湘南PEOPLE VOL.29 大橋マキさん

約2年に渡るイタリア・ミラノでの生活を経て、今年初めにご家族で帰国されたアロマセラピストの大橋マキさん。帰国後は、慣れ親しんだまちである葉山に居を構え、自然とともにある暮らしを実践されています。ミラノでの暮らしで感じたことやお子さんと過ごす日々、葉山でのソーシャルな活動など、お話を伺いました。

宝物のようなイタリアでの日々

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2年ほど前、旦那さまのお仕事の関係でミラノへ移住した大橋さんご一家。小さなお子さんを連れての海外移住は、色々な面で大変だったのではないでしょうか。

「イタリアでの日々は本当に楽しくて、後ろ髪を引かれながら帰国しました(笑)。子どもたちはインターナショナルスクールではなく地元の学校に通わせたいと考え、モンテッソーリの学校を選びましたが、そこでの教育は大変素晴らしいものでした。個人の自由を尊重しながら、五感のすべてを使って体感しながら学ぶ教育スタイルなんです。
例えば、図形を学ぶとします。日本では算数の時間に教科書で立方体だとか円錐だとか、名前ありきで学びはじめますが、娘が通った学校では、まず粘土で形をつくるところからスタートするんです。
手のなかですっかり愛着の湧いた形に対して名前をつける。自分のものにしていく過程が面白いですよね。
それぞれを教科ごとに分けるのではなく、たとえば宇宙はどうやって始まったのかと、という物語の延長線に化学や地理、生物の学びが自然と出てくる。自分が生きているこの世界に繋がるストーリーとして授業がデザインされていくのです。それって素敵ですよね」

渡伊当初は、下のお子さんが言葉や文化に馴染めず大変な時期もあったそうですが、イタリア独特の温かなお節介に支えられながら少しずつ馴染んでいき、帰国する頃にはすっかり地元に溶け込んでいました。

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「イタリアは土地によって人々の気質やカルチャーが全然違います。だからこそ、違うことが素晴らしいんだ!と、異文化を非常に尊重してくれるのです。
同時に、人へのポジティブな好奇心に長けていて、どんな人でもその時々の会話を心から楽しむ。目を見つめ、好きっていう気持ちを真っすぐ表現してくれるんです。たとえ知らない人でもそんな感じですから、それはもう温かかったですね。
もちろん生活面での不便も多々ありましたが、周りにいるイタリア人たちの寛容さに私自身のハードルもどんどん低くなっていきました(笑)。不便さや不自由さをも受け入れてしまうイタリア人の大らかさから、多くのことを学びました」


人の温かみがミラノに似ている葉山という土地

今年はじめに帰国された大橋さんご一家。お子さんたちはそれぞれ地元の幼稚園、小学校へと転園、転入し、日本での生活がスタートしました。

「帰国して1週間も経たずに、子どもたちは元の日本での生活スタイルになりました(笑)。きっとお友だちや海と山と川、たくさんの自然に囲まれた葉山という土地とおかげですね。
葉山とミラノって、暮らす人の雰囲気や流れている時間のスピードが、何となく似ているんです。私も葉山に戻ってきてほっとしたというか。一度離れてみたからこそ。やっぱり良いなあってつくづく感じています」

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大橋さんご自身は6年前から続けている「葉山つながりプロジェクト」(※)での活動に再び関わるようになり、そこで過ごす時間が楽しくて、やりがいを感じられると言います。
もともとアロマセラピストとして病院に出向きアロマ施術をしたり、介護者のためのアロマ講座を担当していたこともあり、アロマセラピーやタッチングがお年寄りにもたらすパワーを常々実感していた大橋さん。
その経験とこれまでのつながりのなかから、約6年前に「葉山つながりプロジェクト」の前身の団体を始動。今では子どもからお年寄りまで多世代が、土や植物、食を通して様々な交流を深めています。

※地域に作るハッピーなエイジングの拠点。お年寄りから子どもまで多世代が集い、活動するプロジェクト。
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「そもそものきっかけは私がホーリーバジルに関わっていたことと、介護者のためのアロマ講座を担当していたことです。そこでのつなりやご縁で、今のようなコミュニティができました。
ここにいらしてくださるお年寄りの方は、皆さん土に触れるとものすごく元気になるんです。きっと土に触れ、育てるという行為が自分に重なるんですね。
何もないところに種を蒔き、芽がでて成長してゆく課程を、心から慈しみ、楽しんでくださっています。
収穫したハーブは皆でお料理したり、あるいは手仕事したりと、季節折々の楽しみを、そこにいるみんなで共有します。

スタッフはほとんどが私のような子育て中のママですから、皆さん様々な専門性をもっていながらも、母としての日々を過ごしています。なかには、ダブルケア(子育てしながら親の介護をする)をしている方もいますし、ご夫婦で介護をされている方もいます。
そんな人たちが、それぞれの専門性を活かしながら、子どもたちも交えてお年寄りとお料理したりお喋りしたり、葉山のごく普通の1日を一緒に楽しむ。
そんな日常的な繋がりが、これからの地域ケアに必要なんじゃないかなと感じています」

その人自身が活躍することが、生きる活力になる

葉山での活動を続けるうちに、“エイジング”という言葉が大橋さんのなかでキーワードとなり、歳を重ねていくことへの価値観や、想いがさらに深まったそうです。

「その人の内から出るチカラは、どうしたら生まれるだろうと考えたときに、その人自身が活躍することなんだと気付いたんです。
小さな子どもだって、自分が役立つことって嬉しいですよね。みんな、誰かの役に立ちたいと思っているし、それは歳を重ねたからといって、周りが取り上げたり自分で諦めてしまわなくても良いと思うんです。
やりたい人はどんどんやったら良い。そういうことを考えて行くうち、エイジングについてもっと知りたくなったんです」


ことに超高齢社会に関するマスコミの情報からは、ネガティブな不安要素だけが取り上げられがち。
けれども、歳を重ねた向こう側にあるいぶし銀の輝きに出会ってみたい、もっと老いに触れ身近に感じることが、老いそのものの良さに気付くきっかけになるのではと、大橋さんは考えています。
だからこそ、アロマからスタートしたこのプロジェクトは、今や、人が生まれてから老いるまでの生活全般のつながりにまで発展しているのです。
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最近ではアロマが縁となり、山形県のクロモジのプロジェクトにも関わっている大橋さん。
クロモジとは古来より日本に生息している樹木で、爪楊枝として使われることで有名ですが、実はその芳香にはさまざまな効果が期待でき、少し前から注目が集まっているのです。

「建材がたくさん採れる山形で、クロモジは言わば建材を切り出す際に支障となる木なのです。そのクロモジを何とか有効活用したいとご相談いただいたことがきっかけで、このプロジェクトに関わらせていただくことになりました。
その地域に住む人たちにこそ、地元の森や樹木の良さを感じて欲しい、森を身近に感じてほしいという想いがあります。
日本の森の生態系の豊かさは世界でもトップクラス。そんな素晴らしい環境から生み出されるアロマは世界に誇れると思うんです」

山形での縁をきっかけに、今後は、日本発の和のアロマを世界に紹介していきたいとも考える大橋さん。
少女のようにキラキラとした瞳で楽しそうに話す大橋さんの姿から、エイジングという概念は、今この瞬間を心から慈しみ、楽しんでいる人にとっては無用の長物なのかもしれないとさえ感じました。


写真 / 眞田厚司
取材・文 / 富岡麻美
コーディネート / 森幸映
撮影協力 /HAYAMA Funny terrace

大橋マキさん

公式ブログ:http://www.aromamora.jp/news

<今後の予定>
葉山つながりプロジェクト

次回は「オレンジカフェ」として7月22日に開催されます。
詳細はこちらから。

山形県大江町アロマ体験ツアー 7月22日−23日 
クロモジの蒸留やアロマのお話、アロマクラフト作りも行います。
詳細は大江町美しい森林づくり協議会 0237-62-2115 norin@town.oe.yamagata.jp

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