湘南PEOPLE VOl.37 河崎彩夏さん
2019.04.10
インスタグラムを開くと、ピンク、ターコイズ、ベイビーブルー、そしてパープルのやわらかな彩りが目に飛び込んで来て、思わずキュンとしてしまう。レザー・クラフト・アーティスト、Ayakawasakiの作品は、ドリーミーでスイートで、女性という生き物に内在する永遠の「ガールズ ハート」を心地よくつついてくれるエッセンスをもっています。小田原で生まれ、海の香りに洗われながら育ったアーティストが生み出すそんな世界観に惹かれ、鎌倉、若宮大路のマンションの一室にあるアトリエを訪ねてみました。
SNSでの発信が、ブランド展開のきっかけに
レインボウや空に映る夕焼け、穏やかな海の色を思わせるグラデーションで染められた、革アイテムのブランド「Ayakawasaki」。サーファーガールたちのファッションやライフスタイルに寄り添う小物は、染めから縫製まで、ひとつひとつが、すべて手作りで世の中に送り出されています。そのひとつをマイアイテムとして手にしてみると、なんともいえない愛着が湧いてしあわせな気分が呼び起こされます。彩夏さんにお会いしてお話を聞いてみて、その秘密を垣間見ることができました。
子供のころから手先が器用で、ものづくりをよくしていたと言う彩夏さん。美術大学を卒業後、子供向けの美術教室の仕事に就き、一方で写真を撮るのが好きだったこともあり、ほぼ毎日、日常の風景や自分の作品、作るプロセスなどをSNSで発信していました。当初は作った小物を「もらってもらうだけでも嬉しかった」のだそうですが、次第に評判となり、ワンコインから値段をつけるようになりました。とくに革小物の反響が大きく、気がつけば美術教室の仕事より、革小物作りのほうが忙しくなっていました。
この彩りのために、革の染色を独学で研究
彩夏さん自身はサーフィンはしないそうですが、サーファーの友人が多く、そこからAyakawasakiは口づてに広まり、グラデーションのものが欲しいというリクエストがあったのをきっかけに、独特の彩りの世界へと扉が開いていきます。もともとブラウンやネイビーの既成の革素材を使っていたところから、革から染めるという新しいプロセスへ移行します。今では「湘南の小物」というと、この柔らかなグラデーションが思う浮かぶほどポピュラーになっているのですが、実現するまでには革染めの常識を超えた挑戦があったようです。
「(グラデーションのような革の染色は)当時は誰もやっていないことで、教科書もなくて、自分で聞いたり、使ったり、独学で研究して」オリジナルな方法へと行き着いたのだそうです。「革を勉強していなかったからできたんだと思います」。染めの世界から入っていたら、タブーだったかもしれないことにも挑戦。「でも昔から、習うより、自分の方法を見つけることが好きでした」と。 遠慮がちに言葉を選びつつも、自らの考え出した技法への自信が伝わってきます。淡く綺麗なグラデーションを革に染めたい、そんな思いを追求し、表現することこそ、「アート」というものなのかもしれません。
「使ってもらえるもの」にアートを表現
この彩りの世界へと彩夏さんを導いたのは、7年前、ハワイで見たサンセットだったそうです。それまで生まれ育った海でも幾度となく見ていたと言うのに、「好きな感じの色味で、こういう世界もあるんだぁと思いました。空気も違ったし、色んなものを感じました」と。その瞬間に立ち戻っているかのように言葉を連ねる彼女の、その時の心の震えが伝わってくるようでした。
彩夏さんがアートに目覚めたのは、高校生の頃だと言います。当時「自分には何ができるのだろう?」と問いかけたとき、明確な答えはそこにはありませんでした。その後「文化祭で舞台美術を担当し、みんなの役に立つことができた」という経験で人生の向かう先が見えてきたのです。人のために何かを作って喜んでもらえればという気持ち。そして自らが手を使って作り表現することが好きだという気持ちが重なり、淡々と続けることで、10年以上を経て、「使ってもらえるアートを作りたい」と今日も作品を作り続けています。
作品に込めるテーマは“サンセットと海の似合う女の子”。「いつも使う人を具体的にあてはめて作っています」というAyakawazakiのアイテムは、なるほど、だからこそ手にする人にとって、特別なひとつとなるのでしょう。美しく澄んだ海や、刻一刻と変わる空をグラデーションに託し、小さなSUNSETにつめこんでいるというアトリエに並んだ作品たち。それぞれに個性があって、心癒してくれるひとつに出会うことができます。もしどこかで、海辺で見たサンセットのような彩りの革小物を見つけたら、「あ、これだ」と手にとって感じてみてください。日々の暮らしを彩るこの小物は、アートとして気分を上げてくれるお守りのような存在でもあることに、きっと気づくでしょう。
interview & text : sae yamane
photo : yumi saito
coordination : yukie mori
Ayakawasaki
鎌倉に本拠を置くレザークラフトアーティスト
七色の淡いグラデーションカラーが特徴のレザー小物ブランド
海や夕日などの自然の風景をイメージし手作業で染めるため、
その豊かな色合いは1つ1つ違う1点もの。
柔らかいレザー生地を使用していて、女性を中心に支持されている。
instagram@ayakawasaki
七色の淡いグラデーションカラーが特徴のレザー小物ブランド
海や夕日などの自然の風景をイメージし手作業で染めるため、
その豊かな色合いは1つ1つ違う1点もの。
柔らかいレザー生地を使用していて、女性を中心に支持されている。
instagram@ayakawasaki