鎌倉くらすらいふ第44回　横澤毅一さんのClass Lifeな暮らし

都内から鎌倉へ来て6年。種苗会社を経営する横澤毅一さんは、ここに住居とともに、四季の花を楽しめる庭園と、人が集えるガラス張りのイベントスペース、ギャラリーを併設した「THE GADNA HOUSE Kamakura （ガデナハウス　鎌倉）」をつくりました。鎌倉の自然が美しく生かされたこの場所と、この日の薔薇のワークショップを訪ねてみました。

GADNA HOUSEのエントランスには、ひときわ目をひく赤いハートの木がありました。

「この木はアメリカハナズオウのフォレストパンジーという品種です。ハート型の葉っぱが出る前、春にはピンクの花がいっぱい咲くのですよ」

庭師としても活躍する横澤さんは、様々な植物に詳しく、この鎌倉の地に根ざすものを選んだといいます。

植栽のコンセプトは、まず鎌倉の気候に合うこと。

「具体的には避暑地向けの宿根草の数々を風にそよぐように配置したかったのです。土壌的に難しいものは、土をまず改良して植えました」

和洋折衷で様々な草花が植えられていますが、それぞれが共生しているを感じがして、とても落ち着く景色です。

すべての植物が落ち着いて見えるのは、横澤さんが自然の生態系を作ることを心がけたからでした。

「めだか達か気持ち良く泳ぐ池は、高低差を利用して水の流れをつくり、所々に湧き水をイメージした演出をしています。水鉢では鳥たちが水浴びをしに、平らな石の上の流れの弱いところでは、蝶や蜂が水を飲みにやってきます。春にはカエルが卵を産み、オタマジャクシからまたカエルになります」

そろそろカエルの大合唱が聞こえるのでしょうか。

洒落たガラス張りの建物では、様々なワークショップが開催されていますが、どこからでも緑が見えるのも植栽を工夫した結果。

「窓からの景観も大切に考えて、植栽しました。落葉する樹木が多いので、少し冬は寂しいかもしれませんが、それも自然ですから」

この日、イベントスペースでは、ライフスタイルプランナーの貞森美佳さんが、薔薇づくしのワークショップを開催中でした。

貞森さんが解説してくれました。

「京都で無農薬で作ってもらっている食べられる薔薇の花びらを使って、ケーキをデコレーションし、お茶をいれて。とても華やかなテーブルになりますよ」

貞森さんは鎌倉へ引っ越してくる予定で、またこんなワークショップが開催されていくのでしょう。

特別に見せてくださったのが、プライベートスペースのローズガーデン。オールドローズなど、様々な薔薇が咲き乱れる庭です。

「薔薇は、午前中にぱーっと香りを放つのです。だから、朝、庭を見ながら飲むコーヒーは最高ですよ。今年は天候の影響で２週間ぐらい開花が遅れましたが」

併設されたギャラリーには、地元の作家さんの洒落た焼き物が並んでいます。

「美しいブルーが印象的な器は、極楽寺の青木浩二さんの作品。とても人気があります。ガデナハウスでは常設で扱わせて頂いてます」

そのほか、もちろん期間限定での作家の作品も並びます。

海も山も大好きという横澤さんが、鎌倉を選んだのは7年前。

「そこから1年がかりで土壌を作り、植栽を考えて。暮らしとガーデニングの提案を一緒にできる場所にしたいなと思ったのです。横澤家はずっと種を売ってきたので、種がDNA。ガーデニングという言葉とをかけて、GADNA HOUSEと命名しました。鎌倉の中でもこの場所ですと、東京から車で混んでいるところを避けて来ることができます。皆さんに気軽に立ち寄ってもらえる場所にしていきたいです」

　四季折々の花とギャラリーを見に、あるいはワークショップに参加しに。鎌倉の楽しみがまたひとつ増えたようです。

撮影 / 斉藤有美
取材・文 / 森　綾
コーディネート / 森 幸映