湘南PEOPLE VOL.9 末吉里花さん

世界のどこへ行っても、ゼロになれる鎌倉に帰ってきたいと思います。

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ニューヨークに生まれ、鎌倉に育ち。… 今は実家のある鎌倉を拠点に海外での仕事の多い末吉里花さん。フリーアナウンサーとしてのめざましい活躍とともに、最近ではフェアトレードの活動を応援することにも積極的です。世界中を旅しても帰りたいと思う故郷・鎌倉への思い、たっぷりうかがいました。
― お父様の仕事の関係でお生まれになられたのはニューヨークだったのですね。その後、戻られてから、子ども時代には鎌倉で遊んだ思い出がたくさんあるのですか。

Special - VOL.9 - 末吉里花末吉 1歳になる前にニューヨークから鎌倉に戻ってきました。曽祖父母の時代から鎌倉に住む一族なんですよ。その後、幼稚園の年長から小2まではタイで過ごしました。
小3のときにまた鎌倉へ。その頃を思い出すと、外でばかり遊んでいた気がします。雪が積もるとその雪をカキ氷のように食べたり。今日撮影させてもらった鎌倉文学館の坂をローラースケートで下りたり、みんなで演劇ごっこをしてみたり。夏には海で泳いだり、貝殻を拾ったり。男の子も女の子も一緒になって、私たちの子ども時代は鎌倉の自然を本当に満喫できたものでした。
― 中学時代はまたアメリカへ引っ越されたとか。
 
Special - VOL.9 - 末吉里花末吉 そうなんです。その前に姉妹のように仲良くしていた隣に住む幼なじみがいて、本当に別れるのが寂しくてね。私はニューヨークの公立中学に入ったのですが、最初は英語もわからないし、毎日泣いていました。放課後に家庭教師についてもらって特訓、英語でコミュニケーションをとれるようになったのは、3ヵ月後くらいだったでしょうか。
 偶然にも、その鎌倉の幼なじみもお父様の仕事でボストンに来ることになり、お互いに励ましあうことができました。
 でも、ずっとアメリカで大学まで出て働きたいとは思わなかったですね。アメリカで日本人としてのアイデンティティを改めて考えるようになって、日本の大学を選びました。
― 18歳。鎌倉に戻ってきた日のことを覚えていますか。

Special - VOL.9 - 末吉里花末吉 はい。空港に着いて、列車に乗って、大船あたりまでは「戻って来なきゃよかったかもなあ」なんて思っていたんです。ところが北鎌倉に入った瞬間に、細胞が全部わーっと声をあげたような気がしました。「大好きなところに戻ってきた」というほっとした気持ちが胸に広がりました。
 ニューヨークにいたからこそ、また戻ってきた鎌倉の趣き、四季が愛しくなったように思います。そのとき飼ったミニチュアシュナウザーのハナちゃんも、今は13歳のおばあちゃんになってしまいました。

― ミス慶応に選ばれ、フリーアナウンサーになるチャンスをつかまれましたね。

末吉 いろんな事務所の方が声をかけてくださったのですが、その場は全部お断りしていたんです。今の事務所だけがその後も定期的に声をかけてくれました。その後、映画番組のオーディションに合格し、ほどなく「世界ふしぎ発見」のミステリーハンターになることもできたのです。
 世界を見る機会をいただいたことで、環境問題に取り組み、フェアトレードを伝えていく活動にも出会えました。
― フェアトレードについては、どのような活動をなさっているのですか。

Special - VOL.9 - 末吉里花末吉 2006年にVOGUEという雑誌で「People Tree」というブランドのワンピースを見つけたんです。代表のサフィア・ミニーさんはイギリス人。環境にも消費者にも作っている人たちにも優しいやり方で、いきいきとファッションを提案されている人なんです。サフィアさんに実際にお会いする機会があって、私もお手伝いをさせていただくことになりました。
 1年ほど前にサフィアさんと一緒にバングラディッシュへ行き、フェアトレードの作り手たちを実際に取材して、それを雑誌やカタログに文章を書かせていただきました。
 工場は都心から離れたのどかなところにあり、動物や人間が共存して暮らしている場所にありました。1971年の独立戦争で伴侶を失った女性たちが独立できるよう、スェーデンのNGOが入って、工場を建てたのです。
 過酷な労働条件で工員が働かされている他所の工場と比べれば、そこには笑顔があり、健康的な労働環境がありました。
 1枚の洋服に手間と労力が注がれている様子を見て、またその服を着る意識が変りましたね。そういうところを若い人たちにも実際に見てもらいたいと、今、ツアーができないかなとも考えているところです。
 ほかに、学生さんたちに講演したり、ファッションショーを催したり、フェアトレードというものを楽しく認知してもらえるように活動しています。
― 鎌倉に戻ってこられたときは、どのように過ごしていらっしゃるのですか。

Special - VOL.9 - 末吉里花末吉 仕事で日本にいるのは1年のうち半分くらい。だから鎌倉にいるときは、散歩したり、家でひたすら読書したり。あまり外食はしなくて、基本的にレンバイでお野菜を買ってきて家でご飯をつくって食べています。夜はたまに、THE BANKというバーにふらりと行ったりします。
 将来、結婚してどこか違う場所で暮らすことになったとしても、少しずつパートナーとなる人を説得して(笑)、最終的には鎌倉に戻ってきたいと思います。
 海外のいろんな場所で貴重な時間を過ごせるのも、私には鎌倉という戻って来られる場所、愛する場所があるからだと思うんです。
 私の人生のテーマは「旅」ですが、いろんなところへ行っても、戻って来ることでゼロにできる。鎌倉は私の心身をともにリセットしてくれる、世界で一番愛する場所です。

《私のお気に入り》

鎌倉の友人がつくっている、hina himukaのジュエリーは、いつもつけていると「それどこの?」と聞かれます。自然からインスピレーションを得たデザインは、繊細で他にないもの。ひとつずつもちろん手作りで、彼女の純粋でひたむきなスピリットが注ぎ込まれています。今日のブレスレットは蓮の花に雫。

Special - VOL.9 - 末吉里花

hina himuka
http://hinahimuka.com/

撮影協力

Special - VOL.9 - 末吉里花 - 鎌倉文学館鎌倉文学館 
http://kamakurabungaku.com/
展示内容:
特別展 芥川龍之介と久米正雄 われら作家を目指したり

開催期間:
平成23年10月8日(土)から12月18日(日)

撮影 斉藤有美
インタビュー 森 綾
衣装 ピープル・ツリー
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