湘南くらすらいふ第49回 マイケル・久美子ご夫妻のClass Lifeな暮らし

葉山から長者ヶ崎を抜けて秋谷へと続く国道134号を、ひたむきに走る男性。そんな彼の姿を視界のどこかにとらえたことのある方は、もしかしたら多いかもしれません。風を切って、淡々としたリズムで走り続けるマイケル・キダさん。その筋肉はしなやかに引き締まり、相当なアスリートであることがひと目でわかります。

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そんなマイケルさんは、モデル、タレント、俳優という顔をもち、今テレビなどで活躍をしています。一方、秋谷の高台で1000坪の畑を手がけ、収穫した野菜を使い自らが講師となって料理のワークショップを開くなど、分野を問わずさまざまな舞台で自らの人生をクリエイトしています。秋谷に住み、海と緑に囲まれたここでの暮らしを存分に満喫しているマイケルさんと奥様、久美子さんのお宅を訪ねました。

極めずにはいられない性分が、さまざまな分野へと。

マイケルさんはアメリカ、ニューヨーク州のシラキュースで10代までを過ごし、14歳から17歳までインラインスケートのプロとして活躍、当時、自らのアパレルブランドも発信していたそうです。その後、家族と共にオハイオに移り、大学時代はブレイクダンスでも頭角を現します。とにかく体を動かすのが好きで、スノーボードもプロ並み、最近では、TBSの番組「SASUKE KuroOvi」にもチャレンジするくらいの本格派アスリートです。

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もちまえの性分から、始めたら極めずにはいられない、それは体を動かすことに限ったことではなく、今の人生を導くさまざまなことに繋がります。そのひとつが料理。TV神奈川では、クッキングの番組も少し前まで担当していました。作る料理は、イタリアン、フレンチ、メキシコ、中華、タイ、韓国など。本やネットで勉強したそうです。

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 その昔、子供だったマイケルさんは、ある日、家畜の飼育がもたらす環境への弊害を知り、以来、肉を食べないことにしたそうです。お父さんがラム料理を作ってくれた日の食卓で、「今日から肉は食べない」と宣言すると、「これから自分で作るんだな」と、数日後にはベジタリアン料理の本を渡されたそうです。まだベジタリアン料理が世の中に浸透していない時代、既存のレシピはあまり美味しいものではなく、それがきっかけとなり「誰も作ったことのない、美味しいものが作りたくて」と野菜の料理を追求。肉がなくても満たされる味わいのために、スパイスや調味料にも詳しくなりました。そして畑もごく自然の流れで始めたそうです。子供の頃は家の庭で、その後もプランターなどで日常の営みとして育てていた野菜。13年前に日本に来た頃は手に入りにくかった、フェンネルやラディッキオ、ズッキーニなどを育て始め、次第に種類も増えていったと言います。

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人生初、海の近くでの生活。

お二人のご自宅からは一面、海を見渡すことができます。座った時にも海が眺められるようにとリビングの中心にステージのような台が作られ、その上にソファが置かれています。実はこれ、冬には堀コタツになるというユニークな仕掛け。二人でアイデアを出し合いDIYをしました。

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マイケルさんの畑は海側の家とは反対に、国道134号から坂を登っていった山の上にあります。10年ほど前、ほかの場所で畑を始めましたが、土地開発の事情で継続が難しくなり、5年前にこの土地を借りて畑を再開しました。車の入らない山道の先にある丘の上に、ツリーハウスのような小屋とウッドデッキが設えてあり、雨水を蓄える大きなタンクが。人の助けもあったけれど、9割はひとりで運んだそうです。

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振り向くと海と山を見晴らせる高台にいて、目の前には素晴らしい眺め。今育てている生姜や里芋の畑、ハーブフィールドや果樹園。年間で約150 種を栽培しています。収穫を待つ大根や小松菜、ハンダマの葉っぱを摘んでは味見させてくれます。そのフレッシュな美味しさに感激しつつ、アーティチョークの株分けを見学。「天気がいいときはここで料理教室を開きます。ピザ釜もあるし」と。しばらく教室はお休みしていますが、また再開の見込みもありそうです。

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世の中にひとつ残って欲しい仕事は、農業。

自分の手を使い、勉強し、実践しているマイケルさん。いっときも無駄にしたくないという様子で、動き続けています。ただそのスピードはすべてオーガニックな流れ。ライフスタイルにそれが大事だと言います。機械を使い、燃料を浪費し続けていたら地球が壊れてしまう。

「世の中でひとつ残って欲しいと思う仕事は、農業だと思います」。350日以上働き続ける農家の人は大変だと思う一方、みんな昔のように自分の食べる分を育てられれば幸せだと。「畑で土をいじることは気持ちがよくて、鳥の声や風を感じたり、自然に心を合わせることができると落ち着きます」。今後の活動は、俳優や監督もやっていきたいけれど、畑は死ぬまでずっとやりたい、デイリーライフだと言います。畑というものがベースにあって、さまざまな興味やキャリアの枝が広がっています。

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 そして奥様の久美子さんは、そんなマイケルさんとの暮らしに寄り添いながら、自分自身の人生もしっかりと築いています。仕事である「ボディ・セラピスト」と四段という腕前の「剣道」、そしてミュージシャングループOPGとsmick に所属して演奏する「スチールパン」。どれも本格的に極める姿勢は、マイケルさんに共通しています。自宅の1室は、リラクゼーション・サロン「naminone*」として展開。アロマセラピーとオイルトリートメント、指圧や足つぼ、ヘッドケアを組み合わせた施術は、口コミで広がり5周年を迎えました。トリートメントルームの片隅に、こっそり平成27年・29年の横須賀市剣道大会優勝の表彰状が掲げてあるのが、なかなか素敵です。

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ふたりだから生まれるバランス、保たれるバランス。

ふたりは、久美子さんがスノーボードで冬ごもりをしていた上越国際スキー場で10年ほど前に知り合い結婚。

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それぞれのフィールドで活躍しつつも、夏は葉山一色海岸の海の家「UMIGOYA」のスタッフとして、時々ホールやバーカウンターに入っていたり。ユニークで幸せな日々を送っています。「畑は久美子さんも一緒にやるのですか?」という質問に、「久美子もいろいろとやることがあるから・・・」と彼女の人生に理解を示すマイケルさん。一緒にいることで生まれるバランス、互いを認めることで保たれるバランス。そんなライフスタイルを教えてもらった気がします。

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interview & text : sae yamane
photo : yumi saito
coordination : yukie mori
マイケル・キダ
モデル/タレント/俳優/ファーミングアーティスト。アメリカ出身。秋谷在住。大学卒業後、ヨーロッパ、韓国を経て日本に。インターナショナル幼稚園での勤務ののち芸能活動を開始。2017年からNHKの旅番組「Journeys in Japan」に、2018年にはテレビドラマ「コンフィデンスマンJP」にレギュラー出演。料理教室や子供向けイベントを主催。英語、日本語、イタリア語、韓国語、アラビア語を話す。秋谷の海の近くに奥様の久美子さんと二人で暮らす。
instagram@Farming_artist
instagram@organic_geeks
リラクゼーションサロン「naminone*」

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