Brisagram! 海辺の草こよみ vol.44

蓬(よもぎ)という優れた草のお話

季節の草に囲まれて草とともに暮らす草文化探求の矢谷左知子さんの湘南の自然の中での暮らしの一コマをお伝えします。
モグサ庭


ほんとうによく降る毎日の雨。。
この国はほんとうに水に恵まれていますね。
うちでは鉢植えの水やりや、染色の水には、雨水を使っているので、いろいろな容器に水を溜めていますが、どれももう満杯。
あっぷあっぷ気味ではあります。

梅雨の時季は草が一番元気なとき、この一ヶ月間は大好きな蓬(よもぎ)にスポットを当てた、
ヨモギづくしの草のワークショップ(モグサつくり / ヨモギ染め / ヨモギのお弁当とお菓子)をしていました。
その名も【蓬(よもぎ)づくしの草仕事】。

蓬のことは以前にも書きましたが、何度でもお伝えしたい草。
すぐれた薬効を持つ、身近な薬草の代表格で、食べて美味しく、料理やお茶やお菓子に、焚いて虫よけに、
モグサとしてお灸に、ヨモギ蒸しに、そして染めものの素材として素晴らしい色を授けてくれる草です。

◎治癒としての蓬

モグサ
しょうが灸

もぐさというのはもともとヨモギから作られています。
この、モグサつくりは、まったくの自己流、いまから10年前に何気なく作り始めました。
染めで使った残りの葉っぱを乾かして、お風呂に入れたり、火をつけて焚いて煙を出し、
蚊よけに使ったり、粗いモグサを作ってみたり、日々の暮らしに取り入れていきました。

それが発達して最近のモグサWSには鍼灸師の友人も応援に来てくれ、
自分で作った粗モグサをおそわったツボにお灸してみる、
そんなことをしています。
大人気の講座になりました。
野生の草からモグサをつくり、癒すというところまで、最初から自分で体験できる楽しい講座です。

◎染料としての蓬

蓬染め

染色の素材としても一番好きな草です。
なんといっても、草染めは一日植物を煮出す、そのアロマに全身包まれるのですが、
ヨモギの薫りはなかでも極上です。
草のなかでも群を抜いているのではないでしょうか。
その薫りを全身の毛穴から身体に吸い込むだけでも、もうトロトロに緩み、心地よく眠くなります。
ヨモギには芯から身体を温める遠赤効果もあるのです。
韓国でも婦人科系の治癒としてヨモギ蒸しという、ヨモギを焚いてその煙で身体の中から温める療法がありますね。

◎食材としての蓬

よもぎ弁当

そして食。
ワークショップのランチはヨモギつくしのお弁当。
おやつはヨモギ饅頭でした。
ヨモギは食することでも、腸内を掃除して、たまった重金属を流してくれたり
、血をきれいにしたり、優れた働きをしてくれます。

よもぎまんじゅう

ヨモギの季節が終わってほしくなく、冷凍庫には春に摘んだヨモギがいっぱい入っています。

日々、身の周りの草たちには、どれだけたくさん助けられているでしょうか。
私の暮らしは草がないと生きていけないほど、さまざまな役にたってくれています。
足下には薬草だらけです。
それを見ないで、とにかく草は刈る、草は生えていることすら許されない、
そういう今の風潮にはもったいないなあ、と思っています。
宝の山は目の前にあります。

一年でもいちばん草たちがその命を四方八方に伸しているときです。
この季節にもっともっと草に接してみてくださいね。
たくさんのことをおしえてくれるはずですよ。


文・写真 矢谷左知子
矢谷左知子 プロフィール

草文化探求 / 草の翻訳
身の周りの野生の草を主題に、草から繊維をとり糸にして布を織る「草の布」の制作を長年。近年は草をテーマに、染織はもとより食や癒、道具、暦などさまざまな草文化の探求とワークショップ、ナチュラルなグラフィックデザインの仕事などしています。
海辺の山の中の一軒家に住んで、人よりも草や小動物や星のほうが近い暮らし。海で泳ぐのが大好き。山をうろつくのも大好き、
いい年をしてスラックライン(ツナ渡り)も得意です。
時おり自宅「草舟 on Earth」草のワークショップ
時々、逗子CINEMA AMIGOで「草ランチ」を出しています。

ブログ
草舟 on Earth
草虫こよみ
Follow me!