Brisagram! 海辺の草こよみ vol.35

海辺から山を想ふ

新月と冬至の重なる朔旦冬至があけ、光がピカピカに甦ってきましたね。
私は最近は旧暦の新年に合せているので、月の暦での新年はまだ先の2月19日なのですが、
それでも国中がいったんお休みをするお正月の空気感は特別です。
冬至が開けたばかりとあって、太陽の輝きも若々しい気がします。
いよいよ新年もすぐそこですね。

今朝、海辺で渡り鳥の大編隊の到来を見ました。
刻々とそのかたちを変えながら全体がひとつの生き物のようになって、冬の真っ青を空をひたすらに一丸となって横切ります。
後ろのほうに遅れて一羽、二羽、懸命にやっとついて飛んでいる小さな鳥を見ると、ほんとうによく来たね、と胸がいっぱいになってしまいます。
君たちはいったいどこからきたの。
海を越えて、北から何千キロもを飛来するものたち、
その飛び立つ刻をどこで知るのでしょう。
仲間たちと飛び立つのだ、と、どのように伝え合うのでしょう。
懸命に寒い季節を生きていく動物たち。

山では今年ドングリが不作で、熊たちはお腹がすいて冬眠できず、次々と里に食べ物を求めて下りてきては銃で仕留められていると聞きます。

私は毎年「草暦」というカレンダーをつくっているのですが、12月にはいつも熊が登場します。

熊6 熊7 くま11 熊10


草暦では旧暦の季節の気づきである、二十四節気や七十二候を記しているのですが、12月12日は七十二候の「熊穴にこもる」という季節の印しがあります。
いつもそれを記載する度に、いまのこの国に熊さんたちが入る穴はあるのか、
熊の暮らしはどうなっているのか、とても気になるのです。
海辺で暮らしていても、この時季は山の生き物を思う、
七十二候という、季節を七十二に区切って、その時々の季節の動植物たちの営みをあらわしていく言葉のなかでも、とくに切実に感応してしまう、この言葉。
この四年ほどの12月の頁はすべて熊さんのことになっています。

人間界では年末年始、おいしい御馳走に囲まれほんとうに幸せな日々です。
でもそうではないものたちへの想像力はいつも失わずにいたいなと思っています。
その象徴的な存在である、この国最大の野生の生き物。
共存の道を探っていきたい、と願う毎年の年の瀬です。

海辺の暮らしから山の熊を思うという、すこし変わったお話をお届けしましたが、
2014年もあとすこし。。

熊だけでなく、厳しい環境のもとで生の営みを続けていくすべての生き物たち、
すべての人々に幸多かれと願わずにいられません。
この恵まれた温暖な地域に住む私の想像の及ぶかぎりに。

皆さま、お幸せな年の終わりを
そして素晴らしい年のはじめをお迎えください。

きらきらの光の季節がはじまりますね。
たのしい冬でありますように。

今年もお読みくださりありがとうございました。

文・写真 矢谷左知子
矢谷左知子 プロフィール

草文化探求 / 草の翻訳
身の周りの野生の草を主題に、草から繊維をとり糸にして布を織る「草の布」の制作を長年。近年は草をテーマに、染織はもとより食や癒、道具、暦などさまざまな草文化の探求とワークショップ、ナチュラルなグラフィックデザインの仕事などしています。
海辺の山の中の一軒家に住んで、人よりも草や小動物や星のほうが近い暮らし。海で泳ぐのが大好き。山をうろつくのも大好き、
いい年をしてスラックライン(ツナ渡り)も得意です。
時おり自宅「草舟 on Earth」で草のワークショップ
時々、逗子CINEMA AMIGOで「草ランチ」を出しています。

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