Brisagram! 海辺の草こよみ vol.1 

旅してきた干し柿

海を臨む森のなか、季節の草に囲まれて草とともに暮らす草文化探求の矢谷左知子さんの湘南の自然の中での暮らしの一コマをお伝えします。
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はじめまして、矢谷左知子です。海を臨む森のなか、季節の草に囲まれて草とともに暮らしています。草から繊維を採って糸をつくり、色を染め、野生の草の布を織ってきました。野草を摘んでお茶にしたり、草の料理をつくったり、雑草で籠(かご)や箒(ほうき)を編んだりの草々づくしの日々です。身の周りの植物や生き物たちが授けてくれる深い気づきや交感、かれらと共に生かされているという実感、季節の自然に即した草暮らしを折々に綴っていきます。

いま、家の軒先では、冬の始めのキラキラの陽の光を浴びて、干し柿がしあわせそうにぶらんぶらんと海を見ています。旅人の友人が旅先でどっさり渋柿をもらったそうで、それを剥き、干し柿仕様にしたものをお土産に持ってきてくれたのです。柿を挿している藁縄も自ら綯ったもの。柿は七つ、チャクラに対応しているのですって。北海道の浜で拾って干した昆布のオマケもついています。

そんな楽しい干し柿をくれた友人は、3.11以降、この町でのそれまでの暮らしを転換し、天ぷら油で走るキャンピング・カーで全国を旅して回るようになりました。各地で廃油をいただきながらのご縁と繋がりの旅をもう3年近く続けています。震災のあと、私の暮らすこの地域からは、ほんとうにたくさんの友人たちが西へと移住していきました。動いた人も留まった人も悩んで過ごした3年ほどだったでしょう。起こったことはあまりにも甚大でしたが、それゆえに次へのシフトの力もまた力強いものです。もう以前の世界ではありません。なにかが一気に組み変わり、ほんとうに大切なことがあぶりだされてきました。動いた人たちが行った先でも、留まった人たちの地域でも、次のなにかが続々と始まり、素敵なネットワークが紡がれています。

そんな中から飛び出してきた柿がいま、うちの庭で、海からの風と照り返しを受けて、すくすく美味しい干し柿になろうとしているというわけです。どこかのどなたかがくださった柿が、旅をしてきて、ここで干し柿に生まれ変わる、うれしい循環です。いろいろなことが流動的に動き、加速され、以前よりいっそうたのしく、地に足の着いた動きが渦巻きはじめたように思います。みなさんの周りでもそうではないでしょうか。

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いい感じに干し上がってきました

そして私はといえばここに居て、周りの植物たちと対話しながら、彼らの叡知を受信しようとしています。
これからの世界はかれらとの本当の共存から始まることでしょう。

さて、草たち、木々たちはどんなメッセージを発信しているでしょうか。いつも私を助けてくれている、庭や周囲の植物たちのことは、また次回に綴りましょう。

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18年目にして!やっとスダチがなりました

撮影・文 矢谷左知子

「草暦2014」できました

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この時季、毎年つくっています。ことしで9年目になる草暦。二十四節気、七十二候、満月・新月のピークの時間、この地域の季節の気づきの言葉などを記した手作りの暦です。夏に採取して作った草のヒモで結わえています。湘南各地のお店でも取り扱っていただいているほか、旅人さんたちも持ち歩き、旅先で売ってくれています。2014年の暦は焼土色。詳しくはこちらをご覧くださいね。
http://kusabune.blog.fc2.com/blog-entry-92.html
矢谷左知子 プロフィール

草文化探求 / 草の翻訳
身の周りの野生の草を主題に、草から繊維をとり糸にして布を織る「草の布」の制作を長年。近年は草をテーマに、染織はもとより食や癒、道具、暦などさまざまな草文化の探求とワークショップ、ナチュラルなグラフィックデザインの仕事などしています。
海辺の山の中の一軒家に住んで、人よりも草や小動物や星のほうが近い暮らし。海で泳ぐのが大好き。山をうろつくのも大好き、いい年をしてスラックライン(ツナ渡り)も得意です。時おり自宅「草舟 on Earth」でワークショップ
時々、逗子CINEMA AMIGOで「草ランチ」を出しています。
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