Brisagram! 海辺の草こよみ vol.39

土筆の仕掛け

季節の草に囲まれて草とともに暮らす草文化探求の矢谷左知子さんの湘南の自然の中での暮らしの一コマをお伝えします。
つくし勢ぞろい

もしかしたら、好きな食べ物BEST3のなかに入るな、と思っているほど好きな土筆(つくし)。
それなのに草だらけのうちの庭や、周辺の山に、なぜか土筆はあまりなく。
またその旬は一瞬のために、去年などは数本しか口にできなかった、、そんな土筆。
まして、お店で買えるものでもなく、ほんとうにめぐり合うしか方法はない、
それゆえ、いつもツクシには、なんだか熱い思いがみなぎるのです。

昨日、雨の合間をぬって、今年こそ、と目星をつけて葉山町のと或る草むらを目指し、ちょっとばかりの遠征。

予測はばっちり、
そこここに土の中から顔出す土筆が。。
もう、キャーと声を出したいくらいでした。
(実際出ました。)
まさに浮足立つ心地とはこのこと。

食べることはもちろん、
糸にしたり、染めにしたりと、常に野生の草をいただいている私ですが、
グッドタイミングで、その草のもっとも採り時に出逢うことほど、テンションあがることはありません。

ぴょこぴょこと顔を出した土筆たち、
一本一本いとおしくて、ゆっくり大事に採らせてもらいました。
時折、あまりの美しさに見とれながら。

土筆縮小

肉眼で見ているときには、土筆の頭の部分の六角形の集合は
中近東のモスクのようで見事だなあ、と見とれていたのですが、
今日あらためて写真で拡大して見てみると・・
そのあまりの精巧な装置に、びっくり仰天です。

土筆の頭の部分には緑の胞子がいっぱいあって、
食べるときには、そここそが大好きで、おいしくいただくのですが、
こんなにまじまじと見たことは、これまでありませんでした。

つくしカプセル大

なんとまあ、胞子を入れている部分はカプセルになっていて、
開くタイミングが来ると、表面の六角形の蜂の巣のような部分は格納庫の扉のようにグイーンと開いて、そこから胞子カプセルがせり出して中のパウダーをふりまく仕掛けのようです。

なんという生命装置、生き延びていくための芸術的な戦略でしょう。
見ていてワクワクです。
神さまはどこまで精密な遊びを楽しまれるのでしょうね。

おいしくて、そしてこんな装置を内包してるなんて、
つくづく植物はステキです。
その命をいただくことに、深く感謝しながら。
今年もすばらしく美味しかったです!!

ツクシづくしついでに・・
土筆のなかに私の草の布の作品を置いて撮ったものを。
しばらく前の葉山芸術祭で、ポスターにしていただいたものです。

まさに今、土筆のベストシーズン、
そして葉山芸術祭ももうすぐ、
春まっ盛り、春分の海辺です。

撮影:仁礼博さん

ポスター

文・写真 矢谷左知子
矢谷左知子 プロフィール

草文化探求 / 草の翻訳
身の周りの野生の草を主題に、草から繊維をとり糸にして布を織る「草の布」の制作を長年。近年は草をテーマに、染織はもとより食や癒、道具、暦などさまざまな草文化の探求とワークショップ、ナチュラルなグラフィックデザインの仕事などしています。
海辺の山の中の一軒家に住んで、人よりも草や小動物や星のほうが近い暮らし。海で泳ぐのが大好き。山をうろつくのも大好き、
いい年をしてスラックライン(ツナ渡り)も得意です。
時おり自宅「草舟 on Earth」で草のワークショップ
*ただいま「草講座」実施中
時々、逗子CINEMA AMIGOで「草ランチ」を出しています。

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