湘南PEOPLE VOL.16 大貫妙子さん

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伝説的なバンド、シュガーベイブから今日に至るまで、透明で深みのある歌声で私たちにしみ入るような感動を与えてくれる大貫妙子さん。東京から葉山に移り住み、自然と向き合いながら丁寧に暮らす彼女に、その暮らしと心持ちについてじっくり伺いました。
― お生まれは東京なんですね。

大貫 はい。杉並区です。私は1950年代の生まれで、物心ついたのは1960年代ですから、ちょうど映画『三丁目の夕日』の時代ですね。都内とはいえ、周りに空き地や畑もあったし、まだまだ隣りのうちにお醤油を借りに行けるようなご近所づきあいも普通にありました。
2.jpg― 葉山に移られたのはどうしてだったんですか。
 
大貫 もともとよく遊びにには来ていたんです。東京という街が、生粋の東京人には住みづらくなっちゃったでしょう。コンビニだらけで、商店街もなくなってしまって。街中がすっかりコンクリートで覆われて、街が壊されていくような気がしていました。全部が壊れてくのを見る前に出ていってしまおう、って。

― 実際に住まわれて、畑などもつくってらっしゃるんですか。

大貫 葉山に居を構えて25年近くになりますが、当時は何もなくて、建物もいまの10分の1くらいしか立っていませんでしたしね。最初は豆やトウモロコシなどを作っていました。でも収穫する時期になると、毎日のように豆でトウモロコシなのね(笑)。わたしの家の前も個人の方の畑で、垣根ごしにどさりとお裾分けの野菜が置いてあって。それで、私も家にあるものでお返しすると。また別の野菜をいただいて。そうやって物々交換していると、そんなに何かを買うということがないんですよね。葉山にはいろいろなアーティストがいますが、「どうやって食べてるの」と聞くと「なんとかなるんで」って皆、明るく言うので(笑)。地域通貨みたいなものですね。物々交換は素晴らしいと思います。日本も地方はだいたいそんな風じゃないのかしら。昔ながらの人情も土もある。都市だけが違う気がします。
― 今はお米を作っていらっしゃるとも伺いました。

大貫 秋田の三種町というところで。今年で8年目です。田植え、夏の草取り、収穫時にももちろん行きます。お米さえあれば、味噌も醤油もお酒だって作れる。いざというときにお金は役に立たないです。今は北海道にも農業の拠点を作りたいと思っているところです。
6.jpg― 肩の力が抜けているようで、しっかりと明日のことを見据えていらっしゃる。大貫さんのその生活観はどこで築かれたものなんでしょう。

大貫 元々もっていたものだとは思うんですが、東アフリカに延べ1年くらい滞在した経験は大きかったですね。80年代から90〜95年にかけて、度々行きました。ネイチャーマガシンに書くためだったんですが、ひたすら動物観察。野生動物に休日はありませんから、私も休みなし!豪雨で道がなくなったり、車がはまったり、ライオンは怖くないのかと聞かれますが、それより怖いのは自然の力です。生物の多様性とその完璧なシステム。そのシステムから完全に外れた人間のあり様を目の当たりにしました。野生動物にとっては過去も未来もないんです。ただ今を必死に生きる姿に胸をうたれました。生きるっていうのは、過酷なものだと。

― 大貫さんの歌の奥にある鮮やかな色彩感や、感情に負けずに生きる力のようなものも、その価値観につながっているような気がしますね。シュガーベイブ結成から40周年。おめでとうございます。この秋、鎌倉でコンサートをされるそうですね。

大貫 気がついたら40年。知らない間にそんなに時間が経ってたという感じです。
鎌倉芸術館のライブは、フェビアン・レザ・パネさんのピアノ、吉野弘志さんのウッドベース、金子飛鳥さんたちのバイオリンで、久しぶりのピュア・アコースティック・ライブです。デビューから休む間もなく、多くのアルバムを作り続けてきましたが、最近は、しっかりと、これまで作ってきた音楽をライブでお聴かせしていきたいと願うようになりました。是非、いらしてください!お待ちしています。
大貫妙子さん公式サイト
http://onukitaeko.jp/info/top.html

鎌倉で稀少なコンサートが開かれます。

大貫妙子 Pure Acoustic 鎌倉LIVE 2013

11月1日(金) 18:00 開場 19:00開演
鎌倉芸術館小ホール
全席指定 6,800円
問い合わせ ディスクガレージ 
tel 050-5333-0888(平日12:00 - 19:00)

チケットぴあ、ローソンチケットなどのほか、鎌倉・御成通りのうつわ祥見NEARでも発売しています。
http://utsuwa-shoken.com/music/index.html

撮影協力

神奈川県立近代美術館葉山
10月14日まで、葉山館開館10周年記念イベント「戦争 美術1940-1950 モダニズムの連鎖と変容」が開催されています。ぜひご覧ください。

三浦郡葉山町一色2208-1
TEL 046-875-2800
http://www.moma.pref.kanagawa.jp/public/HallTop.do?hl=h
(撮影 萩庭桂太 取材・文 森 綾 ヘアメイク 茂手山貴子)
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