Brisagram! 海辺の草こよみ vol.31

秋ー草虫たちの命の終わりと再生

ー季節の草に囲まれて草とともに暮らす草文化探求の矢谷左知子さんの湘南の自然の中での暮らしの一コマをお伝えします。
野葡萄大

いつのまにか秋分。
いよいよ秋も中秋、半ばを過ぎようとしています。

年々時間がはやく過ぎ去りますが、今年は特にスピードが早いように思うのは私だけでしょうか。
年のせい、とは思うものの、それだけでなく、どうやら一日がどんどん短くなっている、という説もあるようです。
でもその高速化した時間のなかでは、ますますそれを超えてゆったりした刻を楽しむこと、
せばまった環境を、軽やかに超越していくことが、これからのこの世界での智慧かもしれません。

自然のリズムからはみだすことのない野生の植物たちや動物たち、
まわりにひっそり佇んでくれる生き物たちと、
呼吸を合せてみること、
ただ見つめること、
そうした時間は、なにげないようで、
深いところから人にバランスや繋がりを取り戻させてくれる、大切な瞬間で、
そうした瞬間を重ねていくことが、これからの人類にはますます大事な気がするこの頃です。

野ぶどうが色づきはじめました。
なんて綺麗な色でしょうか。
毎年この色を見たくて、草むらをウロウロします。
この色が目に飛び込んできた瞬間、身も浮くような喜びがあります。
虹を見たときに似ているかもしれません。

雑草

秋がストンとやってきましたね。
野や道ばたの草たちの、秋支度は、それぞれ。
百草百様。
じつは秋が一番野山が鮮やかに、賑やかになる時季。
冬がやってくる前の、命の終焉と再生のための儀式のように、
それぞれがあらんかぎりの力を出し切るように、美しく輝きます。

その季節になると、キチンと準備をし、
宇宙のリズムと合せていく植物たちは、なんてクリアな世界の住人なのでしょう。
人もかつてはそうだったはずです。


夏が終って、朝夕の気温や、日の短さが春と似ているこの季節は
夏に弱っていた植物たちが、また息を吹き返したり、
春と同じ種類の花が咲き始めたりして、庭も、いま、落ちついた華やかさに満ちています。

夏が終る時には、毎年しばらく寂しい気持になりますが、
秋の空気をなんどか味わっていくうちに、ああ、秋は最高だなあ、と
澄んだ空を仰ぎながら、いつのまにか、暑かった夏も忘れて、次なる季節のなかで至福の時を過ごすのです。

そんなことをもう何十年も繰りかえしているのに、季節の始めはいつも新鮮な驚きに満ちています。

草花

夕闇のなかでは虫の音色

時折の 森に帰るサギの声

透きとおった空気のなかを響いてきます。


自然界の織りなす色を見る時、
音を聴くとき、
この星こそがパラダイスだということがわかります。

まわりに居てくれる、たくさんの命を感じながら
深まる秋を ひとつひとつ味わっていくことにいたしましょう。
二度と同じ秋には出逢わないのですから。

カマキリ
まだまだ元気いっぱいカマキリさん、秋の光のなか

文・写真 矢谷左知子

初秋の草講座

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毎月の草講座。
今月は「草のおしえ」と「秋の草染め」
くわしくは草舟 on Earthのwebサイトをご覧下さい。
矢谷左知子 プロフィール

草文化探求 / 草の翻訳
身の周りの野生の草を主題に、草から繊維をとり糸にして布を織る「草の布」の制作を長年。近年は草をテーマに、染織はもとより食や癒、道具、暦などさまざまな草文化の探求とワークショップ、ナチュラルなグラフィックデザインの仕事などしています。
海辺の山の中の一軒家に住んで、人よりも草や小動物や星のほうが近い暮らし。海で泳ぐのが大好き。山をうろつくのも大好き、
いい年をしてスラックライン(ツナ渡り)も得意です。
時おり自宅「草舟 on Earth」で草のワークショップ
時々、逗子CINEMA AMIGOで「草ランチ」を出しています。

*9/27はCINEMA AMIGO5周年!実はオープンの時からのスタッフの私、この日は3時くらいから草弁当をお出ししています。

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