Brisagram! 海辺の草こよみ vol.30

季節のあわい

季節の草に囲まれて草とともに暮らす草文化探求の矢谷左知子さんの湘南の自然の中での暮らしの一コマをお伝えします。

夕日

過ぎ去った夏と、やって来たての秋の間にはさまれて、
そうか、夏は終ったのかと、このあわいの刻を、しばし呆然と過ごすのが
海辺の民のこの季節ではないでしょうか。

9月の第一週は気持も身体もまだ夏の名残のなかにいて、
やってきた秋にまだ順応できずにいるようです。
季節と季節の境目は、それが落ちついていくまで、なにか心もとなく過ごしますが、
それもまたこの時季ならではの心模様。

二十四節気のなかの「処暑」は、暑さも一段落、という季節のめやすのときですが、
今年は8月23日どんぴしゃり、その日からストンと秋が始まりました。
時々、暦どおりに季節が動くことがあります。

とはいえ、今日も下の海で泳いでいました。
海水に全身を浸せる心地よさは、他に代わるものがないほどで、
あらためてすぐそばに海があることは、つくづくありがたいことです。

この夏は富士山がよく見えました。
夏の終わりから黒潮がはいり、海の水も澄みきって、そこに根付く魚たちや、
迷い込んだ熱帯魚たちと美しく一緒に泳げる日が多く、
また、どうしたわけか、クラゲにはまったく出合わない夏でした。
ラッキーでもあり、アンドンクラゲのあの優美で涼やかな姿を見ないのも、少しさみしくありました。

ラセイタ

季節のあわいの中に、咲き誇る植物たちもいます。

今周辺で元気いっぱいなのが、ラセイタ草。
3Dのようにモリモリとピークを迎えているようです。
どこか爬虫類を思わせるインパクトのある葉の様子。
海辺の環境で良く育つ草、繊維がとれます。

センニンソウ

草むらにはセンニンソウも元気よく咲いています。
ヤブの中からうねりながら出てくる姿は圧巻です。
家の前の坂道、
下にはラセイタ草、上にはセンニンソウ、
力強い今の季節の草たちが門番をしてくれているようです。

久々の夏の暑さが残暑としてぶりかえした今日、
うちの猫は、まったくダレた姿で寝ておりました。
暑いよね。

ひな

いましばらく夏の暑さが行ったり来たり。

暑いのは嫌だけど、涼しくなるのは寂しい。。
そんな勝手な気持と身体が、宙に浮いたようなこのあわい、
楽しんで、次なる秋を迎えたいですね。

文・写真 矢谷左知子
矢谷左知子 プロフィール

草文化探求 / 草の翻訳
身の周りの野生の草を主題に、草から繊維をとり糸にして布を織る「草の布」の制作を長年。近年は草をテーマに、染織はもとより食や癒、道具、暦などさまざまな草文化の探求とワークショップ、ナチュラルなグラフィックデザインの仕事などしています。
海辺の山の中の一軒家に住んで、人よりも草や小動物や星のほうが近い暮らし。海で泳ぐのが大好き。山をうろつくのも大好き、
いい年をしてスラックライン(ツナ渡り)も得意です。
時おり自宅「草舟 on Earth」で草のワークショップ
時々、逗子CINEMA AMIGOで「草ランチ」を出しています。

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