湘南くらすらいふ第48回 相樂ご夫妻のClass Lifeな暮らし

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 逗子や葉山の魅力は?と聞かれたときに、まず第一に自然の豊かさが浮かびます。ただ自然に関していえば、日本中に素晴らしい土地はさまざまあります。では、この地域をとりわけ際立たせているものはというと、やはり「人と人のつながり」、コミュニティかもしれません。趣味や祭り事、またはお酒が好き、食べるのが好きという人のコミュニティは自然発生的に広がり出会いの場となります。その面白さや可能性を楽しみながらも実際にビジネスや社会の活性化につなげているのが、相樂三喜郎さん・勢津子さんご夫妻です。その場を提供すべく会員制コミュニティクラブ、「シェルクラブ葉山」を主宰。自らの別荘でありつつも、海に面した心地よい空間はゲストに開かれ、美味しいお酒や料理上手の勢津子夫人のおもてなしで集う人々を迎え入れます。

コミュニティの集う場所にしたいという思い

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 葉山の海を望む海岸線、人通りのない細い道に面した真っ赤な門、その先に玄関までのアプローチが続きます。車を降りながら、無造作に開いた扉から家の中を覗き込むと、白い壁、そして空と海の青。地中海の島に迷い込む錯覚に浸りながら足を踏み入れると、風の抜ける空間に置かれた長テーブルは、数時間後に予想される「賑わい」の前の静けさをたたえていました。この日はちょうど葉山の花火大会。花火を最高のロケーションで望むこの場所に、夜は20名近くのゲストが集まるということで、そのための準備にお忙しいのかなと思いきや、パーティの段取りには慣れた様子で、とても気さくに出迎えてくださいました。

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 もともとは30年ほど前に逗子マリーナに週末の居をおいたのが、海辺の暮らしの始まり。当時はお子さんたちも小さく、休みの日は都内から海の家、また河口湖の山の家へと移動して過ごしていたそうです。そのお子さんたちもそれぞれの家庭を持ち、現在はお孫さんが6人いるそうです。より海に近い葉山のこの場所を選び、家が完成したのが2009年。敷地内にはシェルクラブ葉山のほか、ふた棟があり、セカンドハウスとして貸されています。この場所に家を建てるにあたっては、コミュニティの集うスペースにしたいという考えが基本にあったそうです。

「ビジネスを離れて、同じ感覚をもつ友達たちとワインを飲みながらとりとめのない話で盛り上がりますよね。ワイワイと楽しみながら、実はこういうことやってるんだという話になり、それがアイデアやビジネスに展開していったり、新しいつながりが生まれたり。そんなコミュニティを作りたかったんです」。その背景には、東京で活躍しつつもセカンドハウスをこの地域に置く友人たちが、年々増えてきているという流れもあったようです。

「貝」のような家を回遊して過ごす時間

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 真っ白に塗られた建物、景色を額縁のように切り取る窓や壁。建築はもちろんご自身のデザインです。「まるで地中海のようですね」と話しを向けると、特にその意識はしていなかったけれど、「旅をしたさまざまな土地のいい所は記憶しています」と。その雰囲気は、画家、トーマス・マックナイトの世界と重なります。家のイメージをひと言で言うなら「貝」と説明する三喜郎さん。巻貝のように様々な層があり、その中を回遊しながらみなさんが楽しめるように配慮されています。

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「高さによって海の見え方も違ってくるので、あえて高低差をつけ、桟敷をつくったり、立ち飲みできるようカウンターバーのように木の板を渡したり」。ゲストたちはそれぞれの居場所を見つけくつろいだ時間を過ごします。その特別な時間をサポートするのが、勢津子さんのお料理とお二人の心からのホスピタリティなのでしょう。

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お料理好きには、楽しみの多い土地

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 40年以上の年月を共に過ごしてきたお二人。仕事だけではないつながりを大切にしたいという三喜郎さんが、会社のコミュニティスペースで度々開いたパーティのウエルカムクッキングは奥様が担当。どんなお客様が集まるから、こういった料理をというプランはお任せ。それは場所を移した、シェルクラブ葉山でも同じです。
 
 磯場になった家の前の海は、潮の満ち干きで様々な表情を見せます。磯遊びにも素潜りにも楽しい場所。三喜郎さんの楽しみはスキンダイビング。勢津子さんの楽しみは、散歩と美味しいお魚。「近所の漁師さんに分けてもらうと、東京とは全然違う違う種類の魚が手に入るんですよね。食べ方も教えてもらえるし」。また葉山、三浦、鎌倉の野菜も新鮮なものが手に入ります。「お料理が好きだと、ほんとうに楽しいですよ」と、葉山での食ライフを心底喜んでいる様子です。「食の趣味」もお二人共通だそうです。


空気感が違う。時間がゆっくりと過ぎていく

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 都内でも緑の多いエリアに住んでいて自然を感じながらの暮らしだけれど、「葉山はやはり空気感が違いますね」と言う三喜郎さん。早く起きて活動してもまだ時間がある。時間の動き方がゆっくりなのかもしれません。夜はテレビはつけないで、音楽だけを流し静かに過ごします。そして、ご自身のライフワークでもある、絵の制作に向かいます。「でも宴会のときは違います。夜中を通り越して次の日まで飲んでいることも」と笑いつつも、「仕事仲間ではなく、コミュニティから生まれる刺激のある話がおもしろいんです」。東京という「磁場」の強い場所から離れた葉山でつながるコミュニティには、都内で活躍する感度の高い方々の参加も多く、そこからまた新たな動きが流れ出すようです。

 長テーブルに落ちる日差しの角度が変わり、そろそろ宴の準備にとりかかる時間でしょうかと席を立つと、「ちょっと待って」と、今夜のゲストへのお土産だというお手製の梅干しを味見させてくださるお二人。それもなんと、収穫から二人でされた代物だと。ゲストを喜ばせることに心を尽くす姿が温かく、そこにほどよく力が抜けているのが絶妙なバランス。ポジティブな出会いがこの場所で生まれることが、ある意味、自然の流れのように感じられました。

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photo : yumi saito
interview & text : sae yamane
coordinate : yukie mori

相樂三喜郎さん
デザイン会社「ドウ・プランニングデパート」クリエイティブディレクター。シェルクラブ葉山、シェルクラブ松濤(ギャラリーGATHER)を主宰。自動車のデザイナーとしてキャリアをスタート、その後、有名化粧品ブランドの数々を立ち上げから手がける一方、賃貸事業を営む。自身のアート活動である、お目々アート『目は口ほどに物を言う』シリーズ制作に邁進中。家族は、奥様の勢津子さんと三人のお子さん。6人のお孫さんがいる。

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