海の広がる高台の古民家は、アートと人が融合する場所。
墨屋夕貴さんは、コンテンポラリージュエリー作家として世界をフィールドに活動しています。旦那様の宏明さんは都内でコンサルティングの仕事をする傍ら、鎌倉で文化的交流の場をつくるルートカルチャーというNPOを運営しています。二人が選んだ築70年の古民家は、稲村ケ崎の海を一望できる高台にあり、3ヶ月になる娘さんとの3人の暮らしは、南からのあたたかい陽射しに包まれています。
築70年の日本家屋を引き継いで
この家と出会ったのは、4年前。宏明さんと夕貴さんが暮らす前、戦後すぐに建てられたこの日本家屋には80歳の夫婦が暮らしていて、二人で何度か訪れたそうです。「門から玄関まで、100段以上の階段を登らなければいけないこの家に暮らしていたご夫婦は、その階段のおかげか、お二人とも背筋がしゃんとしていました。こういう環境で暮らすと、いつまでも楽しく元気でいられるのかな」そう感じて、この家に住もうと決めたそうです。
「二人は同郷で、伊豆と沼津の高校に通っていて、その後、都内に住み、二人が出会った時は、偶然二人とも葉山に暮らしていました。この高台からは伊豆半島も葉山も見渡せるので、この家と出会ったのも何かの縁かもしれません」
南に海。北に山。その意外な効用
目の前に広がる大きな海と木々の景色。
「想像したよりも迫って見える海、地上の高さでは聞こえない波音も聞こえてくる。斜面のため前後には家もなく、自然に囲まれたこの環境がとても気に入ったのです。裏庭の日当たりのよい斜面には小さな畑をつくりました
「裏が山で、ちょっと奥まっているので、北風が来ない。夏は海から涼しい風がくる。日本家屋はひさしが長く昔ながらの工夫があり、冬はあたたかくて夏は涼しいんです」。
古いものと新しいものをミックスさせて
室内のインテリアは古いものと新しいものが混じり合って、洒落たなかにも心和むものがあります。
床の間には夕貴さんの彫金作品のほか、現代アートの作品も。
「ルートカルチャーや横浜トリエンナーレで直接作品づくりに関わったアーティストの作品もあります。作家がいま生きている現代アートは作品コンセプトも直接本人から聞くことができるので面白いです」(宏明さん)
「家具や雑貨は骨董屋やフリーマーケットで買ったものも多いですね。二人とも錆びたものや、古いものが好きなんです」(夕貴さん)
籐のゆりかごは、宏明さんのおかあさまがもっていらしたものだとか。
水回りは改修して、自分たちでタイルを貼りました。