湘南PEOPLE Vol.30 林民子さん

1年ほど前、都内から鎌倉へと居を移したダブルツリー株式会社代表の林民子さん。今から10年くらい前に「エシカル」という言葉を初めて日本に紹介したエシカル・サステナブルムーブメントの先駆者的存在です。

現在はお姉さまの路美代さんとともに、ソーシャルでエシカルなファッションブランド『SHOKAY』日本法人の共同代表や、NPOソーシャルコンシェルジュの代表理事などを務められています。

公私ともにエシカルでマインドフルな毎日を過ごされている林さんに、ビジネスや日々の暮らしについて伺いました。
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マインドフルネス×サステナブル×クリエイティブな暮らしを求めて

北海道出身の林さん。幼い頃より大自然に親しんだ背景もあってか、長年、精神的にも充実したサステナブルでクリエイティブな暮らしに重きを置いてきたといいます。

鎌倉へ移住するまでは青山界隈に暮らし、月に1度、北海道へ帰るライフスタイルだったそうですが、ここ数年、たびたび鎌倉を訪れるうちに、林さんの大切にする価値観と鎌倉の街に多くの共通点を見いだし、移住を決意されたそうです。
「鎌倉に越してきて1年近く経ちますが、お会いする人が皆さんユニークで、マインドフルな方が多いという印象です。海と森がすぐ近くにあることも影響していると思いますが、自然とつながり、自分のなかに確固たる軸を持つ人が多いですよね。ですから心からお付き合いできる方と出会える確率が高いなあと思います。残念なのは、引っ越し以来とても忙しくて、なかなか鎌倉を探検し尽くせていないことです」
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これからは“サーキュラーファッション”の時代へ

もともとは欧米のファッションブランド輸入会社でPRをされていた林さんですが、ファッションやライフスタイルを通してソーシャルな活動をしたいという想いのもと、独立。

そして今から10年ほど前、当時はまだ日本では知られていなかった“エシカル”という言葉を紹介。現在のエシカルムーブメントの立役者でもあります。

「長いあいだ、good story(グッドストーリー)/good design(グッドデザイン)/good quality(グッドクオリティ)、この3点のバランスが良いモノ、コトをずっと探し続けてきました。ある時、友人からチベット語で“ヤクの柔らかい毛”という意味を持つマテリアルブランド『SHOKAY』を紹介してもらい、そのブランド理念に心から共感し、日本法人の代表を務めようと思いました」
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『SHOKAY』とは、創立者であるキャロル・チャウが、ハーバード大学ケネディスクール(公共政策大学院)の学生時代、友人と中国辺境値少数民族をサポートするためのソーシャルビジネスを模索するなかで“ヤク”に出合ったことがきっかけとなり、設立されたブランド。ヤクはヒマラヤ山脈の厳しい自然のなかで、チベット族の人々が放牧する家畜であり、古くからチベット族の宝として、また生活の糧として大切にされてきました。

アゴとお腹の柔らかい産毛(うぶげ)は希少価値が高く、カシミヤに匹敵すると言われ、その毛をフェアトレードすることで、チベット族の人々の伝統的な生活を守り、安定した収入をもたらしています。

2008年、林さんは『SHOKAY』日本法人を設立。今年9月には、表参道にショールームもオープンしました。
(※オープンスケジュールはこちら
「少し前から、繊研新聞にて『マインドフルファッションのABC』というタイトルのコラムを連載していましたが、その内容は私がこれまで関わってきたことや提案してきたことなど、エシカルやサステナブルファッションを総括したものとなっています。『SHOKAY』を10年続けて感じたことは、しっかりと丁寧に作られたものは、皆が末永く愛用してくれるということ。流行にのるものでもないし、簡単に壊れたり破れたりするものでもありません。同様に、ファストファッションではないため、ブランド自体が急激に成長するものではないと思っています。そんな状況のなかで、本質を理解してくださる人たちへ届けられたら嬉しいですし、こういったサーキュラーファッションの仕組みを広めたいと思います」

林さんの言う”サーキュラーファッション”とは、生産地からダイレクトに原料を調達し、製造、販売、資源として循環されるまでが一連のつながりのなかで行われるファッションのこと。トレーサビリティが明確であり、修理サービスやリサイクルの仕組みも確立されており、末永く愛用できるサービスを展開することを目指しているそうです。
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自然とのつながりが感じられる体験を

去る9月2、3日に北鎌倉の建長寺で開催されたマインドフルネスの国際フォーラム「Zen2.0」では、ボランティアスタッフとしてイベントに関わったそう。20代の頃から瞑想やヨガを続けていたというだけあり、今後は暮らしの中のマインドフルネスをテーマにしたイベントなども企画しているとか。

「鎌倉の自然のなかでやってみたいことはたくさんあります。少し前に、Zen2.0のイベントとして鎌倉の山の中で“野点”をしたのですが、これはとても気持ちが良く、マインドフルな時間でした。こういった自然とつながる贅沢さや喜びを実感できるような機会は、どんどん増やしていきたいと思います。実は編み物ってとてもマインドフルなのです。今考えているのは、森や海辺で、ヤクの毛糸を使って編み物をするワークショップ。皆で楽しく、自然と一体になりながら静かな時間を共有するのも面白いと思うんです」
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高い視点で物ごとを観察し、気づきの大切さを意識していると、本質を見極め、人や自然にとって正しい選択をし、心豊かな暮らしを実践していくことができるのでは。そんな心の在り方をファッションを通じて堅苦しくなく伝えていきたい、という林さん。

常に「自然とつながっているかどうか」を心に問い続けながら、「まずは自然に出掛けましょう、体感しないと気づけないですから」と軽やかに話す林さんに、”エシカル”という言葉を超えた、自然とともにある人間らしい暮らしと、ブレのない生き方を垣間見ました。




photo:yumi saito
interview & text:asami tomioka
coordination:yukie mori
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