できることをすこしづつ、の小さな「暮らしマルシェ」（2/2）

絵の具のパレットのような色とりどりの野菜が美しい あゆみさんによるベジプレート

マルシェの一番のお目当ては、なんといってもAMIGO KITCHENのあゆみさんによる野菜たっぷりのランチプレート。地元の農家から仕入れたばかりのオーガニック野菜を使ったプレートはまるで宝石箱のように彩り豊かにきらめいていた。絶妙な火加減でグリルされた野菜は、本来の苦味のあとにふんわりと優しい甘さが広がり、軽くひいた塩とフレッシュオリーブオイルがひきたててくれる。カシスマスタードと溶かしバターの風味が利いた、たっぷりのミックスリーフサラダも嬉しい。あゆみさんによる三崎・充麦の地粉で焼き上げた自家製パンと季節野菜のスープも付いたマルシェのための特別メニューは、シンプルながらほかではなかなか食べることができない満足のランチプレートだ。


おもわず目がハートになるほどかわいいスイーツを販売するのは"COCO Sweets"の悠さん。自身に２人のこどもがいることから、無農薬のフルーツを農家から取り寄せるなど素材にこだわり、小さなお庭で大切に育てたエディブルフラワー（食べられるお花）を使った見た目にも愛らしいお菓子たち。あまいものは寒くてコチコチな心をとかしてくれるのです。

CINEMA AMIGOや鎌倉オイチイチで曜日限定で出店していた悠さんの旦那さんが、1月30日に逗子なぎさ通りにオープンするカレー屋さん "spice tree" でもCOCO Sweetsが食べられるそう！

　
オーダーの麻ひもバッグやオーガニックコットンのシュシュなど、ハンドメイドのニット小物を展開する"lastwalts"のえり子さん。インドのコットン糸でぎゅっと編まれた高さ10cmほどの三角なべつかみは、ルクルーゼやストウブ、土鍋など、コトコト煮込む冬の台所の必需品。キッチンにそっと置いてあっても絵になるようにシンプルに仕上げたという。昨年５月に産まれた赤ちゃんを抱っこしながらお客様とおしゃべりしつつ、その指先はあたりまえのように編み針が動いていた。


自分のコスメは自分でつくる。"Make my day!(やってみな!!）"をモットーに、野菜やハーブを使ったコスメ”laboratoir de BOTANIQUE”を提案するのは、"HONEY&HERB"のめぐみさん。自分でつくると言ってもワークショップとは違って、セレクトしたオイルやフローラルウォーターなど、安心の素材の中から自分の好きな物を選ぶだけ、その場で自分で調合します！とはいえ優しい口調で「これは奇跡のオイル、こっちはシワに。」などと言われるとどれも試してみたくて選べなくなってしまうほど。

店内には近所に住むおなじみの顔や、あゆみさんランチの常連のおじさま、やっと休みが取れて久しぶりに地元でリフレッシュ！という逗子在住のカフェ店員さんなど、様々な人で賑わっていた。京都から藤沢に越してきたばかりという、この日初めて来た女性は「友達から友人がこのマルシェでスイーツを出店してると聞いて」とCOCO Sweetsでお茶をしながらコスメをの話に耳を傾けたり。何も買わなくても、ランチするだけ、お茶をするだけ。友達の誕生日にちょっとしたプレゼントを。とそれぞれが思い思いの時間を過ごしていた。

デパートやショッピングモールのように、たくさんのものは無いかもしれないけど、そこにはたしかに違う何かがあった。旅に出たら現地の市場に行って、あたたかい手作りの物を食べたい。店先でおばちゃん達がおしゃべりしながら編んでいたかごは、部屋で見るたびにその旅のことを思い出すだろう。ただお金を出してなんとなく食べたり、物欲を満たすためだけに何かを買ったりするのではない、そんな風に考えるひとたちが始めた「暮らしマルシェ」は少しづつ広がりはじめている。
2月16日（日）には横須賀のShoku-yabo農園で行われる、世界中が感動した伝説のスピーチで有名なセヴァン・スズキ（当時12歳）の来日イベントに出店が決定したそう。こちらも見逃せない！
次回の「暮らしマルシェ」は2月7日の金曜日。寒いからと家に縮こまっていないで、ふわりとひろがる春の出会いを探しにいってみよう。


文・写真　小池えり子