イラストレーター平尾香の気ままふらり飲み vol.3

美味しいフルーツのカクテルを出してくれるバーの話を聞いたのは夏のこと。その彼女の語り口が熱を持っていて、まだ訪れたことのない店の様子に飲んだことのないカクテルの味なのにすごく魅力を感じた。私もすぐに体験したくなり、翌日には、ドキドキしながらも、そのお店のカウンターに座っていた。もちろん一杯目は、フルーツカクテルを。夏の終わりの味は、サンシャインマスカット。爽やかな甘い香りが広がる。

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あれから時が流れ冬の帰り道にふと寄り、金柑 ジン&ビタートニックを。バーミックスで金柑を潰したかと思えば、手際よく漉して、素敵なイタリア製のミキシンググラスでステアして、ボブズビターズという、スピリッツにスパイスやハーブのエキスを抽出したリキュールを数滴。いつ立ち寄っても髪も姿勢も顔つきもピシッっと整ったマスターのトシさんの一連の動きは、まるで魔法のよう。お酒ができるまでのバーテンダーさんの手元の動きをぼーっと見るのが好き。これぞ、ザ・バー!という感じ。出来上がったカクテルをスッと目の前に出されると、こちらもちょっと背筋を伸ばして、グラスに口をつます。フワッと柑橘の風味が広がったかと思えば、とキリッとしたジンが追いかけてきて、味わい深い。

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カウンターの向こう側に並んで出番を待ってるお酒は一体どれくらいあるんでしょう。薄暗いオールドマークのウッディな店内に、ライトに照らされて浮かび上がる様々なお酒の瓶は印象的。いつだったか、琥珀色のお酒を頼んで、いつも銘柄を忘れてしまうのでコースターにスケッチしていたら、それをきっかけに、隣の紳士と会話になったことも。一見でお店に入ってくるのは、女性の方が多いだそう。バーのカウンターに座るのは、お酒の好きな人同士、たちのみ屋でも、居酒屋でもない、ゆっくりしたのペースの会話が生まれて、自分のペースでお酒も飲めて。そんな少し緊張感のある心地よさを求めて、黒いドアを開ける夜があってもいいなと思う。

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text&illustration : kao hirao
SPECIAL 平尾香さん紹介記事

Bar OldMark

住所:逗子市逗子1−11-12 八木ビル2 1F
TEL:046-854-9666
営業時間:18:00〜2:00
定休日:水曜日定休(不定休あり)

平尾香プロフィール

画家 /イラストレーター。神戸生まれ、逗子在住。広告制作会社での勤務ののち、母校である京都の嵯峨美術短期大学助手を経て、アーティストとして活動。旅や自然から受けたインスピレーションを優しいタッチで描く。世界的ベストセラー、パウロ・コエーリョ作『アルケミスト』や『ベロニカは死ぬことにした』などの挿画を担当。現在は逗子にアトリエ兼住居を構え、写真やエッセイなどあらゆる角度で製作活動にいそしむ。Instagram@kaohirano_illustration
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