった母、
鶴の恩返しのお話のように、織ることで精根つかい果たしたと思いました。
それほどの作品を、どこに発表するわけでもなく作り続けた人でした。
私に到底かなうことなりません。

そんな母を無理やり引っ張り出して、生前二度だけ母娘展をしたことがあります。
今回は没後初めて、ほんの少しだけのちいさな母娘展です。
この母の丹精な手仕事をご覧いただけましたら幸いです。
詳しいことはこちらをどうぞ。

dm
過去の母娘展のDM 1997
写真:(C)小林庸浩

また、草のワークショップにつきましては以下のようなことをしています。
身の周りの野生の草を主題に、草から授かる智慧を、実際に草を収穫するところから実践していきます。
ご興味ある方はどうぞご参加くださいね。

お申し込みはこちらのメールフォームよりどうぞ。


チラシ

*紙布
和紙を細く切り、縒りをかけて糸に紡ぎ、草木で染めて織った布。夏は涼しく冬は暖かく、木綿と同様丈夫で、より軽く空気をまとう
日本のすぐれたの智慧の織物です。


文・写真 矢谷左知子

草の布、紙の布の写真:小林庸浩 野寺治孝 
矢谷左知子 プロフィール

草文化探求 / 草の翻訳
身の周りの野生の草を主題に、草から繊維をとり糸にして布を織る「草の布」の制作を長年。近年は草をテーマに、染織はもとより食や癒、道具、暦などさまざまな草文化の探求とワークショップ、ナチュラルなグラフィックデザインの仕事などしています。
海辺の山の中の一軒家に住んで、人よりも草や小動物や星のほうが近い暮らし。海で泳ぐのが大好き。山をうろつくのも大好き、
いい年をしてスラックライン(ツナ渡り)も得意です。
時おり自宅「草舟 on Earth」で草のワークショップ
時々、逗子CINEMA AMIGOで「草ランチ」を出しています。

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