湘南PEOPLE VOl.51 平川景都さん

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 2020年の終わり、240年続いた地の時代から風の時代へと。天体の動きをもとに語られる西洋占星術では、形あるものを重んじた物質主義の地の時代から、かたちのないものが意味をもつようになる風の時代への移行が説かれ、これまでの固定概念が崩れ、自由に想像力豊かに生きることが重要になってくると言われています。

 実際に昨年からのコロナ禍において、人々の生き方、生活リズム、価値観は大きく変化せざるを得ない状況となり、その説に重なるような事象がさまざまなシーンで見られるようになってきています。この風の時代の流れの先陣となって、女性たちの意識の変容に働きかける人物。平川景都さんは、これまで歴史の中で作り上げてこられた「女性性」の概念に疑問を投じ、女性が本来あるべき姿、思考を取り戻せるようにメッセージを送り続けています。

直感に誘われ、ヒーリングの世界へ

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 お話を聞いたのは、ハワイ、オアフ島に滞在中の景都さんがステイしている一軒家のリビングからオンラインで。白い壁を背景に、窓の外にはグリーンの葉が風に揺れ、小鳥のさえずりが響いています。その中に爽やかな空気に包まれた景都さんがいました。鎌倉で育ち、中学から高校までフラを続け、その後ハワイ島やオアフ島で学生時代を過ごした彼女にとって、ハワイは第二の故郷なのかもしれません。ヒロのカレッジでは歴史や文化、ハワイの植物などについて学び、自然と共にある暮らしの中でローカルのメンタリティを知りました。

 「ネイティブハワイアンは生まれたときから自然の恩恵を受けて生きているので、土地に対する恩返しを続けていきます」。それは土地を所有したり、権利を主張したりする現代社会の考えとはまったくの逆のこと。先祖や土地を大事にすることもハワイのいにしえの時代からの教えだと話します。ハワイでの経験や出会いを経て、景都さんは自然の叡智と深いつながりをもつようになったのでしょう。

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 実は景都さんがヒーリングに興味を持ち始めたのは高校生の頃。家庭内で感じた悲しみをきっかけにさまざまなヒーリングの手法を学び、自分の人生に置き換えて実験していきました。オーラソーマ(*1)やレイキ(*2)、風水、そしてハワイに住んでいた19才から20才の頃は、ヒプノセラピー(*3 年齢退行療法と前世療法)を学びました。その後カリフォルニアでジュエリーの勉強をし、帰国後はジュエリーブランドを立ち上げることになります。けれど直感に誘われるように再びヒーリングの世界へと入っていきます。

 実家の一室にサロンを設け、オーラソーマのカウンセリングセッションを続けていたところ、セッションは次第にクライアントのエネルギーをダイレクトに感じメッセージを伝えるというものに。多くの女性クライアントのケースからたどり着いたテーマが「女性性」でした。その根底に「自分を隠し、押し殺している」というイメージがあるのを感じ、「心や体の不調を解くだけでなく、地球を癒す鍵がそこにある」と景都さんは思ったそうです。セッションの中で気づいたことをまとめ、女性たちに向けて女性性や女神性に目覚めさせるワークショップをリアルな場やオンラインで開く一方で、景都さんも自らが学び癒されるプロセスを日々体験し、その体験そのものがメッセージとなってインスタグラムなどを通じ、女性たちにシェアされているのです。
 

「月経」を通して、女性性を理解して欲しい

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 女性性の話をする際に、景都さんは長い歴史の中で続いてきた男性性優位社会のことを話してくれました。男性性は陽、女性性は陰。女性性は見えないのを見る力、聞く力、つながる力。男性性は女性性から得た情報をもとに具現化する力です。性別に限らず、その両面が人の中には存在している。ただ男性性が優位だった社会では、女性性が抑えられ、大地、自然、見えないエネルギーとの繋がりが絶たれました。その男性性と女性性のバランスの崩壊は、土地や大衆のコントロールを目的に意図的に行われたことではないのかと景都さんは考えています。「わたしたち女性の中の女性性に対して起きてきたことは、女性の子宮で起きていることと同じ。きっと地球で自然に起きてきたことも。環境破壊も男性性のバランスの崩れが関係しているのかもしれません」。さまざまな文化の中で、女性の体の大切なサイクルである月経がタブーとして扱われる例を挙げながら説明が続きます。
 
「女性の体は自然界の動きと連動するように、体内では常に変容が起こり、生と死のサイクルを行き来しています」。子宮のサイクルには四季が移り変わるように、卵胞が成熟していく「春」、排卵が起きる「夏」があり、着床の可能性がある「秋」、生理がおとずれる「冬」がある。春、夏は陽のエネルギーに溢れ、気分も体調も優れ、肌艶がよくなり体型もキュッと引き締まる。まさに出会いを求める時期。秋は大切なものを守ろうと内向的に。冬は陰の時期として休養が必要になる。

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 けれど実際には血が出ることは不浄なこと、恥ずかしいことなど、ネガティブな概念が無意識の中で存在し、いつも通りに動くことが求められる。「休む」ことは生産性に重きを置かれた現代社会では怠けていると解釈されてしまいますが、スピリットとの繋がりが健やかな心身を保つという理解が根付いていた先住民の文化では、「休む」は神聖な行為のひとつでした。休むことが正当化されないのは、生産性を求めすぎる現代社会がゆえだと景都さんは考えます。

 「子供が生まれることは祝福されますが、その過程である月経にはリスペクトがない。土地を犠牲にしたり、負担をかけたりしても、実を収穫することを求める現代社会にも重なります」と。「月経」を通して伝えることで、多くの女性が女性性を理解しやすくなると言う景都さん。男性性の基準に合わせた世界でバランスを崩していた人にとって、自らの内にある女性性をリスペクトすることで、自分の扱い方が変わり、受け入れ、愛するという気持ちが深まるのだと。自然界の流れと重ねあわせ、その神秘性に触れ、女性が自分自身とつながって欲しいという気持ちがあります。景都さんの話に今多くの女性たちが心を寄せています。

新たなスタイルのスピリチュアルムーブメント

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 これまでスピリチュアルな内容を正面切って話すことは、日本の社会の中ではどこかでタブーとされていたかもしれません。また生産的な社会とは逆行する存在だったかもしれません。景都さんの話が広く受け入れられるようになったのは、まさに「時代」と彼女のメッセージが重なっているからでしょう。彼女のインスタグラムのアカウントを眺めていると、そのセンスが感じられます。見ているだけで心の奥を触れられるような、美しい彩の風景や日常を切り取った写真、イマジネーションを与えてくれる画像、そして景都さんの綴る言葉が正直で奥が深く、世界観がはっきりと伝わってくるのです。

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 その内容もしっかりとした情報に裏付けられたものだからこそ、説得力があります。常に情報収集をするケイトさんのリソースは国内だけでなく欧米圏のものまでグローバルで、スピリチュアルな分野から、宗教、サイコロジー、東洋医学まで幅広く学び続けています。また、興味を惹かれるワークショップや集いがあると、奈良の山奥やバリ島、カルフォルニアなどへ学びを深めに足を運びます。そうして得た知識を自らのアングルから発信。また、新しい情報発信ツールにも敏感でいち早く取り入れている点でも、新たなスタイルのスピリチュアルムーブメントとなっています。

「パーフェクトではない」という気づき

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 もてる力をたゆまず使いメッセージを送っている景都さんが、ハワイに旅立ったのは一ヶ月半前。「今の自分が知っていることをすべてシェアして、日本で出来ることは全部やった」。そんな思いと共に「ハワイに帰らなくちゃ」と涙が出てきたのだと言います。ただしそれはリゾートで余暇を過ごすという意味ではなく、大いなる自然から何かメッセージを受けとるためだったようです。ハワイでの日常の中で得た気づきは、「誰一人としてパーフェクトな人はいない」ということだと話してくれました。これは景都さんにとってとても大きな意味のあることでした。ヒーリングの世界に入ったきかっけであった家庭内での悩み。人の心の裏側にある闇を受け入れることが難しく、「何で?」という答えを探し続けていた。けれど諦めではなく、受け入れるという形でストンと腑に落ちたのだとか。

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 「その人が歩んできたバックグラウンドがあって、今見せてくれている姿がある。その人間らしさを愛おしいとさえ思えるように」。それをきっかけに、自らがつまづいていたさまざまなことにも、「完璧さを求めて、それ以外に理解を示せないことが狭いことだと思ったのです」と。景都さんがそこにたどり着くまでには、きっと長い旅をしてきたのでしょう。ハワイでの滞在は、彼女を次のステージへとつなぐ扉なのかもしれません。日本に戻ってから、また新たな活動を思い描いているようです。その揺るがないメッセージは、「頼るものは自分の直感と自然とのつながり」だと。景都さんの「わたしが本当に信頼できるのは、自然だけ。人の体も自然の一部であるものだから、体の中で自然の偉大さを感じること」という言葉が、何度も思い出されます。
 スピリチュアル(目に見えない世界)とつながる。それはすべての人にあった潜在的なポテンシャルでした。まさに風の時代はそういった時代。その中で、女性性を改めて理解することが、深く、価値のあることのように思わせてくれる時間でした。

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interview & text : sae yamane
photo : konami sekita
coordination : yukie mori 


平川景都さん Keito Hirakawa
ヒーラー / ファシリテーター。ブレスワーク(*4)、ヒーリングスペースのファシリテートを行う。子宮の叡智を伝えるワークショップ、瞑想会、お話し会やゴッデスサークル(*5)を主宰する。鎌倉で育ち、高校卒業後はハワイへと渡る。カリフォルニアでジュエリーを学び帰国。ジュエリーブランドを立ち上げるも、スピリチュアルな世界での能力を開花、現在は鎌倉を拠点にヒーリングの分野で活動する。オーラソーマをはじめ、ヒプノセラピー、レイキ、風水を勉強し、宗教や先住民族の教えなど広く知識を深め、自然界から得た独自のセオリーを発信。オンラインワークショップに400名以上の参加者が集まるなど、多くの若い女性がその話に心を寄せている。
instagram@paradisabykeito
linktree@paradisabykeito
オンラインブレスワークワークショップのご案内

*1 オーラソーマ 1983年にイギリスでヴィッキー・ウォールという女性によって生み出されたカラーケアシステム。上下2層になっている100本以上のカラーボトルから選んだ4本により、心理状態を探ったり、その人が生まれ持った才能や必要としている色を解明することができる。

*2 レイキ 民間療法であり、手当て療法、エネルギー療法の一種。海外では代替療法として認知されている国もある。

*3 ヒプノセラピー(催眠療法)は心理療法のひとつで、催眠状態に入って自分の内面と向き合いながら、悩みやストレスの原因を探ったり、解決の糸口をみつけたりする療法。そのテクニックに年齢退行療法や前世療法がある。

*4 ブレスワーク 意識的な深い呼吸を続けることで、心や体のさまざまなブロックを解き放つセルフ・セラピー。変容意識に働きかけ、自己変容を促すセラピーおよび、ヒーリング手法として注目されている。

*5ゴッデスサークル 
女性性の目覚めやヒーリングを意図した集い。月経や子宮の叡智について学んだり、瞑想やブレスワークを通して内なる女性性との深い繋がりを取り戻す。

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