Brisagram! 海辺の草こよみ vol.12

ヨモギの春 その1

海を臨む森のなか、季節の草に囲まれて草とともに暮らす草文化探求の矢谷左知子さんの湘南の自然の中での
暮らしの一コマをお伝えします。


フキノトウ
フキノトウよく見るとすごく立派な植物です。

冬はやっぱり長いですね。
こんな温暖な所に住んでいて、寒い地域の人に笑われてしまいそうですが、
来そうでなかなか来ない春はほんとうに待ち遠しくなります。

でもちゃんと春はやってきてくれる、来ないことなんて、ない。
当たり前ですが、ありがたい天の運行です。

そう、もう来ています。
ウグイスも鳴き始めています。
まだヘタなところがかわいらしく。
植物たちも着々とつぼみを膨らませ、次の用意をしています。
このあたりではリスもキジも走り回り、
猫たちも夜中じゅう騒ぎ始める季節になりました。
みんながウゴウゴと季節のリズムに乗っています。

ヨモギ

旬の草、
蓬。
ヨモギ。
大好きな草のひとつです。

その独特な芳香は、身体や心の深い部分を解き、リラックスさせてくれる効果があるようです。

ヨモギ餅大

早春にはやくも顔を出す、気の早い元気なヨモギ。
先日ヨモギ餅をつくってみました。
ヨモギ餅のことは草餅ともいいます。
ヨモギ=草の代表?なのかと思ってしまいましたが、草餅は古くはハハコグサで作っていたとか。
そうした野の草という意味でしょう。

毎年蓬が出てくると、先端を摘み取って、茹でてから刻み、冷凍保存しておきます。
ヨモギもちをつくったり、パンケーキに入れたり、天ぷらも絶品。
とくに粉ものと相性がよく、モチモチさせる性質もあります。
昔はヨモギのことを餅草といっていました。
お餅に入れることが多かったこともありますが、その性質のことも表しているようです。
そしてこの香りはほんとうに安らぎます。

刻み
茹でて刻みます。鮮やかなグリーン

モグサも自分でつくります。
食用に適さない固い葉っぱなどを集めておき、乾燥させて、ふるいにかけて作ります。
お灸だけでなく、火をつけて燃やし、夏の蚊よけに使ったり、お香かわりにその香りを楽しんだりしています。

モグサ

モグサ2
photo Yuko Senga

これからは草がいよいよ吹き出してきます。
草作家としては、ようやく冬篭りから抜け出して、活動開始です。
自分の都合ではなく、自然の都合に合せての仕事ですからね。
うれしく忙しい時季を迎えます。

次回はヨモギの第2弾、野のヨモギで染める草染めのことを書きたいと思います。


文・写真 矢谷左知子
 モグサの2枚を除く
矢谷左知子 プロフィール

草文化探求 / 草の翻訳
身の周りの野生の草を主題に、草から繊維をとり糸にして布を織る「草の布」の制作を長年。近年は草をテーマに、染織はもとより食や癒、道具、暦などさまざまな草文化の探求とワークショップ、ナチュラルなグラフィックデザインの仕事などしています。
海辺の山の中の一軒家に住んで、人よりも草や小動物や星のほうが近い暮らし。海で泳ぐのが大好き。山をうろつくのも大好き、
いい年をしてスラックライン(ツナ渡り)も得意です。
時おり自宅「草舟 on Earth」でワークショップ
時々、逗子CINEMA AMIGOで「草ランチ」を出しています。

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