湘南PEOPLE VOL.13 ヤーミーさん

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世界が海でつながっていることを伝えたい。
どこかの海に浮かびながら旅をしている島、ヤッポ島。風や海、空と話をしながら生きているその住人たち…。アニメとしても人気の絵本『ふしぎのヤッポ島』の作者、ヤーミーさんも、湘南の風や海、空と話しながら住んでいる素敵な女性。そのおおらかな人生には、ヤッポ島の物語が生まれた秘密がありました。
ya2.jpg― 80年代にパリダカールラリーに出場されたそうですね。

ヤーミー はい。当時は浅葉克巳さんの事務所でグラフィックデザインをしていたのですが、浅葉さんも自称・探検デザイナーだったんですね。その周囲で仲のよい人たちも「昔あったパリから北京まで走るラリーが復活したら参加したいねえ」なんていう話をしていて。それは政治的な理由で実現しなかったのですが、アフリカで冒険的なレースがあるから絶対行きましょうということになったんです。
 1年間、準備をするんですが、それは大変なことでした。莫大なお金がかかることだし、まず砂漠を走ることができる車をつくってもらわなくてはいけない。それをパリまで送り、そこからレースが始まるわけですからね。結局私は4回参加したのですが、本当に貴重な体験でした。
ya3.jpg― 宇宙に行った人は価値観が変わると言いますが、それに近いようなことがあったのでは?
 
ヤーミー まず、自分のことを考える時間をもらいましたね。自分を俯瞰してみることができました。車で走っている間、眠れない、食べられないという無の空間が続くので。心はシンプルにただゴールに向かうだけ。だから自分の中でよけいなものが削ぎ落されたし、何もない砂漠を延々走っていると、都会では絶対に見えないものが見えた気がしました。
 それは自然に対して、人間が無力であるということ。自分も自然の一部で、そこに生かされている、包まれているのだという意識をもつことの大切さでした。
ya4.jpg― それは「ヤッポ島」の心にも通じますね。デザインの仕事をされている上で、美意識にも変化はありましたか。

ヤーミー 心からリスペクトできる仕事がしたい、という気持ちになったのは確かです。夫はアウトドア関連のことを多く書いているライターで(注・日本におけるシーカヤックの第一人者、内田正洋さん)、世界を飛び回っていたので、私もアメリカのパタゴニアに呼ばれて、カリフォルニアのベンチュラにある本社で仕事をしてみようと。向こうではカタログやテキスタイルの仕事もしました。途中色々旅もしながら仕事をして、子どもを授かり、日本で産みたかったので戻ってきたのです。
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― それで、葉山に移られたのですね。

ヤーミー 夫もシーカヤックと出合って、日本の海のよさに気づいた頃だったんです。私も葉山は子育てするのにいい場所だと思いました。ここは海の目の前ですし。
ya6.jpg― その頃から絵本を描くようになられたのですか。

ヤーミー ヤッポ島のコンセプトはその頃できました。夫が本を書いたのですが、ホクレア号という大きな古代外洋航海カヌーが2007年に日本へやって来たんです。ハワイからポリネシア、ミクロネシア、サタワル島を経由して沖縄に着き、そこから横浜へ。

― なるほど、ヤッポ島が動く島だというのは、カヌーからの発想なんですね!

ヤーミー 島がノアの箱船のようなものだったら、というイメージです。地球だって、宇宙に浮かんでいるひとつのカヌーのようなもの。その中で争うなんてあり得ないし、カヌーの外にゴミを捨てるなんてダメでしょう。それともうひとつ、私自身が旅が好きだということもあります。物語の中で旅を続けたかったんです。
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― 登場するキャラクターのプキプキやポイは、最初は絵だったのですか。

ヤーミー そうです。あるとき、知人が「立体にしたら?」と言ってくれたのです。最初は自分でぬいぐるみをつくっていました。洋服に小さな貝殻をつけたりして。砂漠に旅していた頃から石を集めたり、葉山の海で貝殻を集めたりしているんです。

― フジテレビの『ポンキッキーズ』ではスチール写真のスライド上映のような感じだったのに、NHKでは動くようになりました。

ヤーミー アニメーションではたくさんのスタッフが頑張ってくれています。チームで一つの作品になったと思います。
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― とても可愛くてずっと一緒にいたくなります。

ヤーミー この物語を通じて、たくさんの人に世界中が海でつながっていることを知ってもらいたいですね。私の娘もインスパイヤされて、今はカヌーのクルーになってニュージーランドからタヒチ、ハワイまで航海しています。

― カヌーがくれたメッセージをファミリーで伝えていらっしゃるんですね。
今日はヤッポ島のみんなに会えて幸せでした。ありがとうございました。

ふしぎのヤッポ島 プキプキとポイ

ya9.jpgどこかの島にプカプカ浮かんでいるヤッポ島。風や海や星とお話ししながらゆっくり動いています。島の上には虹色の雲、島の回りには大きな渦。虹色の雲は空気をキレイにし、渦は海の汚れを吸い寄せてキレイにしているのです。
ヤッポ島は昔から海と空を守ってきたと言われています。不思議な人々が暮らすヤッポ島。自然とお話ができる女の子、プキプキと、虹色の顔をしたヤポザルのポイが、島で起こる不思議でヘンテコな出来事を通じて様々な体験をしていきます。
地球の環境、自然と人の関わり方、現代の人々が忘れてしまった大切な事を思い出し、これからの未来について考えさせてくれる、そんな物語。


本:不思議のヤッポ島 プキプキとポイ(小学館)
公式サイト:http://yappo-island.jp/
FB:http://www.facebook.com/pages/ふしぎのヤッポ島-Yappo-Island/291610070875021
(撮影 斉藤有美 取材・文 森 綾)
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