Brisagram! 海辺の草こよみ vol.6

スケッチ・オブ・ミャーク@CINEMA AMIGO

西暦2014年が始まりましたね。
今年は元旦が新月と重なるという、キッチリした一致で始まりましたが、月の暦で言えばこの日は旧暦の師走朔日(12月1日)で、いわゆる旧正月は今度の1月31日。アジアではそちらがほんとのお正月、草こよみも月の暦に合せています。今月末、もう一回お正月を楽しみましょう。

今回は映画のお知らせをさせてください。
vol.4で少しご紹介させていただきましたが、あらためてのお知らせです。

チラシ

一昨年の5月、はじめて宮古島を訪れた時、町なかにこのチラシが貼られていました。
よくわからないけど、これは観たい、と、なにやら心をわしづかみされ、会場に足を運びました。
客席には出演者のお婆もいらして、観客は地元の方ばかり、画面に映る知人やご家族に反応し、終始笑いやおしゃべり、和やかな会場でしたが、私はといえば始まりから終わりまで、ただただ涙がとまりませんでした。はらはらと心洗われる涙でした。
これはぜひ逗子のCINEMA AMIGOで上映してみたい、と、その場にいらした監督さんにお願いしたところ快諾いただきました。
以来CINEMA AMIGOではすでに2回を上映、大好評につき、この度3回目の上映をさせていただきます。

この映画「スケッチ・オブ・ミャーク」(ミャークというのは宮古の地元での言い方)は、沖縄のなかでもさらに異質で独自の文化をもつ宮古島で、何百年と守られ伝えられてきた神歌、古謡を中心に、それを綿々と繋いできた、古木のようなお婆たちや神女、神事、日々の労働を記録した尊く美しい映像ドキュメンタリーで、原曲の魅力をキープしたままアレンジされた音楽旋律の世界が織りなす、何やら知れずわくわくするものとなっています。

もともとこの地球に生まれて何万年と、否応なくその土地のすべてを受け入れ、営々として代々の人類が培ってきたかけがえのない叡知が世界のどこにも存在していた。今それらを失ってみて初めて、取りもどすべく様々な試みが行われているわけですが、すでに私たちが失ってしまった尊い未来のひとつが、ここにあった、、
そんなふうに思える、グッドハプニングに恵まれた映像とともに祝福に充ちた、心打たれる、稀な映画です。

お婆たちの、人としての圧倒的な美しさには、日頃、人間の罪にばかり目をむけて、人なんていないほうが地球のためだ、なんてつい思ってしまう私にも、人間ってなんて素敵で完全なんだろう、とあらためて思い直させられます。
神と繋がった謙虚でゆるぎない、質素な知足の暮らし。
それを当たり前として過ごしてきた最後の世代の方々がかもし出す豊饒な神と人との世界観。
そしてインドネシアやミクロネシアの音楽にも通じる、遠い記憶を喚起させられるような、壮大でどこか懐かしい音世界。

余談ながら、映画で道路を突っ走るお馬はまったくのハプニングで、たまたま回していたカメラのなかに飛び込んできたそうです。
そのお馬さんは友人の牧場の宮古馬のサカエくん。よそに預けられていたのが、なつかしい牧場をめざして大脱走中。予告編でもそのシーンがあります。赤信号で最後に交差点を走り抜けるまでが映っていますが、そのすぐ先が牧場、神話的なハプニングが美しさと愛おしさを増します。
とはいえ、そのサカエくんたち在来馬の宮古馬も絶滅危惧種、島にも40頭ほどしか残っておらず天然記念物となっている存在です。

こんなに素敵な文明が最果ての離島に残っている幸せ、そしてそれらも消えかかっている灯火であることを知っていただきたく、地元のたいせつな皆さまに、どうぞこの貴重な映像をご覧いただけたらと思います。

シロクロ

初日1/12 トークイベント

初日は監督の大西功一さんが上映後、トークをしてくださいます。
この映画の魅力は、この監督さんの飄々淡々とした編集のおかげが大きいと思っています。
私はなんと8回も観てしまいましたが、回を重ねるごとにそのあたりの良さがわかったりします。
撮影中のことやその後のお話が聴けるのが楽しみです。
そのあと、私の草弁当、宮古島から野菜を空輸してもらって作る「ミャーク弁当」(菜食ヴィーガン対応)をお召し上がりください。
監督さんと一緒にランチしながら、ミャークに思いを馳せませんか。
この日の詳細とご予約は逗子のCINEMA AMIGOまでお願いいたします。

映画上映期間は1/12から18まで。
この1週間は全回スケッチ・オブ・ミャーク特集となります。
タイミングの合う方はぜひこの機会にご高覧くださいね。

スケッチ・オブ・ミャーク予告編はこちら
タイトル

文 矢谷左知子

ミャーク音楽CD

CD

CINEMA AMIGO では映画に出てくる様々な宮古の歌が収録されたCDを販売しています。
映画のタイトルバックの池間口説など、貴重な原典の数々が収められています。
いわゆる沖縄民謡とはまた違った歌の魅力に浸ることができるでしょう。

こんなお婆になりたや。。
矢谷左知子 プロフィール

草文化探求 / 草の翻訳
身の周りの野生の草を主題に、草から繊維をとり糸にして布を織る「草の布」の制作を長年。近年は草をテーマに、染織はもとより食や癒、道具、暦などさまざまな草文化の探求とワークショップ、ナチュラルなグラフィックデザインの仕事などしています。
海辺の山の中の一軒家に住んで、人よりも草や小動物や星のほうが近い暮らし。海で泳ぐのが大好き。山をうろつくのも大好き、
いい年をしてスラックライン(ツナ渡り)も得意です。
時おり自宅「草舟 on Earth」でワークショップ
時々、逗子CINEMA AMIGOで「草ランチ」を出しています。*2014/1/12の草ランチご予約受付中@CINEMA AMIGO

ブログ
草舟 on Earth
草虫こよみ
Follow me!