楽しいが一番!自分らしく生きるための学び場『マナビノキ』

 鎌倉浄明寺、バス停「泉水橋」から徒歩1分の場所に、木材をふんだんに使った素敵な建物が誕生しました。ここは小学生を対象としたアフタースクール『マナビノキ』。古民家をリノベーションしたという心地よい空間では、子どもたちが様々な探究型プログラムを楽しみます。

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子どもの「知りたい」「やりたい」を一番に

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 子どもたちの「生き抜く力を育む」ため、文部科学省が示す教育目標のひとつである「主体的・対話的で深い学び」は、2020年に改訂される学習指導要領においても重要な位置付けとなっています。これを受け、学校や様々な教育施設、団体、塾等でも「主体的・対話的で深い学び」をコンセプトとした授業が展開されています。
 『マナビノキ』の代表を務めるのは、14年間小学校教諭として教鞭を執っていた末原絵美さん。日々、子どもや保護者と接するなかで、かけがえのない学びや経験を得る一方で、さまざまな課題や問題点を感じたと言います。そこで末原さんが新たに立ち上げたのが『NPO法人マナビノキ』。子どもたちの「知りたい」「やりたい」を通して、自分らしく生き抜く力をつけるための探究型プログラムを展開しています。

ーーー「マナビノキ」で大切にしていることはどんなことですか?また、ここはアフタースクールとしての役割も担うそうですが、子どもたちは日々、どのような活動をするのでしょうか?

末原さん:今の子どもたちは、与えられることが多い環境にいます。テレビやインターネット、ゲームなど、身の回りが刺激的なもので溢れていて、常に誰かから指示されなければ何もできない状態だと思うんです。自分から「何かをしたい」と思えない。ですから、私は子どもたちが来ると必ず、「今日は何をやりたい?」と聞くようにしています。自分でやりたいことを考えさせるんです。自分で選ぶことで責任が伴いますから、行動が主体的になります。私はこの一連の流れを、低学年のうちに身に付けてほしいと考えています。
日々の活動は固定することなく、その日その時のメンバーの意向により様々に変化します。ある日は裏山から竹を取ってきて弓矢を作ったり、またある日は突然、おやつ作りが始まったり...。いつも予測ができませんね(笑)

ーーー末原さんのおっしゃる通り、現代社会においては、大人もそうですが子どもにも主体性が感じられないことが多々ありますね。末原さんが今大切にされている理念、そこに至るまでにはどんなプロセスがあったのでしょうか。

末原さん:学生時代に哲学を専攻していたこともあり、子どもたちには哲学的な思考を届けたいと思っていました。哲学は「どう生きるか」ということを思考する学問なので、子どもたちにもそこを考えてほしいと。
ところが小学校には哲学という教科はないので、教員時代は学校での学びが実社会に生かされる経験や楽しさを伝えたいと考え、生活科・総合的な学習の時間を専門としていました。
教員を務めた14年間はかけがえのない時間で、たくさんの子どもと保護者に出会え、自分の経験値と価値観が大きく変化した期間でもありました。この経験があったからこそ、今の自分がいるのだと思うんです。

「マナビノキ」の理想形は松下村塾

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ーーー哲学を専攻していたというだけあり、日々のプログラムでは哲学的な対話やプレゼンテーションの時間もあるようですね。

末原さん:国語も算数も、机上の勉強には必ず答えがありますよね。でも実際に生きる上では答えのない問題や課題に直面することの方が多いんです。ですから、私は子どもたちに“答えはないんだよ”ということを教えたいと思っています。加えて、これからの社会はどんどん変容しますから、正解がないのが当たり前です。子どもはすぐに答えを出したがりますが、対話やディスカッションを続けていくうちに、概念的な思考に行き着いたり、自分の意見は変更可能だということに気付いていく。そのプロセスがとても大切だと思います。

ーーー2020年には教育指導要領が改訂され、大学入試も大きく改革されます。多くの親御さんが、この変化に少なからず不安を抱えていると思うのですが、その辺りはどうお考えですか。

末原さん:当然ですが、親は子どもに幸せになってもらいたいと考えています。ところが現代は、昔のようにこれをやれば幸せになる、という正解のない時代でもあります。この先、何が起こるか分からないから、何が起きても自分で納得できるような人生を歩めるよう、育てる必要がありますよね。
人生において一番大切なことは「自分らしく生きる」ことだと思うんです。目標を定め、バックキャスティングで計画を立て勉強をすることももちろん大切なことです。一方で、自分が大好きなことを続けていくことで、その先の仕事が決まることもあると思うんです。自分の好きとか得意なこと将来に繋げて欲しいなと。そういう意味では、小学生の間は知的好奇心を伸ばす大切な時期なのです。

「好き」や「得意」が、やがて自分のアイデンティティに

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ーーーここ数年、探究型の学びをテーマとした塾やアフタースクール、教育施設などが注目を浴びていますが、そのなかにおける「マナビノキ」らしさはどんなものでしょうか。

末原さん:たくさんの経験を通して、その子なりの好きや得意が見つかると、それがその子のアイデンティティへと繋がると思うんです。ですから、何よりも「楽しい」と思えることを大切にしています。
大人の役割って、子どもたちが日々活動するなかで「それすごいね!」とか「うまくできたね」といった意味づけだとか、価値づけをすることだと思うんです。それは本当に些細なことだったりするので、ともすると流されてしまう。その大事なタイミングを見逃さないようにするのが教師の役目です。子どもはいつでも本質的ですから、その素晴らしい芽を潰さないよう、大人のロジックで見てはいけないなと。

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ーーー子どもがそれぞれの価値観で考え行動したことが、大人(マナビノキでは末原さん)からしっかり意味づけされると、それがその子の自信へと繋がるんですね。子どもだけでなく、大人でも楽しいこと、好きなことなら没頭できますから、そういう意味では学びへも繋がりますね。

末原さん:そうですね。私は、楽しいことを思い切りやった先に学びがあると考えています。その経験さえあれば、いつでも、どんなことでも始められますよね。

ーーー末原さんにとって、教育の面白さや喜びってどんなことですか?

末原さん:一人ひとりの子どもたちが、それぞれできないことができるようになったりするプロセスを見ているだけで喜びです。子どもの成長そのものが本当に面白くて。私自身、子どもと一体となり活動している時間が一番自分らしいなと感じるんです。もしかしたら、大人と子どもが共存しているのかもしれません(笑)

ーーー「マナビノキ」では、スポット利用も可能ということですが、今後はどのようなイベントや活動をお考えですか?

末原さん:そもそもの私の想いとして、マナビノキでの活動が、巡り巡って学校教育に還元できたらいいなというのがあるんです。学校だけではカバーしきれない活動やフィールドワーク、探究プログラムを今後も実施していきたいですね。夏休みなどの長期休暇には、普段できないようなプログラムも実施する予定です。今後は、大人向けのイベントや教育について対話する機会も設けていきたいと考えています。将来的には、教育者の育成に関わりたいなと思いますし、今はやりたいことがたくさんあってワクワクしています。

終始、子どものようなキラキラした表情で熱く語ってくれた末原さん。ご本人が自覚しているように、教育者としての視点と子どもの視点、その両方をバランスよく持っていることが「マナビノキ」の強みだと感じます。既存の教育に疑問を感じてはいるものの、どんなことをしたら良いかわからないと悩んでいるご家庭は、一度見学してみるのも良いかもしれません。

text&interview : Asami Tomioka

マナビノキ

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