毛糸で紡ぐ温かなつながり

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2年前の冬、長島キャサリンさんは息子さんが経営するシネマカフェ、AMIGOで時間を過ごしているときにふいにこの場所はニットカフェ(編み物カフェ)にぴったりだと思いつき友人や娘さんに声をかけ、毎月3週間目の木曜日に集まり編み物を通じて知恵や知識を分かち合う大切な時間になっていった。

この日も皆おもいおもいの時間にCINEMA AMIGOの2階に現れ、ランチをオーダーし編み物をしながらおしゃべりをして時間を過ごす。話題は編み物の技術の情報交換から温泉、キャサリンさんの大学の授業内容や再生エネルギーについてなど幅広い。
46.jpgこの会は自然とお互いが知っている技術を教え合っていくようになっていった。
キャサリンさんの地元、イギリスのウェールズでは靴下やセーターの穴などを塞ぐのにDarning という技法を用いる。糸でかがるより見た目もずっと綺麗にリペアができる。その技法をこの会で日本の若い女性に教えたりしている。
「今までは糸でかがっていたけれども直した所が目立って困っていたところ、キャサリンさんに全く違う修理法を教えてもらうことができました」とお子さんと一緒に会に参加していた女性が話してくれた。
ドイツ出身で現在逗子在住のジギンダさんは、セーターを日本で購入すると腕の長さが合わないため元々のセーターの色に近い色の毛糸で袖の部分を継ぎ足すことをしている。微妙に違う2つの毛糸の色合いがまるでデザインのようでなんとも美しい。一人で家で編み物をするのは億劫だが、ここに来てお話をしながらする編み物の時間は楽しいという。
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ジギンダさんは色を選ぶセンスに優れているのでキャサリンさんや他のメンバーに色のアドバイスをよくしている。

また、最近では被災地にセーターやマフラーなどを皆で作って贈ったりしている。この日もひとりが新聞で被災地の方々が靴下の上にはくカバーがほしいという記事を見つけてきて皆に編み方の本がないか聞くとキャサリンさんが確か赤ちゃんの靴下の編み方の本があると家までとりにいく。
さすが様々な国の方々が参加しているだけに編み物の本の国籍も時代もバラエティに富んでいる。
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皆が持ち寄る編み物の道具もウェールズで購入したものだったり、思い思いの好きな道具を使っているのも面白い。
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メンバーの一人が逗子の街で見つけてきたこの綺麗なグリーンの毛糸は一玉60円だったという。セーターを編んでも1,000円以内でできてしまうという。
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また、キャサリンさんがこの日編んでいたものは炬燵で着るためのセーターだ。自宅にあるあまった毛糸で作っているというが海を思い出す綺麗なブルーのグラデーションだ。
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キャサリンさんがご家族へプレゼントとして作られていた湯たんぽカバー。シャドウニッティングという技法だそう。被災地へ送る湯たんぽケースも作られるそう。
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日本に移住する前、キャサリンさんはギリシャで人間居住という分野の専門事務所で働いていた。その頃に旦那様と知り合い46年前に逗子に移住。街のうつり変わりを長い間みてきた。現在は大学で人間居住学を英語で教えることをしながら、このような会を開催したり、日本の若い人たちにウェールズの伝統的料理を教えたりしている。

この会のメンバーは30代から60代と幅広い。世代を超えて女性たちが集まり何かの作業をしながら知恵や知識、技術や情報を交換するという古代からどこの国でも行われているこのよう集まりが、急速に都市化が進行しているこの社会に存在し誰でも体験することができるのがうれしい。
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