Brisagram! 海辺の草こよみ vol.54

草のお弁当

季節の草に囲まれて草とともに暮らす草文化探求の矢谷左知子さんの湘南の自然の中での暮らしの一コマをお伝えします。

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野菜寿司

まさに草のシーズン、
あたりは草で覆われ始めました。
あちこちで草刈り機のエンジンの音、
回転歯で草が引き千切られ、飛ばされる音、
ちょっとイタイ感じの日々が、これからしばらく続きます。

旺盛に伸び盛る草へのコントロールはもちろん必要と思いますが、
ただ問答無用に草刈るのではない、いい感じの共存の姿が見える庭づくり、
草もふくめた自生のグリーンたちとの共生の心地よい景観を目指したいなあ、と常日頃から思い、ほどほどの草管理の我が家です。
つまり、人さまから見るとかなりボウボウ。
でもなんだか心地よいと言っていただけると、うれしくなります。

と、今日は草のなかでも、草のごはんのお話を少し。
前回に引き続き、草と食のおはなしです。

「草弁当」なるものをつくっています。
ワークショップの時や催し物のときにお出ししています。

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野セリの飛龍頭

私自身が菜食で、春先から夏の間はなにかしら野草も食しているので、
100%菜食+野草メニューのお弁当、名付けて「草弁当」を作るようになりました。

お出汁もカツオ節などの動物性のものでなく、昆布と椎茸、植物由来のもので、素材から煮出してつくります。

お肉や魚はもちろん、卵や乳製品も使わない、完全菜食ですが、
「菜食」の物足りない、というイメージを覆していただきたく、菜食ではない方にも満足していただけるよう、気をつけています。
けっこうボリュームがあるので、男性にも好評ですよ。

この時季は野草もいろいろ、
すぐ足下の草が、さまざまな美味しいおかずになります。

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野ヨモギの胡麻豆腐

でも、家の前の、こんな山道もいつもいつもご近所のご好意の徹底的草刈りで、
見事に草がなく・・
普通は嘆かないような理由で、落胆することの多いこの季節。
自分の立ち位置の特殊性に可笑しくなります。

すぐそばの、まさにあしもとの自然の恵み、みんながふだん邪魔にしている存在の代表格、雑草。
そこには実は草の底力が詰まっています。

食に、治癒に、薬草に、化粧水に、お茶に、道具に、、
人の暮らしのためにあるような草たちですが、その草の本領を忘れてしまった人間たち、
ただ刈ってうち捨てるだけでは、ほんとうにもったいないなと思います。

うちでは野菜のない時は、庭を一周して草を収穫し、夕食の何品かにすることも日常で、
逆にそれがない暮らしには、もう戻れないほど。
ほんとに美味しいのです。

お弁当には、その時々の勢いのある草たち、
ノビル/ツユクサ/スギナ/野セリ/野ミツバ/カキドオシ/-ヨモギ/ツワブキ/ 等々
さまざまなおかずになって入ります。

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野フキと凍み豆腐のはさみ揚げ

どういうわけか、その時に生えてくる草は、その季節の人や動物たちの身体に必要なものを含んでいる、
このミラクルな摂理に、偉大な自然界の采配の妙を覚え、
草との日々は、その都度、深い感動のなかに在り、
それを食することは、宇宙のリズムと繋がっていくことでもあるのではないかと思っています。

みなさんもどうぞ、すぐそばの草に触れるひとときを愉しんでみてくださいね。

*写真のメニューはすべて野菜や植物性のもので作られています。

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庭のヨモギカレー

文・写真 矢谷左知子
矢谷左知子 プロフィール

草文化探求 / 草の翻訳
身の周りの野生の草を主題に、草から繊維をとり糸にして布を織る「草の布」の制作を長年。近年は草をテーマに、染織はもとより食や癒、道具、暦などさまざまな草文化の探求とワークショップ、ナチュラルなグラフィックデザインの仕事などしています。
海辺の山の中の一軒家に住んで、人よりも草や小動物や星のほうが近い暮らし。海で泳ぐのが大好き。山をうろつくのも大好き、
いい年をしてスラックライン(ツナ渡り)も得意です。
時おり自宅「草舟 on Earth」で草のワークショップ

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