Brisagram! 海辺の草こよみ vol.17

桜の花の塩漬け

季節の草に囲まれて草とともに暮らす草文化探求の矢谷左知子さんの湘南の自然の中での暮らしの一コマをお伝えします。

八重桜木

春は一日ごとに草も木もぐんぐんと様子が変わります。
桜の時季があっという間に過ぎ、ウッカリしていると、窓の外、八重桜もはらはらと散り始め、
あわてて、収穫に入りました。
この時季ならではの桜の塩漬け。
八重桜の花でつくります。

庭といってもやぶのような片隅で、到達するのもむずかしい位置に居てくれる、うちの八重桜。
斜面なのでハシゴもうまくかからず、裸足で得意の木登りをば。
でもとても届かぬ枝先に花をつけています。
少しだけを欲張らず、いただきます。
八重桜は手に取ってみると、うっとりするほどのうつくしさです。

花びら

春先の花は、まず黄色の花が咲き始め、
そのあとに白、そしてピンクが続くように思えます。
この時節のピンクは、心がうきうきと湧きたち、
なんだか見ていたい、季節の色合いです。

小さなころ、薄紙でお花を作ったことがありますが、
まるで紙のような、いえ、人間がつくったそのようなものとは
比べ物にならない、この薄さ、そして華やかさ、
花の数だけ違う花びらの形、
花の命の造形は、つくづくミラクルです。

つぼみ

降っても花びらが落ちないものを摘み取り、
水で洗ったあとに、塩に漬け込みます。
手のなかの桜の花はふんわりと軽くて、柔らかく、
気持がとてもやさしくなります。
そんな愛らしい、小さなお花の命をいただいて、
塩に浸け保存させてもらいます。

塩漬け

そのあと、梅酢にくぐらせて発色させますが、
これはその以前の塩漬けまでの写真です。

人は生きるため、山野草を見つけそれを食し、暮らしてきましたが、
このようなお花の遊びも楽しんできたのですね。

いつになく寒い日々が続いていますが、
やはり植物たちは春らんまん。
桜の、まさに桜色は心を一気に春で充たしてくれます。

文・写真 矢谷左知子


矢谷左知子 プロフィール

草文化探求 / 草の翻訳
身の周りの野生の草を主題に、草から繊維をとり糸にして布を織る「草の布」の制作を長年。近年は草をテーマに、染織はもとより食や癒、道具、暦などさまざまな草文化の探求とワークショップ、ナチュラルなグラフィックデザインの仕事などしています。
海辺の山の中の一軒家に住んで、人よりも草や小動物や星のほうが近い暮らし。海で泳ぐのが大好き。山をうろつくのも大好き、
いい年をしてスラックライン(ツナ渡り)も得意です。
時おり自宅「草舟 on Earth」でワークショップ
時々、逗子CINEMA AMIGOで「草ランチ」を出しています。

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