音楽は、素晴らしい!(1/2)

去る3月1日、鎌倉芸術館で行われた「細野晴臣 鎌倉ライブ2012」。一夜限りのライブに集まった人々は、終演後、口々に「素晴らしかった!」と上気した顔で言ったという。その日、会場を包んだあたたかな空気にあふれていた、愛と希望。言葉にするのは気恥ずかしいけれど、細野さんの音楽を耳にすれば、それが大げさな表現ではないとわかるだろう。
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細野さんが、好きだから。

h2.jpg近頃、鎌倉は音楽の街として盛り上がりを見せている。
地元のアーティストが企画するユニークなイベントがたくさんあり、一方、国内外問わず一流のミュージシャンからぜひ鎌倉でやりたい、という声も増えていて、カフェで、お寺で、ライブが実現する機会が多くなってきた。
細野晴臣さんのライブも、まさに音楽の街、鎌倉にふさわしい出来事だ。

さて、今回細野さんを迎えるにあたって、鎌倉のあちこちで起きていたことをご存知だろうか。
そもそもの始まりは、ライブを企画したSHOKEN.incの祥見知生さんによる名案の数々だった。

「パンフレットも作りたいし、チケットもちゃんと作りたい。
関連イベントとして映画や、音楽で街を満たすということもやってみたい」

それに対して、細野さんは快諾した上に、祥見さんの本業である器の展示もリクエスト。
大々的にやりすぎるのはどうにもいただけないから、あくまでもさり気なく、あたたかく、細野さんを鎌倉へお迎えしたいという気持ちを忘れずに──。
一度きりのライブに対しては異例とも言うべき、ステキなウエルカムイベントは、こうしてスタートを切った。

協力を依頼した店は、どこもふたつ返事で引き受けてくれたという。
それは、大好きな細野さんを皆で朗らかに迎えよう、という心意気の表れであり、楽しみながらライブ当日を迎えたい、というワクワクした気持ちをずっと感じて過ごしたかったから、かもしれない。

ライブは終わった。しかし“LIVE”は続く。

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細野さん(中央)と祥見さん(右)。メモリアルの数々に囲まれて。
ライブは、大好評のうちに幕を閉じた。
あの一夜に起きた夢のような出来事を振り返って、祥見さんは話す。

「あの日、起こったことを、簡単には言葉にはできないのです。
それは、あまりにも、素晴らしい出来事であったから。
ライブ直前に、ひとりで、楽屋裏で外にいた細野さん。
「見つかっちゃったね」という顔をして姿勢を正そうとされていました。
「よろしくお願いします」と頭を下げると「こちらこそ」と小さく言われました。

昨年6月に日比谷で行った「HoSoNoVa」記念ライブ以来の単独ライブで、緊張されていたのかもしれません。
舞台にあがった細野さんは、観客の皆さんに最高のプレゼントをしてくださいました。
それは本当に豊かな、素晴らしい音楽でした。
ゲストの高野寛さん、小倉博和さん、そして細野バンドの皆さんの、深みのある最高の演奏。
細野さんの洒脱の極み、まるで落語を聴いているような円熟の軽やかさ。
演奏とトークで誰もがしあわせに浸っていたことと思います。
「ラモーナ」「悲しみのラッキースター」「はらいそ」「香港ブルース」「アーユルヴェーダ」「Pom Pom 蒸気」……。
何もかもが夢のような時間、いまもまだ余韻のなかにいます。
主催者として、細野さんのライブを、この鎌倉で行えたことは、大きな喜びです。
支えてくださった皆さんに感謝をしたいと思います。

ライブのあと、細野さんから「3月1日はぼくの大きな区切りになりました。今月か来月の良き日に鎌倉へお礼に伺うことを考えてます。その時はよろしく」とメールが届きました。
嬉しい言葉ですね。
音楽で心を開く、扉を開く。
何気ない日常に、決して裏切らない素晴らしい音楽がある喜び。
あの日、確かにわたしたちは細野さんから、ライブ、まさに生きて、感じられる、大きな贈り物を受け取ったのだと思います」

笑顔と会話に満ちたあの瞬間、そして改めて感じた「音楽は素晴らしい」という気持ちを胸に、またこれまで通りの日常が始まる。
細野さんのライブをきっかけに、つながりが新たなつながりを生み、そこから「素晴らしい何か」がつくられ、伝わっていく。
それこそが“LIVE”、生きていることの醍醐味なのではないか、と思う。

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