湘南くらすらいふ 第17回 金子澄恵さんのClass Lifeな暮らし
2013.04.06
ジュエリーブランド『sumikaneko』のデザイナー、金子澄恵さんは、海からほど近い坂の途中にある打ちっぱなしの建物で創作活動をおこなっています。不思議な魅力のある箱のような建物に入ると、真っ先に目に飛び込んでくるのが、吹き抜けに吊るされたバルブやケーブルがむき出しの1960年代のシャンデリア。モノトーンで統一された空間は、インダストリアルデザインの意匠と都会的なファッションセンスがMIXされています。自然の光が美しい陰影を描き出すアトリエは、心地いい緊張感が漂う、理想の空間です。
光と影、2つの部屋
幾何学的趣向の強いクリエイションに根強いファンが多いsumikanekoは、シルバーとゴールドの普段使いができるリング、ネックレス、ブレスレット、ピアスがメインのブランド。デザイナーの金子さんはモノづくりに憧れ、ほぼ独学でジュエリーデザインを学び、10数年前からブランドを始めたそうです。メインは、石留めに使われるミルという工具を使って、平面を模様で埋め尽くしたデザインの「アワ」と、チェーンをかぎ針編みした「クロシェ」。大きな窓の前にある日の当たる部屋と暗い2つの部屋から、クラフト感あふれる繊細なジュエリーが生み出されます。書棚には、ジュエリー関連の本に加え『世界シンボル辞典』『ニーチェの言葉』など、哲学や精神世界の本が並びます。特に平面を次々と変化するパターンで埋め尽くしたくり返し模様の作品で知られるエッシャーには思い入れが強いようです。
海の中にいる何も考えない時間
1年前、東京からお気に入りの鎌倉に引っ越したばかりの金子さんは、静かな環境で思う存分、制作に没頭する毎日を送っています。「波がいい日だけはサーフィンを楽しみます」と、メリハリのきいたライフスタイルが気に入っている様子。海の中にいる何も考えない時間。そんなとき、アイデアがふと浮かんでくるそうです。
アクセサリーはお守り
sumikanekoは、パリのセレクトショップでも人気で、地元の有力紙「ル・フィガロ」でも紹介されるほどのイットジュエリー。シルバーや真鍮にゴールドのコーティングを施し、染めのような味わい深い質感が、肌になじみます。固定客が多く、中には、肌身離さず、寝る時も着用している人もいるんだそう。「アクセサリーはお守り。身体の一部になっていくような感覚かと思います」。ボンドを使わず、自然に戻る害が少ない素材にこだわっているため、安心して使えるのもポイントのひとつです。
自然が生み出すカタチ
クリエイションについて、インスピレーションを受けるものは?と尋ねると、「同じ形が連続されている様子、ミニマルな反復。フラクタルと言いますか、自然が生み出すカタチに魅かれます」との答え。フラクタルとは、自然界における一見不規則なものがグラフにプロットすると同じ形の連続であるというフランスの数学者が提唱した理論。学問の分野に限らず、デザインやファッションなど様々な分野に影響をおよぼしました。その流れを、sumikanekoのデザインも汲んでいます。
2013年秋冬はトライアングルで開運
アワとクロシェの定番に加え、ファッションブランドのように年2回コレクションを発表しています。2013年秋冬のテーマは、トライアングル。三角形は創造の基本、出発点とされ、開運、新しい展開、発展などのパワーを持っているのだとか。このジュエリーのパワーを証明しているのが、「ジュエリーデザインが本業になるとは夢にも思わなかった」というデザイナー自身のサクセスストーリー。愛着がわくジュエリーは、着ける人をハッピーにするパワーにあふれているのです。
「sumikaneko 」デザイナー金子澄恵
1993年、1年間で彫金の基礎を学び、1994年に渡英。独学でデザインを学びながら、ロンドンのセレクトショップにアクセサリーを提供。流行にとらわれないスタイルが評判となり日本の有名セレクトショップからも声がかかるようになる。
1997年に自身のジュエリーブランド“xanadu”を立ち上げ本格的にコレクションの製作をはじめる。同年、拠点を日本にうつす。2008年にブランド名をsumikanekoに。日本だけでなくヨーロッパにもファンが多い。
sumikaneko
1997年に自身のジュエリーブランド“xanadu”を立ち上げ本格的にコレクションの製作をはじめる。同年、拠点を日本にうつす。2008年にブランド名をsumikanekoに。日本だけでなくヨーロッパにもファンが多い。
sumikaneko
(取材・文 柴田明日香、撮影 斉藤有美 )