湘南くらすらいふ 第20回 真砂三千代さんのClass Lifeな暮らし

布とは祈り。本当のハレの思いを身にまとうものに。

葉山に住んで30年余り。フランクロイド・ライトの弟子が設計したという元別荘の一軒家に、デザイナーの真砂三千代さんを訪ねました。長年、超一流のファッションの仕事に携わり、‘86には布にこだわった独自のブランド、Afaを立ち上げた真砂さん。物作りから人が人らしく生きることを考え続けていた彼女の生き方には、軽やかな無理のないストイックさがあります。真砂さんと、布のこと、着ることについて思いを馳せてみましょう。

根こそぎ意識が変わったのは、インドの人たちの布のまとい方を見てから

2.jpgもともと東京でファッションの仕事をしていた真砂三千代さんは、日本人デザイナーがパリ発でつくっていたブランドにも所属していました。

「パリコレの手伝いもしました。大手のアパレル会社に所属した後、スタイリストをしていたこともありますし、ファッションのことは一通り経験したつもりでした。でも、一番衝撃を受けたのはインドに旅した26歳のときのこと。インドの女性たちは一枚の布をサリーとして身体にまきつけ、腕にブレスレットをして、そのまま野良仕事をしていたりする。私はそれまで1ミリ違わぬパターンの世界にいました。でもファッションは作られたものに人の身体を入れるものではなく、人ありきで、生活に根ざしたものなのだと衝撃を受けたのです」。

ハレとは、神とつながること

3.jpg我々日本人から見れば、晴れ着のようなサリー。それを着て野良仕事をする意味を、真砂さんはこんな風に考えました。

「彼女たちにとっては日々がハレの日なんですね。ハレというのは神と結び合う感覚。神という存在が生活の中にあるんです。祖先から脈々とつながった自分がここにいることも含め、自分の中でそれは大きな発見でした」

子育てはクリエイティブ。ただもっと社会とつながりたくて

4.jpg
ちょうどお子さんができたのをタイミングに、いったんファッション業界を退いた真砂さんでしたが、子育てをしながらもまた物作りへの意欲が高まっていったようす。

「子育ては最高にクリエイティブだと思いました。ただ社会とのつながりがないんですね。私にはものを作りたいという思いが強くて、自分の中のエネルギーを消化しきれない。ちょうど友達がアフリカからエスニックな布を輸入していたり、手織りのバティック、麻の布などが手元にありました。それらを使って’86にAfaを立ち上げたのです。東洋的なイメージを現代のものにすることがひとつのテーマでした」

Afaとは、日本の古代語で「太陽」の意。

「沖縄にはまだ残っている古代語があるんです。いい言葉でしょう。カジュアルに生活の中で着こなせる洋服を作りたかったんです」。

オーガニックコットンを日常に

5.jpg‘99にはオーガニックなものを推進したい友人達と共鳴して、オーガニック・マーケットにも参加。驚くほど農薬を使うコットンの現状を危惧し、オーガニック・コットンを日常着に使うことを始めました。

「そこでLife Afaという新たなオーガニック・コットンのラインを始めました。葉山でやっていたことも影響が大きかったですね」

旅人のようにリラックスして生きる

6.jpg
葉山に暮らすことの意味を、真砂さんはここでの人との縁やゆったりした時の流れに感じています。

「東京のファッションは流れが速い。巻き込まれていきそうになります。ここにいると、アジアを旅しているようなリラックスとゆったりした時間がある。夏だけここに居る人もいますし」

真砂さん自身も、布を通して未知の時空を得ているようなゆったりした気をまとっていらっしゃいます。

「私もハレの感覚にいきやすい人なんです。布を通して世界を旅しているような気がします」。

布は祈り。作家たちとの新たな挑戦を

‘98は石垣昭子さん、真木千秋さんと真南風(マーパイ) (現代の東洋服)を発表し、展覧会を開いたエポック・メイキングな年でもありました。石垣昭子さんは西表島にいらっしゃるんです。彼女はこう言いました。布とは祈りである、と。私もその思いを胸に、また服作りへの思いを新たにしました」

 舞踊家、音楽家、写真家とのコラボレーションなど、真砂さんの活動は進化を続けています。

「エバレット・ブラウン(写真家)が個展で着る衣装をつくります。私は100年前の日本人が着たような、きものと洋服の間のような衣装を考えているんですよ」

いたずらをたくらむ妖精のような笑顔が、心に残りました。

(撮影 斎藤有美、インタビュー・文 森 綾)

ショップ

Afa
オーガニックコットンのシャツや、草木染めのシルク・ストール、地厚のウールを使ったコートなど、素材そのものにラグジュアリー感のあるウエアが並びます。すべてが触っていたくなる肌触り。クリスマスまでは関連グッズもいろいろ。

神奈川県 三浦郡葉山町堀内810
TEL 046-877-4385
HP http://lifeafa.jp/

イベント告知

2014年1月8日(水)ー1月21日(火)
場所:日本橋三越本店5階 スペース#5
企画展タイトル: 漆黒の美 麗しの青

2014年3月19日(水)ー4月1日(火)
伊勢丹新宿店 5階 スペース#5
企画展タイトル(仮):「暮らしのクラフト展」

Life Style

Follow me!