Brisagram! 海辺の草こよみ vol.34

季節の草に囲まれて草とともに暮らす草文化探求の矢谷左知子さんの湘南の自然の中での暮らしの一コマをお伝えします。




気がつくと、いつのまにか光が冬の透明度を増していました。

あるとき、フッっと空気がつめたくなり、朝晩がヒヤッとしてきて、
この前まで綿のシャツ一枚だったのが、急に何を着ていいのやら、戸惑い、
季節の変わり目で立ち止まっていたのも束の間、すっかり寒さ対策に突入、という具合です。

冬のはじめはいつもおろおろする気分ですが、
いったん冬が来てしまってからは、久しぶりの冷たさにも慣れてきて、
他の季節ではなかった、なにか心構えのような心地を味わうのです。





寒さは苦手で、北の地には住めませんが、
寒い時季でないと味わえない透明な冬の光のことは、大変に好きで、
この光の季節の到来も少しワクワクする思いです。
とはいえ、冬は短いほうがありがたいのですが。。

幸い、現在の住まいは日当たりよく、冬でもポカポカと、昼間は暖房もいらないのですが、
その、大好きな煌めく冬の透明な日の光は存分に降り注いでくれ、
光に洗われる幸せに浸ることができます。
庭の向こうに海の見えるこの家では、海に照る太陽が反射して庭に飛び込んで来てくれるので、
照り返しの光さえも暖かさを増すのです。

冬のこの光はまさに洗われるような心地、
光のシャワーが全身を洗い、晒し、清めてくれるようで、
神々しさすら感じる、、これは冬ならではのこと。。

この湘南エリアを好んで住む人たちは、やはり夏が大好き、冬は苦手、という人が多いでしょう。
でも海が近いぶん、海からの反射光を楽しめて、その温暖な恩恵を被ることもできるこの地域はほんとうに恵まれています。

今なお海に向き合うことにつらい思いを抱き続ける、東北の沿岸部の方たちを思います。

光の季節が到来します。

世界を洗って、人の心も洗って、冬が終わる頃には全体、清められていますように。



文・写真　矢谷左知子