湘南PEOPLE VOL.8 田辺あゆみさん

葉山での保護犬たちとの出会いが新しい自分を教えてくれた

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葉山に住んで5年半。家族との時間、友人との時間、そして犬の保護活動と、ひとつひとつのことに愛をもって向き合う田辺あゆみさん。「精神的に変わった」という彼女の素の笑顔は、出会う人すべてに優しさを取り戻させてくれるようです
― 結婚してすぐ葉山に引っ越されたのですか。

special -  田辺あゆみさん - ブランコ田辺 もともと東京都町田市育ちで、結婚してからも4年くらいは世田谷にいたんです。今住んでいる家を見つけてとても気に入って。それも当初は「実は契約済みなんです」と言われてがっくりしていたら「キャンセルになりました!」と連絡があったんですね。
私たちのところに戻ってきた!と、すぐに決めました。葉山の山側で、出来すぎた感じのないほどよさが自分たちに合うと思いました。格好良すぎたり、決まりすぎたものは好きじゃないので。

― 住んでみて、いかがでしたか?

田辺 まず精神面が変わりましたね。東京にいると心が忙しかった。結婚してゆっくりしてるはずなのに、どこかそのゆっくりさが後ろめたいような。今思えばそわそわしていました。こちらは週に2回しかやっていない店があったり、夕方6時になれば閉まっちゃったりするでしょう。ああ、これでいいんだ、と思いました。
 今5歳になる息子がいるのですが、子育てするのにもいい環境です。出産の2ヶ月前に引っ越したんですけど、結果的に子どものためにもなりました。
― 出産の2ヶ月前の引越しは大変だったんじゃないですか?!

special -  田辺あゆみさん - ピアノ田辺 田辺 妊娠中はけっこう調子がよくて、リフォームしてペンキ塗ったりしていたんですよ。生まれてから引っ越すよりは楽だったと思います。「歩くとお産の経過がいいから」と言われてよく歩いていたのですが、こちらは家から出たときの匂いが違うし、とても気持ちよく歩いていました。

― 緑の匂いと。海の匂いと。本当に気持ちがいいです。

田辺 光の色が違うから、着るものもすっかり変わりました。もともとゆるい格好は好きだけれど、さらにゆるくなった(笑)。都会的なデザインのものが似合わない土地柄な気がするんです。だからどんどんシンプルになっていきますね。
― 精神面の変化は、ほかのことにも影響していますか。

special -  田辺あゆみさん - 犬田辺 犬の保護活動に目を向け始めたことは大きいですね。
 逗子にVAHANAS BARというお店があるんですが、そこの菊池さんというオーナーが殺処分されるはずだった犬をセンターから引き出し、里親を探しているんですね。その犬たちの写真や性格を書いたチラシが店の前にたくさん貼ってあるんです。もともと犬が好きな私は哀しくてやりきれなくて見ないようにしていたんですよ。そうしたらある日、夫に「あそこの貼り紙知ってる?」と言われました。私が「知ってるけど、見ない。耐えられないよ」と言ったら「君が『耐えられない』と言ってる間に犬たちは殺されてるよ」と言われてズコーンと来て。ものすごく無責任な気がして、恥ずかしくなって。
それから、まず犬のトレーナーの学校へ行き始めました。しばらくしてVAHANAS BARの菊池さんにも覚悟して会いに行きました。保護犬がいるところを訪ねてみたら犬たちが想像以上に幸せそうに暮らしていて驚きました。
― どのくらいの数の犬がいるんですか。

special -  田辺あゆみさん - ソファ田辺 現在60匹くらいだそうです。うちも今、1匹預かっています。もともといた犬もいるので、とてもにぎやかですよ。でも先日、預かり犬に里親が見つかって、涙の別れをしました。里親が見つかるのは、預かり犬にとって一番いいことなんですが。しばらくうちにいると、すっかりかわいくなってしまって。幸せになってほしいですね。

― 保護された犬というのは、保健所で殺されかけた犬、っていうことですか。

田辺 はい。一頭でウロウロしているところを捕獲される犬もいるけど、「飼いきれないから」と飼い主さんに見放される犬もたくさんいます。それが日本中に年間約8万頭いると言われています。そういう犬たちを一匹でも救い、里親を探したいというのが、私たちの思いです。
― 預かり犬のこと以外に、どんな活動をされているのですか。

special -  田辺あゆみさん - ベンチ田辺 去年は夫が犬たちの写真を撮り(注・ご主人は写真家の藤代冥砂さん)、チャリティカレンダーを企画したら、とても反響がありました。逗子や葉山だけでもで20店舗くらいのお店に置いてもらえたんです。その収益を全額寄付しました。そのお金はごはんや医療費、犬舎を増やすなど、直接犬のためになることに使われます。

― 今年も何か活動を企画されていますか。

田辺 4月23日から5月15日まで葉山芸術祭が行われるのですが、葉山の「マレル」という雑貨屋さん(問い合せ先:ハナ 090−9399−5030)で、また犬たちの写真展をやります。ぜひ皆さんにもお出かけいただきたいです。
― 息子さんはおかあさんの犬への愛情をどう感じていらっしゃるでしょうね。

special -  田辺あゆみさん - ピアノ田辺 我が家では犬たちの群れに混じって大きくなりましたからね(笑)。
 保育園で「モデルになりたい」と言った女の子がいたらしいんです。そのとき、保育士さんが息子に「あなたのママはなんのお仕事だったかしら?」と、私がモデルであることをご存じでおっしゃったそうなんです。すると息子は「うちのママは犬を助ける仕事をしているんだよ」と言ったらしいです。そんなふうに教えたことはないんですが、嬉しかったです。
― おかあさんの犬への愛情をちゃんと理解してらっしゃるんですね。素敵なお話、ありがとうございました。

取材協力場所:SHOKU-YABO農園
神奈川県横須賀市芦名2-1700
大楠山登山口入り口
http://syoku-yabo.com/

私の葉山

special -  田辺あゆみさん - 犬私が犬を保護することを始めたきっかけであり、今も活動のお手伝いをしている神奈川ドッグプロテクション。たくさんの犬たちが幸せそうに暮らしています。代表の菊池英隆さんは、VAHANAS BARのオーナーでもあります。
犬の譲渡会を開催することもありますし、ホームページやブログで里親も随時募集しています。
問い合せ先:046-887-0299 
cocoon10@live.jp


撮影 大沼ショージ
インタビュー 森 綾

PROFILE

special -  田辺あゆみさん - 植物たなべ・あゆみ 1978年東京生まれ。
1995年16歳で単身パリに渡り、モデル事務所に所属、パリコレクションに参加。
'98年にはNYコレクションにも参加する。
2000年からは活動の拠点を東京に移し、現在に至る。
'11年4月末、ロッキングオンから藤代冥砂撮影の写真集『もう家に帰ろう2』を発刊予定。

オフィシャルブログ
http://tanabeayumi.jugem.jp/

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