グローバルで自由な時空間をもちつつ「市中の山居」を今に
観光客でにぎわう鎌倉・浄明寺で、広大な敷地のなかに静寂をたたえ、侘び数寄の象徴「力囲軒」はあります。山田宗里さんは、伝統をしっかりと守りつつ、現代的な感覚とグローバルな感覚を身につけた方。まさに「市中の山居」を体現されています。薪を焚くストーブのある社交室で、心の暖をとらせていただきました。
石川県から古民家を移築
敷地内には「止観亭」という、皇子一条恵観が建てた茅葺の山荘があります。それを使う中で「茅葺古民家」に魅せられたご主人は、自宅の改装にあたって石川県にあった古民家を譲り受けて移築することを決断。元の母屋にL字型につなげたのです。宗里さんはこんなふうに言います。「ちょうど子どもが生まれて茶道のための空間と居住空間を分けたいという思いもありました。移築に関しては不安もありましたが、主人と一致していた思いは『市中の山居』という考えでした」。
「市中の山居」に「現代」と「世界」の感覚を
「市中の山居」とは、室町時代に堺の商人を中心に流行したライフスタイル。洗練を極めた都市の感覚で、田舎暮らしの素朴さ、質実さに、安らかさと和みを覚えるといった意味です。
ご主人と宗里さんはまさに現代にそんな暮らしを実現させました。神棚や床の間の概念をふまえつつ、そこに現代アートや世界中で見つけてきた心ときめくものを配しています。
神棚の下にある白い大理石のオブジェは、11世紀イタリアの教会の壁の一部だそう。宗里さんは「精神性、という意味ですべてがつながる気がしています」と、ひと言。
ご主人と宗里さんはまさに現代にそんな暮らしを実現させました。神棚や床の間の概念をふまえつつ、そこに現代アートや世界中で見つけてきた心ときめくものを配しています。
神棚の下にある白い大理石のオブジェは、11世紀イタリアの教会の壁の一部だそう。宗里さんは「精神性、という意味ですべてがつながる気がしています」と、ひと言。
明の時代の中国のテイストもしっくりなじんで
1950年代の家具、アフリカの原始美術、現代アート。取り入れたかったものは、まったく違う場所のまったく違うものではありますが、不思議と古木のぬくもりのなかでひとつの世界観をつくっています。「明の時代の中国のテイストも取り入れたかったもののひとつ。特にこの格子のスクリーンは、谷崎潤一郎さんの別荘で拝見してから、どうしても欲しかったんです。家具も、400年前のイギリスの椅子など、太さも長さも生かしてひとつの椅子にしてある。日本人が自然のままのもののいびつさを生かす発想と近いと感じます。まさに市中の山居的ではありませんか」。