湘南PEOPLE Vol.34 COMA-CHI

社会に伝えたいメッセージをリリックにして、リズムを刻み、畳み掛けるように語り歌う。ラップは、音楽でありつつもまるで詩の朗読のように、人の心に深く入り込んで留まり、考えさせる力があります。日本で女性ラッパーの第一人者として注目を集めるCOMA-CHIさん。

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メッセージ性の強さとパフォーマンスの高さが評価され、メジャーレーベルでの活躍というアーティストの多くが憧れるステップを踏みながらも、自らの判断でその輝かしいキャリアを退き、今は直感に従って音楽活動を続けています。社会に対してビジョンを持ち、自分がキャッチしたメッセージを曲に載せて伝える彼女は、その一方で母として海の側で子供を育て、満ち足りた日々を紡いています。ここ数年は「縄文」がテーマという彼女に、その独自の世界観をお話してもらいました。

自分は何をしたいのかということに正直に。

「自分の感覚に常に正直な人」。それがCOMA-CHIさんのお話しを聞いて、強く心に残る印象です。生まれ育った東京で10代の終わりからラップを歌い始め、どんどん道が開かれていくときでも、自分が本当は何をしたいのかということをいつも探り続けていたようです。

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「自分の内側にあるものを表現して、ありのままでやっていたものが認められてCDを出すことになり、メジャーデビューということになったのですが、音楽を商品として売り出すとなったときに、アート的な表現を含め、自分の感覚と合わなくなってしまったんです」。

けれど、そのキャリアを手放すことに恐れや後悔はなかったのでしょうか? 

「それよりも自分が好きでやっていた音楽を続けたくなくなったり、情熱を殺してしまうほうが、失うものが大きいと感じました」。音楽業界やビジネスのことを理解できたのは勉強になったけれど、もう一度まっさらに戻り純粋に音楽をやろうと決意したのだと言います。

大きな変化は2011年に始まりました。

「ちょうど2011年の震災のタイミングもあり、人生の舵をとる方向が変わったのだと思います」。

当時、沖縄などの離島へ旅することの多かったCOMA-CHIさんは、渋谷の街に住んでいる現状と自分自身が求めるものとの温度差を感じ、少しでも自然を感じられる海の近く、辻堂へと拠点を移します。

「何が大事?と考えた時に、人との繋がりであるとか、自然というテーマが浮かびました」。

また心の底からやりたいと思うことを大切したいという価値観と湘南で暮らすということがどこかでリンクしたようです。5月にリリースしたばかりのアルバム『JOMON GREEN』には、女性という目線からのメッセージが強く感じられます。

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「もしかしたら、手放すことができるのは、女性だから? 男性だったらなかなか難しいかもしれませんよね?」と話を向けると。

「そうですね。アルバムにあるのですが「CYCLE」という曲。女性は月に一度生理もあるし、リセットする感覚を体が知っている。何か新しいものが始まるためには、何かを捨てなければならない。女性のそういった感覚は、潔さにもつながるのかなと思います」。

まさに彼女は、手放すことで「より自分の本質に触れる」というギフトを手に入れたのでしょう。

キーワードは「縄文」。気づきがひとつに繋がった。

「縄文」というテーマが彼女に降りてきたのは、2017年の初頭。雑誌で見た縄文時代の土器の写真からインスピレーションを受け、引き込まれるように調べていくうちに「これからの社会にはこのバイブレーションが必要」だと感じたそうです。

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1万年近く続いた戦争のない時代。「縄文時代は、女性が中心の時代だったようです。自然と寄り添って、八百万の神を信じていたからこそ、命を産み出す女性に対するリスペクトも今よりあったのではないかと思うんです。火と水の間に風が流れる。男性が火で女性が水で、それがバランスよく支え合い成り立っていたのではないかと」。

現代社会は男性優位が進み、バランスを欠いている。ニュースなどで取り上げられる問題にも、悲しいかなそれが表れていることも。そんな状況を俯瞰で見るCOMA-CHIさんは、決してフェミニズムという立ち位置ではなく、「二つの性があって、縄文時代のようにもう少しバランスがとれるといいのではないかなぁ、と思います」。

歌の中で刻む言葉も、女性の素晴らしさを称えつつも、男性をリスペクトしエールを送っています。

葉山は女性が元気。

結婚をして、ご主人が生まれ育った葉山に住み始め、縄文というテーマを胸に抱きつつも、女の子を授かり、この土地にじわじわと根を張っている最中。

「葉山は女性が元気ってすごく思いました。うちの主人も『葉山は女性が強い!』って(笑)」。

確かに葉山では、女性たちが生き生きとしていて、インディペンデントな考え方を持つ人が多くいます。そんな姿を男性たちが認め、お互いに尊重しながら共に生きるようないいバランスがあります。

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 COMA-CHIさんは、「この町で自然のエネルギーを感じながら、自分らしく、スケールの大きい子に育つよう、ゆったりとした子育てをしたいです」と言います。「出産を経験して何か変化がありましたか?」と聞くと、「周りの人から声がよくなったと言われました。産道が開いたせいなのでしょうか・・・」と穏やかに語ります。「種を埋める、芽吹く、育てる、実る・・・・」、自身のリリックに込めた思いは、自然のサイクルから感じたもの。自らが通り、これから行く道であり、体験したことがある人にもない人にも響く強さがあります。

すでにJOMONバランスが暮らしに。

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平日は育児と家事、子供が幼稚園に行っている間に歌詞を書いたり、週末は全国でライブ活動を行い、毎週水曜日はレギュラーラジオの収録に合わせて都内での仕事をまとめて済ましてしまうと言うCOMA-CHIさん。プライベートと音楽活動をバランスよくこなしている彼女を支えるのは、「主人と家族です。それなくしては、やっていけません」と感謝の笑みをこぼします。

まずは彼女の人生の中で、JOMONバランスがすでに円満に成り立っているようです。

interview & text : sae yamane
photo : yumi saito
coordination : yukie mori

COMA-CHI プロフィール

ラッパー/ヴォーカリスト。作詞、作曲、トラック制作も手がける。20代はじめに、東京のクラブで女性ラッパーとして頭角を現し、2006年にファーストアルバムをリリース。2009年にはメジャーデビュー。2011年に無所属となりインディーズでの音楽活動を再開。現在はご主人の生まれ育った葉山に4歳のお嬢さんと3人で暮らす。2018年5月にニューアルバム『JOMON GREEN』をリリースしたばかり。

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[アルバム情報]
COMA-CHI『JOMON GREEN』
発売中/全11曲/QRCD-1004
¥2,700 (税込)/発売元:Queen’s Room
全国のCDショップで発売中。
主要の配信会社からダウンロード中。

[ライヴ情報]
Sunny Day Lounge vol.4 ~OASIS Special Live~
日時:7/22 (日) 17:00 START
会場:海の家 OASIS (葉山・森戸海岸)
出演アーティスト : COMA-CHI, Keyco, CHAN-MIKA x ROOT SOUL-4piece-
詳細は、OASISの公式HPをご覧ください。
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