湘南PEOPLE VOL.3 大橋マキさん

「子育てを自然の多いアムステルダムで始めたことが、葉山に住むきっかけでした」

テレビ局のアナウンサーを退職後、英国で植物療法を学び、結婚。アロマセラピストとして6年間の病院活動を経て、出産。
その後、アムステルダムへ家族で移住。…日本に帰ってどこで子育てをするか考えた大橋マキさんが選んだのは、アムスのように身近に自然のある葉山でした。心も体も自然でいられる葉山の暮らしが、マキさんのぱあっと明るい笑顔の源です。
― もともとは北鎌倉のお生まれだとか。

maki02.jpg大橋 はい。北鎌倉で生まれたんですが、父の転勤で静岡とか茨城とか、あちこちに住みました。東京にも2年いて、横浜は長かったかな。
今回、葉山に移り住んだのは去年の11月からなんですよ。

― それは湘南に帰ってきたいという気持ちからだったんですか。

大橋 その前に、夫の仕事でアムステルダムに住んだことが大きかったですね。彼は広告のクリエイターで、アメリカの企業のアムステルダム支社へインターンで行くことになって。その頃、子どもは1歳になる頃でしたが、家族一緒に暮らすのが何よりだと思いまして。
自然がそばにあるアムスに、子どもは大喜びしました。向こうの子どもたちは夏に噴水を見ると裸で入っちゃうんですけど、それを見てうちの子もパンツまで脱いじゃって(笑)。
ゆったりした時間の流れのなかで暮らしていたから、東京に戻るのは無理だなと思ったんです。アムスにいったん暮らしたことが、湘南への移住を決めたんです。
― 葉山のおうちは向こうにいる間に探されたとか。

maki03.jpg大橋 湘南在住の友人が好意でずいぶん物件をあたってくれました。希望のところがあるかどうか半ばあきらめていたときに、今のところが見つかりました。インターネットで地図を見ると、山のなかみたいな場所。山に隣接した宅地で、森がそばにあって。ハーブを育てたりしたかったので、ぴったりでしたね。

― 実際に住んでみた葉山はいかがですか。

大橋 11月に住み始めたので、いきなり冬!葉山なのに、生まれて初めてしもやけができちゃって。でも春が来て夏が来て… 季節が変わるのが実感できて、本当に楽しいです。
鎌倉と比較すると、歩いている人の着ている服も、履いてる靴も、また違う美意識ですね。鎌倉より葉山のほうが男っぽいかもしれない。たとえば自転車に乗るとしたら、鎌倉の人は小脇に文庫本を抱えて折りたたみの自転車にさっと乗っていたりするけれど、葉山の人はロードレーサーに乗っていたりするんです。葉山のほうがマリン・スポーツをやる人も圧倒的に多い。食べるのが好きな人も多い。平屋が多くて区画が大きい。
― 今はどんなことが楽しいですか。

maki04.jpg大橋 築30年の家なので、その頃にオーナーが植えた植物が30年分、育っているんです。
その夏みかんのジャムをつくったりするのはとても楽しい。それに、葉山は第一次産業の方も多いので、出入りの棟梁が庭師を兼ねてくれたり、漁師さんが獲ってきたものでパーティを開いてくれたり。うにのとげだらけになったまな板には驚きましたけど(笑)。
自然が暮らしと一緒になってる感じがいいですね。

― ご自身でハーブも育てていらっしゃるんですよね。

大橋 私の専門はアロマセラピーですが、葉山では土地がある分、ハーブが育っているところから触れられるのが面白いですね。それはまるでシェフが畑から野菜をつくってみたいと思うようなものかもしれません。
アロマオイル… その効能だけでなく、精油の人柄が見えてくるというか。
― 精油の人柄、ですか!

maki05.jpg大橋 たとえば、ローズマリーは認知症の予防や学習能力の向上に効果があると言われているんですが、そんな覚醒作用は、ローズマリーの新芽が天に伸び上がる姿に重なる気がします。実際に生薬の世界には「象形薬理」という考え方があるんです。すごいことですよね。

― 今は「ホーリーバジル」に夢中だとか。

大橋 逗子のシネマ・アミーゴで初めてホーリーバジルのお茶をいただいたときは、本当に驚きましたね。普通のバジルとはまったく違うし、なんとも芳しいんです。野趣よりも可憐さを感じる姿にもひかれます。
その後、鎌倉山の「ナワ―ルガーデン」の方からバジルの茎が余ってしまい、廃棄せざるを得ないという話を聞き、精油を抽出したいと思い立ったんです。植物の廃棄されてしまう部分から精油を抽出することで地域振興につなげたいという目標があるので。

― ハーブとの関わりは、ここ湘南の地でもっと深くなっていきそうですね。

大橋 そうですね。ハーブのすごさは、利用する人の心身の状態にあわせて、必要な作用が引き出されるということなんです。私はもう一度、植物に自分を委ねてみることを学んでいるような気がします。

私と鎌倉

私と鎌倉

「ホーリーバジル」



同じホーリーバジルでもラマ、ヴァナ、クリシュナと3種類あり、これはラマ。それぞれに信じられないくらいいい香りがします。乾燥させるともっと香りが出ます。
今、国産精油を使った町おこしに取り組んでいて、ホーリーバジルの精油が抽出できたら、葉山の香りを調合したり、葉山のセラピストさんたちに使っていただけたらうれしいですね。
今日は一株から精油をとろうと挑戦してみましたが、やはり量が足りませんでした。結果的にホーリーバジルのフローラル・ウォーターができましたが、それでも素晴らしい香りでしたね。


鎌倉ナワールガーデン
http://sites.google.com/site/nahualgarden


撮影・初沢亜利
インタビュー構成・森 綾
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