湘南PEOPLE VOL.18 遊佐未森さん

―　仙台のご出身なんですね。25年前にデビューされた当時の歌は自然の中のものがたくさん出てきますね。

遊佐　小さいときから自然に囲まれて育ったからでしょうか。音楽を作るときもそういう風景が見えてくるといいなと思っていました。自然に歌詞にそんな空気感が盛り込まれていったのでしょうね。

―　東京から鎌倉へと移り住まわれたのも自然を求める理由があったのですか。
　
遊佐　そうですね。仙台も山や川、海があります。少し似た空の感じが安心できますね。それと、まずは海の近くに一度住んでみたかったんです。ちょうどデビューしてから10年経って、自分のペースで少しずつ仕事ができるようになった頃で。とはいえ、東京での仕事が多かったですし、やっていけるかなと思ったんですけど。実際に住んでみると、自然と深呼吸している自分がいて。オンとオフの切り替えも心地よくできました。遅くなってもなんとか帰る自分もいました（笑）。

―　世界が狭まることはなかったんですね。
　
遊佐　いろんな人との出会いもあって、友達や知り合いはかえって増えました。今はすっかり「地元」と言えますよ。

―　湘南で一番好きな場所はどこですか。
　
遊佐　このwoof curryという長谷にあるカレー屋さんもよく来るんですが、景色だったら、葉山の真名瀬のあたりが好きですね。海沿いにバス停があって、小さな小屋が建っているんです。そこで『銀河手帖』というアルバムのジャケット写真も撮りました。


―　湘南にインスパイアされた詞や曲も生まれているのですね。
　
遊佐　はい。基本、日常に聴こえている音が波の音だから。風の強い日は特に聴こえてきます。波の揺らぎに呼応して歌を作っているようなところがあります。私は日々の暮らしを楽しみたいと思っていて。1日、1日、いろんなことがあるなかで音楽を作ることを大事にしていきたい。この土地が私を導いてくれることを幸せに思います。

―　この春はたくさんライブもあるようですね。
　
遊佐　14年前から『cafe mimo』というコンサートをやっているんですね。もともとは「ひな祭りコンサート」でガールズオンリーの日もあって、それは元祖女子会のような（笑）。『cafe mimo』ではゲストの方とのセッションも見所のひとつになっているのですが、一昨年は「いつでも夢を」を『淡雪』というアルバムでデュエットさせていただいた、檀れいさんも参加してくださってもうとても盛り上がりました。今年は４月ですが、春のお楽しみ、という感じになっています。

―　故郷であり、被災した宮城への支援も続けていらっしゃいます。
　
遊佐　「みやぎびっきの会」という、被災地の子どもに特化した復興支援の会のメンバーです。学校で使えなくなったままの楽器をリペアさせていただいたり、一緒に演奏したり。昨年は、月1回の割合で宮城に帰っていました。仙台市教育委員会から依頼を受けて、子どもたちの作る子どもたちのための復興ソングの制作に作曲で参加しました。子どもたちから歌詞を募集して400通近く寄せられたんですよ。素晴らしいプロジェクトになりました。小学生の部が『希望の道』、中学生の部が『仲間とともに』。仙台市教育委員会のHPから聴けますので、ぜひ聴いてみてください。

―　遊佐さんにしかできない、良いお仕事をされていますね。
　
遊佐　ありがとうございます。私の曲を聴いてくださった方が「ほっとしたり、眠くなったりする」と言われるのはうれしいですね。ささやかなヒーリングという作用があればうれしい。さりげなく、誰かの心に寄り添う音楽、聴いてくださる方の日々に色彩がプラスされるような音楽を届けたいと思います。

遊佐未森さん　公式ホームページ
http://www.mimoriyusa.net/

（撮影　斉藤有美、インタビュー・文　森　綾）