Brisagram! 海辺の草こよみ vol.7

朝、つなをわたる

海つな
海からあがって、ひとツナ。ただいま制止技研究中・・

スラックラインに出会って4年になります。
ある日友人から「つなわたり、する?」と電話があって、「なにそれやる。」と。
なんだかわからないけど、それはしてみたい、と即座に答えて以来のこと・・
もともとお猿系の私には、今ではもう特別のことでもなんでもない、ごく日常のからだほぐしのようなものとなっています。

ここ葉山の海辺では隔週の早朝にツナワタリをやっています。通称「朝ツナ」。
この素敵な朝練をお世話してくださっているのは、いつも楽しい「大人のサボリ」を仕掛けてくれる、アウトドアとサボリツアーのお店3knot(サンノット)さん。いまではお店はミサキサヴォリシェスタクラブという名前になり、三崎に移りましたが、朝ツナは続けてくださっています。

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朝メシ前のつなわたり

この時季は極寒朝ツナです。
冬の早朝の一ツナ。仕事前にツナを渡って心身入れ替えてから出勤、あるいは登校(どちらも私には関係ないのですが・・)
痺れる寒さですが、朝日の昇る前から外へ出て、海を見下ろしながら綱をわたって一日が始まるって、それだけで素晴らしいことです。
朝から走ってる皆さん、早朝サーフィンしている人たちならご存知ですよね。
朝のこの星の清浄なことといったら!
おまけに綱の合間には近くのコーヒー屋さんのMちゃんが淹れたてのコーヒーをそこでサービスしてくれるのです。なんて素敵でしょう。

熱々のコーヒーマグを片手にツナを渡る、自慢ではありませんが、いえ、自慢なのですが、私はこれでもなかなかの腕前、というか足前。
オサルだけあって、なんと最初からそれに乗れてしまい、1時間もしないうちに一本渡り切ってしまうことができたのです。
むしろ私の体はこれを待っていました。一度しただけで、その奥に拡がる壮大な世界を感じてしまい、それは探していたものの一つだとわかったからです。

通常、私たちは固定された地面や床を歩くことしかしりません。
それが、スラックラインときたら常に揺れて動いているのです。
そこに身体を乗せ、歩く。止まっていることすら至難。究極のバランス感覚、ある一点のみでその揺れているものの上に立つのです。
これは素晴らしい体感です。
身体の軸を地球の中心に合せ、地面の下を意識し、頭のてっぺんから足の先までその軸が通るようにしているうちに、地面の下は突き破られて、地球を脱し、銀河の中心を意識するようになります。そこから発した軸が自分の身体を抜けて、こんどは頭のうんと上、宇宙の彼方まで抜けていく、そこに身体を添わせる、おおげさに言ってしまうと宇宙の法則に沿うことがすなわち、楽にツナに乗れるということ、
これはちょっとたまらない感覚です。
サーフィンがそれと共通しているのでしょうか。サーフラインという、最高にビヨンビヨンの長いツナも開発されています。

仲良しの禅のエライお坊さまに、これはきっと好きだろう、とスラックラインを持って行くと、即、虜(とりこ)となられて、いまでは講和や座禅の前には参加者にツナワタリを課しているほど。禅が目指す境地に直結しているのでしょうか。
逆に座禅でなかなか伝えられない感覚が、ツナワタリをすることでピンポイントで繋がるのかもしれません。

竹林つな
禅つな
座禅の前のひと乗り

ただ立つことが宇宙と繋がること。スラックラインではそのことがとてもわかりやすく体感できます。
人類がお猿だったとして、最初に二本足で地面に立った時がこんな感じだったのかもしれません。
ツナはそれの逆バージョンですが、お猿さんが木の枝先で揺れながら枝を渡っていくような、そんな感覚を呼び起こします。

固い地面から解き放たれたとき、なにかの感覚の扉が開くのを感じます。
慣れた身体の使い方からいきなりハシゴをはずされる、普段と違う次元に簡単に、瞬間、移行できる、
ただそれだけで身体は芯から喜びを感じるのですが、そのズレ感はたぶん深いところで、これまで身に付けてしまっている様々な慣習や、
無意識に世間に合わせてしまっている脳のなかのチャンネルを、根底から崩してくれる、組換えてくれる、そういう入り口なのではないかしらん、、今のこの時期の時代に沿う、たくさんの符合、体感、ヒントを孕んでいるのを感じます。
禅のお坊さまが取り入れているというのも、納得です。

そこから次の世界のあり方は見えてくる、日常にこうした浮遊があることは、案外今のこの星に大事なことかもしれない。などなど、
年のはじめにそんなことを思うのです。

そんなこともおしえてくれる、朝も早よから寒さドンゾコのツナワタリ哉。。

朝つな2
さむさむ〜熱いコーヒー飲みに走る

文 つなわたり 矢谷左知子

*今回の撮影はすべて友人たち。ありがとうございます。

朝つな

朝ツナは、三崎で「ミサキシエスタサヴォリクラブ」というお店をやっている3knotさんが主催です。
ミサキシエスタサヴォリクラブでは大人のサボリがテーマ。
アウトドアのおもしろい製品やハンモックを扱うかたわら、あれやこれやのサボリツアーを開催しています。
ピンときた方は3knotWEBサイト
朝ツナ情報も載っています。

矢谷左知子 プロフィール

草文化探求 / 草の翻訳
身の周りの野生の草を主題に、草から繊維をとり糸にして布を織る「草の布」の制作を長年。近年は草をテーマに、染織はもとより食や癒、道具、暦などさまざまな草文化の探求とワークショップ、ナチュラルなグラフィックデザインの仕事などしています。
海辺の山の中の一軒家に住んで、人よりも草や小動物や星のほうが近い暮らし。海で泳ぐのが大好き。山をうろつくのも大好き、
いい年をしてスラックライン(ツナ渡り)も得意です。
時おり自宅「草舟 on Earth」でワークショップ
時々、逗子CINEMA AMIGOで「草ランチ」を出しています。(次回は2/11)

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