湘南くらすらいふ第50回 津田和司・実さんご夫妻のClass Lifeな暮らし

葉山にBEACH HAYAMAというアウトドアフィットネスクラブがあります。古民家を改装した、オーガニックな建物をクラブハウス兼スタジオにして、ヨガやピラティスなどのクラスを開催するほか、葉山の豊かな自然をベースに海、山でのアクティビティを提供するこの土地独特のメンバーズクラブ。この空間を運営するのが津田和司さん、スタッフのひとりとしてサポートしているのが奥様の実さんです。

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都会と田舎、両方を知ったからこその選択。

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和司さんはショートボードからロングボードまでを器用にこなし、実さんもロングボードを女性らしくスタイリッシュに乗るサーファーです。10年ちょっと前までは、ふたりの姿はほとんど海にありました。羽田で勤めていた和司さんは週末に、パートタイムでキャビンアテンダントとして働いていた実さんは波さえ立てばいつでもというほど。国内外でのサーフトリップの話も多々ありましたが、大型バイクの運転をする和司さんの後ろに乗ってキャンプをしてきたという話も聞いたこともあります。今でこそ、サーフィン雑誌などで当たり前の旅のスタイルのように取り上げられていることも、ふたりは10年以上前からやっていました。

 話を聞くと、和司さんは子供の頃からボーイスカウトに所属して、キャンプや自然の中での過ごし方などを学んできたのだと言います。そして大学時代にはライフセービングクラブに所属して、いつも海と共に生活をしていたのだとか。都会育ちだというのに、自然の中での処世術が身についているのは、そういう理由でした。実さんは、和司さんに出会ってから、海も自然も近いものになったようです。

 結婚をしてから関西空港への転勤で住んだ和歌山は、人のいない自然のある場所。関東に戻ってきても自然を求め三浦半島の津久井浜に住みます。そしてその後、葉山にマンションを購入。南に海を望む、海岸沿いの理想的な立地。「ライフセービングクラブのときは、江ノ島の西浜の華やかなビーチにいて、葉山は平穏すぎると思ったのですが、和歌山へ行って、西の海で3年間サーフィンを続けていたら考えが変わりました」と和司さん。静かで地味だけれど、自然豊かな環境がふたりに合っていると思い、結果、「落ち着いた田舎に住みたい」という気持ちと、通勤圏内の土地という条件を叶える葉山に拠点を決めました。

大きな決断は、自然の流れの中から

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パートタイムでキャビンアテンダントとして務めていた実さんは、和司さんのライフセービングでの後輩が立ち上げたBEACH HAYAMAの、オープニングスタッフとしても仕事を始めます。当時、和司さんは、往復5時間以上かけて成田に通勤していました。そんなある日、和司さんは海に浮かびながら海岸沿いにそびえる自分のマンションを思い、「これは違うな」と気づいたと言います。自然の中で心地よさを感じる自分がそこに住むことやサラリーマンであることへの違和感、ローンから逃れたい気持ち、いろいろな理由がありました。ふたりの愛着のあった住処ではあったけれど、この場所を持っていなくてもいいのかな、と考えたそうです。ちょうど早期退社の募集もあり、会社を辞めることを決断。それと共に、マンションを手放しました。

一方で、そのちょっと前から千葉の九十九里に車一台分で買える土地を手に入れて、カナダからキットガレージを輸入して、週末を使い半年かけて自分たちの手で「小屋」を立てていたところでした。水道も電気も通っていない土地。サーフィンのできる海から歩いて5分。人も少なく、自分が好きでフィーリングが合うという理由で、まさに隠れ家のような空間を作ります。その後、隣の土地を手に入れ、今度は本格的なログハウスを家として建ててもらい、内装はすべて自分たちで1年かけて完成させました。

健康で幸せであることがコンセプト

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会社を辞めた和司さんは、オープンの頃からマニュアル作りなどのアドバイスをしていたBEACH HAYAMAを本格的に手伝うことになります。安全管理的な内容も含め、前職での知識やスキルが役立つことに。そしてオープン3年目に、バトンタッチする形で社長の役職を引き継ぎます。

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「BEACH HAYAMAは健康がコンセプトです。人が何に幸福感を感じるかというと、まずは健康、そして仲間とのつながりや地域とのつながり」という和司さんは、言葉通りに運営を進める中で、ランニングにはまっていきます。BEACH HAYAMA は、日本のランニングブームの黎明期から、トレイルランやランニングのHow toをインストラクターを伴い提唱。メンバーのみなさんが走っていく中で、自分自身がその本質を知らなくてはと始めたランニングの目標がどんどん高まっていきます。

 走ることの魅力は、気持ち良さとそこから生まれる幸福感。160kmのレースを完走し、それを見守っていてくれた実さんにも同じ気持ちを味わってもらいたい、と今度は彼女のランニングを応援するようになります。実さんは少しのランニングでも膝が痛くなってしまうという難題がありましたが、「一緒にやりたい」という思いでランニングにはまっていきます。ノルディックウォーキングから始め、少しずつトレーニング。いくつかのレースを経て調整を続けていくことで、1年後にはなんと110kmのレースを完走します。和司さんはもちろん、サポートについて走ったそうです。

 実さんの目的は、自分自身の完走であると同時に、同年代の女性たちが多いBEACH HAYAMAのメンバーに、同じ体験をして欲しいということ。「それには自分が体の弱点を解消して走り抜く、そのやり方を含めてお伝えすることができれば」という気持ち一心でやり遂げたのだと言います。

好きなことへの潔さが、ライフスタイルに

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 ふたりの会話を聞いていると、クラブのメンバーをまるで家族のように思いやっています。いかに楽しんでもらうか、味わってもらうか。自然豊かなこの土地をアクティビティ、食などを含めて堪能して欲しいという思いで綿密なプランを立て、三浦半島を走るツアーなども積極的に開催しています。 

 「『好きなことを仕事にできていいですね』と言われますが、確かにそうですね」。大学では人間科学を学び、スポーツに対しての思いが仕事にできたのは本望だと言う和司さん。サーフィンも仕事に、そして元々の旅行業務も。人生のひとつひとつが束ねられ今につながっています。ただそこには彼とそこについて行く彼女の潔い決断、迷いのない進め方があったのだと思います。

 現代社会の忙しく動き続ける世界からスポッと抜けだして、自然へ、そして自らの体へと視点を向けて行く。和司さん、実さんの生き方は、レイドバックしていて有機的な部分を大切にしつつも、まさに斬新。「これから先にやっていきたいことは?」という問いかけに、「もう少し深く健康について勉強していきたい」と言います。「それにはやはり『食』。体はそこから作られ、脳や精神面にまで影響をしてきますから」と。ランニングで体の限界に挑戦しつつ、自らの体で実証していくのでしょう。

 50歳を少し過ぎたふたりは、そのライフスタイルを通して精神的にも肉体的にも、「健康に幸せに生きて行く」ガイディングライトをBEACH HAYAMA を基地に発信しています。さまざまな世代がスポーツを通してコミュニケーションをとり、「健やかに生きる」という共通言語で話せる。まるで家族のようなあたたかな居場所がそこにあります。

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interview & text : sae yamane
photo : yumi saito
coordination : yukie mori
津田和司 アウトドアフィットネス株式会社 BEACH 代表取締役 
津田実  アウトドアフィットネス株式会社 BEACH 勤務
大手航空会社の同僚として出会い、結婚。現在は、BEACH HAYAMAのある葉山と千葉に拠点をもつ。
BEACH HAYAMA

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