湘南PEOPLE VOl.53 セーリィー クリスティーナ 美怜さん

smile.jpg

生命力に満ちた光を放ち、周りを照らす太陽のような女性。セーリィ・クリスティーナ・美怜さんに初めて会った人は、そんな印象を受けるかもしれません。アメリカ人の父と日本人の母のもとに生まれ、エキゾチックな魅力溢れる容姿と驚くほどしなやかに動く身体。ヨガをする姿だけを見ていると、別世界の存在にも思えてしまうけれど、その人懐こくってフランクな人柄に触れると、なんとも言えない親しみを感じずにはいられません。

main.jpg

ヨガ指導者として全国で活躍しつつも、今年はじめに都内から鎌倉へと住まいを移し新たなスタートを切った美怜さん。「ヨガに生きる」彼女の話を聞かせてもらいました。


深い呼吸で気づいた、ヨガの道

cocomo.jpg

 秋のはじまりの由比ヶ浜、台風16号の影響で波が割れ始め、サーファーたちがひとりふたりと急ぎ足で海に向かって行きます。美怜さんの住む家から10分と離れていない浜で待ち合わせて、海沿いのカフェに入りました。
 ヨガを始めたのは7年前。大学生の頃で、近所のスポーツジムで開かれていたレッスンにふらりと出てみたのがきっかけでした。最初のヨガレッスンで「こんなに深く呼吸ができるものなのだ!」と感動。思春期から心の不安定な状態が続き、いつもイライラしていたために呼吸が浅くなっていたのだと振り返ります。学校とアルバイトと遊びが忙しかった二十歳の頃のこと。幼少期からとにかく身体を動かしているのが習慣だった彼女にとって圧倒的に運動量が足りず、ストレスもあり、「自分に向き合うこういう時間が大切なんだ」と実感したそうです。その日の感動が今の彼女を導いているのですから、人生はどこに運命の扉が隠されているのかわかりません。

standing in green.jpg

「人は生まれた瞬間から息を引き取るまで、24時間365日呼吸をしています。それまでそこに意識を向けたことがなかったので、呼吸をして生きていることがほんとうに有難いと思いました」と。「呼吸はイライラしていると速くなり、リラックスしているとゆっくりに。呼吸とマインド、身体は全部繋がっています」。ヨガに出会い、感情をコントロールしやすくなり、心豊かに過ごせるようになりました。続けるうちに風邪をひきにくくなったり、35度代だった平均体温が36.5度に上がるなど、体調が整っていったそうです。

 加速度的にヨガの世界に引き込まれていった美怜さん。実はそれにはもうひとつ理由がありました。彼女の母もまた、インドにしばらく住んで学んだヨガのプラクティショナーだったのです。「日常の中で、母の三点倒立する姿を見ていました。小学生の頃は、毎日のストレッチがスパルタで、出来ないと寝させてくれなれなくて泣いていました」と笑いながら、そのとき教えられた体を捻り、両方から回した手の指を組むポーズを見せてくれます。

hairup.jpg

灯台下暗し、「ヨガ」という認識もないままに暮らしの中にあって身体の中に入っていたのでしょう。スポーツクラブで「ヨガ」の一連の流れを体験したときに、シナプスが繋がるかのように、それまで刷り込まれていたポテンシャルが生き生きと動き出したのです。

指導者としてのスキルを育んだ時間

closingeys_green.jpg

「ヨガは自分自身も幸せになれて、老若男女、小さい子もできるし、90代の先生もいらして、素敵だなと思います。身体だけでなく心も健康になれることを多くの人に伝えたい」。そんな強い思いと共に、卒業後の進路はヨガスタジオを運営する会社へ。大学4年生の早い時期に内定を受け、夏にはヨガの基礎を学ぶ養成プログラムに参加。入社後はヨガの実技はもちろん、いかにわかりやすく伝えるかという一語一句から、見せ方、立ち位置の指導を受け、全国400店舗で同じクオリティのレッスンを提供するという基準をクリアするスキルを身に付けます。「この会社では本当に多くを学びました」と、今の自分の軸を育んだ場だと言います。

smile front.jpg

 22〜23歳という年齢で、ベテランの指導者たちに混ざってレッスンをもち、自らの経験の浅さに戸惑いつつも精一杯頑張った時期。「ありがたい経験をさせていただけて、恵まれていたと思います」。自分よりヨガ歴の長い生徒さん達に囲まれ育ててもらったと言います。そんな美怜さんの実力が認められ、入社2年目で全国約3000人のインストラクターの1割が選ばれるトップインストラクターに。日本の北から南までの教室を巡り、ひと月に50以上のレッスンを行いました。移動も多く大変な業務を「動いているのが好きな自分の性格に合っていた」と言いつつも、プレッシャーを感じて自信を失っていた時期もあったそうです。ただし持ち前のポジティブな姿勢で次の年もトップインストラクターとして働き、しっかりと経験を積んで2020年1月にフリーランスとして独立しました。

「目的のある美」を評価するコンテストに

back.jpg

 いよいよ順風満帆の門出、と思いきや、日々深まるコロナ禍の影響でヨガスタジオはクローズ。大きなダメージの中、オンラインのレッスンなど試行錯誤の日々となってしまった美怜さんに次なるチャンスが訪れます。それはある人物からの「ミスワールド」(*1)というコンテストに挑戦してみたらどうかという提言でした。「自分はミスコンに出るタイプじゃない。絶対無理に決まっている」と最初は否定的でしたが、「目的のある美」をスローガンに美に集まる力を社会貢献に生かすことを目的に行われていること、女性の尊厳、地位向上にも力を注いでいるというコンセプトに心が留まります。容姿だけでなく内面を大切にして評価されることにヨガとの繋がりを感じ、「コロナ禍の今だからこそできることかもしれない。ミスワールドとして、ヨガを通して自分がやっていることを発信していきたい」という気持ちで応募を決意します。そして8000人の応募者の中から審査が行われ、30人のファイナリストのひとりに選ばれます。

beach_sideface.jpg

 コンテストまでの3ヶ月間、ファイナリストたちは様々なレッスンに励みます。ハイヒールでのウォーキングや美容のケアなど、普段は身近にないことも学べたと嬉しそうに語る美怜さん。チームワークや英語力、スポーツ能力、SDGs (*2)に関するプレゼンテーションなど、さまざまな審査を経て、見事、2020 Miss World Japan特別審査員賞とMiss Yoga賞に輝きました。現在はヨガを通しての文化交流や国際ヨガデーなどのイベントでの活動を続けています。ミスワールドへの挑戦、そしてふたつの賞を受けたことで、美怜さんの中で大きなものが変わりました。それは「自信をもてた」ということです。「今も自分に満足したわけではないけれど、財産となる経験ができました。チャレンジしてよかった」と。

「鎌倉に住み、流れが変わりました」

walkbeachside.jpg

 そんな彼女が今年の初めに鎌倉に引っ越した理由は、「今だ!」という直感だったと言います。小さいときから海の側に住みたいという夢はあったものの、まだまだ先の話と思っていたのに、何かに突き動かされるような衝動。そして「鎌倉に住むと決めてから、流れがいい方向に変わりました」と声が弾みます。

サーフィンやSUPで海に出る機会が増え、自然をより近いところに感じられる生活となった美怜さんは、水を得た魚のようにますます輝きを増して映ります。さらに最近、鎌倉在住の歌手、有坂美香さん(*3)との運命の出会いがあり、歌を習い始めました。
 もともと歌うのは苦手、けれど潜在的に歌を求めていた美怜さん、有坂さんからゴスペルのレッスンを受けるようになって、「純粋に楽しい」のだそう。「クラスの最初は恥ずかしくてボリューム低めなんですが、終わる頃には喉が開いて、自転車に乗り歌いながら帰っちゃうくらいルンルンしているんです」。声を出すことで自分が変わる、歌うことがエネルギーの解放になるのだと。そこにヨガとの共通項を見い出し、「身体の筋肉は鍛えたり、柔軟運動をしたりするのに、コミュニケーションの要である喉を鍛えたり緩めたりしていなかった」と。「肌やボディケア同様に、声のケアをするのはどうだろう」。
 その点で有坂さんと意気投合、マスク時代となった今、顔の表情の代わりに声の出し方でコミュニケーションが潤滑にできるのではないかと模索。ボイストレーニングとヨガを掛け合わせたり、呼吸法や喉のチャクラに対応するヨガのポーズを考えたり、美怜さんが経験した「声で心を開く効果」を伝えたいと、有坂さんと共同でオンラインワークショップを開催することになりました 。(*4)

rising hand in air.jpg

 ヨガの指導者となり、激動の5年を経て大きく成長し続ける美怜さん。年内には全国にいる生徒さん達とのオンラインコミュニティサロンのオープンを予定しています。テーマは「オージャス」。アーユルベーダの世界で生命エネルギーを指すこの言葉に響く内容を伝え、美怜さんはもちろん、みんなで作り上げ、それぞれが発信できる場になればと話します。その視線の先、ちょっと遠い未来の夢をたずねると「もうちょっと歌を極めたい」、そして「もっと潜りたい」と。この夏、学び始めたことのひとつ、スキンダイビングの世界にも強く心惹かれている様子です。
 「潜ることは瞑想。すごくいいマインドの練習になります。心が揺れると息が苦しくなる。それはヨガにも似ています。キーワードはすべて呼吸。呼吸で自分が変われたので、潜ることとヨガを掛け合わせて、何かを伝えられてばいいなぁと思います」。追い風に乗り、素直に、全力で生きる姿。「どちらも地球と一体化することなのかもしれませんね」と微笑む彼女には、力強く、瑞々しい「オージャス」が宿っています。

stairs.jpg

*1 ミスワールド 世界3台コンテストの中で、最も歴史が長く、参加国は世界最多を誇る、世界で最もの権威のあるコンテスト。現在では131 の国と地域で国の代表が選出されている。

*2 SDG’s(持続可能な開発目標)2016年から2030年までの15年間で世界が達成すべきゴールを表したもの。17の目標と169のターゲッットで構成されている。17 の目標とは、1貧困をなくそう、2飢餓をゼロに、3すべての人に健康と福祉を、4質の高い教育をみんなに、5ジェンダー平等を実現しよう、6安全な水とトイレを世界中に、7エネルギーをみんなにそしてクリーンに、8働きがいも経済成長も、9産業と技術革命の基盤をつくろう、10人や国の不平等をなくそう、11住み続けられるまちづくりを、12つくる責任つかう責任、13気候変動に具体的な対策を、14海の豊かさを守ろう、15陸の豊かさも守ろう、16平和と公正をすべての人に、17パートナーシップで目標を達成しよう

*3 有坂美香 BRISA 湘南PEOPLE VOL.50で登場

*4 オンラインワークショップ
声で心を開く!ヨガ&ボイスケアから学ぶ自己表現のニューメソッド サンライズ
声で心を開く!ヨガ&ボイスケアから学ぶ自己表現のニューメソッド ムーンンライズ 1Dayまたは、2Days取ることも可

interview & text : sae yamane
photo : yumi saito
coordination : yukie mori 





Mirei Christina Saale セーリィー クリスティーナ 美怜

ヨガ指導者。2020 Miss World Japan特別審査員賞 & Miss Yoga賞受賞。
アメリカアリゾナ州生まれ、東京出身。大学生の頃に本格的にヨガを始め、某大手Hot Yoga Studioのトップインストラクターとして全国で活躍。自身のワークショップやリトリートを数多く開催。現在はフリーとして東京、神奈川を中心に活動中。ヨガの効果を実感してもらい、ヨガの魅力をより多くの人に伝えることを目標に、ウェルネス業界の発展に努める。mireistyle.work instagram@Mirei Saale

10月24日(日) MARINE & WALK YOKOHAMAにて、どなたでも参加可能な美怜さんのヨガクラスが開催予定 
〔 セーリィー クリスティーナ 美怜 〕MARINE YOGA 2021 Autumn


Follow me!