Brisagram! 海辺の草こよみ vol.58

海辺の草暦

季節の草に囲まれて草とともに暮らす草文化探求の矢谷左知子さんの湘南の自然の中での暮らしの一コマをお伝えします。

草暦2

草暦(くさこよみ)というものをつくっています。
今年で13年目の草暦、
毎年違う色で、デザインも年々変わっていますが、シンプルな一色刷りの地味目な見た目は変わりません。
スケジュールが書き込めるように実用本位。
二十四節気、七十二候、満月、新月それぞれのピークの時刻など、季節の気づきの言葉、
周りの自然界の様子とともに、日月がすすんでいく小さな暦です。

私が草の仕事をしているので、
そもそもは草の歳時記のような意味合いで始まった草暦、
友人の応援があって誕生しました。

月ごとの草仕事だったり、
季節の植物のことだったり、
毎月の季節の気づきを、手描きで描いています。

枠の線もすべてフリーハンド。
毎度、それを一気に引くのに、息を止めて引いていましたが、
それも13年続けていくうちに、呼吸しながら引けるようになったり、と
同じことを続けていると、ゆっくりですが、肩の力も抜け、
すこしずつ先に進んでいるような気もします。

そういうわけで、例年は、草のこと、周りの生き物たちのことを描いているのですが、
2017年版は、「海」になってしまいました。

草暦3


’草暦’なのに、海。

この何年か、海に夢中です。
今、身一つで潜ることで、
海のなかに身を沈め、ゆだねることで、
海からたくさんのことをおしえてもらっています。

長年、草からおしえてもらっていたことと同じことを、
今、海からもおしえてもらっています。

どちらも一人で、
対象と一体になったときに授かる世界。

そして、どちらも、この地域だからこそ、身近に触れ合うことのできる賜物。
そこからは、言葉にできないほどの、無量の恩恵を授かります。
年の最後に、それを暦の形にしてみました。

きのうは庭にキジが遊びに来てくれました。
しばらく遊んで、ゆっくりとまた山に消えてきました。
ここは山続きなので、いろいろな動物がひょっこり姿をあらわします。
それにしてもなんときれいな鳥でしょうか。

キジ

冬至を過ぎて、お日さまの光も一年でもいちばん艶めきを増し、
海に反射して、あたりは増幅した光に満ちあふれます。
夏も大好きですが、これからの時季も、なにか胸がいっぱいになるような、
深みのある、そんな季節、豊かな時間です。

まわりに居てくれるたくさんの生き物たちに、支えられている私たちの暮らし
たくさんの、目に見えるもの、見えないものに感謝して、
次の年のはじまりを静かに迎えたいと思います。

冬海
日なた猫


*「草暦」は湘南地域のお店にも置いていただいています。
http://xusamusi.blog121.fc2.com/blog-entry-1045.html


写真・文 矢谷左知子
矢谷左知子 プロフィール

草文化探求 / 草の翻訳
身の周りの野生の草を主題に、草から繊維をとり糸にして布を織る「草の布」の制作を長年。近年は草をテーマに、染織はもとより食や癒、道具、暦などさまざまな草文化の探求とワークショップ、ナチュラルなグラフィックデザインの仕事などしています。
海辺の山の中の一軒家に住んで、人よりも草や小動物や星のほうが近い暮らし。海で泳ぐのが大好き。山をうろつくのも大好き、
いい年をしてスラックライン(ツナ渡り)も得意です。
「草舟 on Earth」にて、毎月草のワークショップ

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