鎌倉くらすらいふ第45回 水本けいこさんのClass Lifeな暮らし

鎌倉に生まれ育ち、ご実家のお庭で自然農を実践されている水本圭子(通称ロマーナケイコ)さん。
現在は主に、数種類のホーリーバジルを栽培し、それを原料としたプロダクトを製造、販売しています。一方で、イタリアに長く暮らした水本さんは、現地でイタリア人シェフに料理を学びながら、そのシェフとともにケータリングビジネスも展開。帰国後は自然農を実践する傍ら、本場で培った腕を活かし、ご友人たちに庭で育てた薬草を使った料理を振る舞い、その味には定評があります。
IMG_0275.jpg

自然とともにある暮らし

汗ばむほどの美しい秋晴れの日。

緑生い茂る一軒家の庭から顔を出し、「ようこそ!」と私たちを出迎えてくれた水本さん。
裸足の足もとに注目していると「アーシング中なの」と教えてくれました。水本さんによると、現代人は1日に15分以上、素足で土の上を歩いた方が良いとのこと。

水本さんの育てるホーリーバジル(トゥルシー)とは、インド原産のシソ科の薬草(ハーブ)で、ホーリーには“聖なる”という意味があり、ヒンドゥー語のトゥルシーという呼び名には、“比類なきもの”という意味があるのだそう。

「ホーリーバジルは各人の心身のバランス点に副作用なく戻す作用があります。部分的でなく全体的な調整を促してくれる薬草なのです」
IMG_0008.jpg
現在、水本さんは鎌倉にあるご実家のお庭で、6種類のホーリーバジルを育てています。

ホーリーバジルの国内の代表格と言えるオーヤ種。今は亡き、大矢さんという方が日本で育てやすく改良したものでスパイシーな香りがあります。ピンク色の花で甘い薫りのするカプール種。ホーリーバジルの野生種、柑橘系の香りを放つ「バナ種」。
強烈な香りで、いわゆる正統派なタイ美人のイメージの「タイバジル」。
薬効効果が高く、水本さんが“プリンセス”と呼ぶ、可憐でひらひらとした花を持つ「ラマ種」。
一般的なバジルに近く、ジェノベーゼなどの料理にも使える「グリーク」。

それぞれが瑞々しく、可憐な花を咲かせています。そしてこれらの種はどれも、海外の薬用ハーブ専門種農家から入手しているのだとか。
IMG_0056.jpg
20代のはじめ、当時IDEEに勤めていた水本さんは、「気付いたら、身の回りにある好きなものがすべてメイド・イン・イタリーだった」ことに気付き、イタリア行きを決意。渡伊後はファッションバイヤーをしながら、イタリア各地を周り、その土地でさまざまな食文化に触れました。

もともとお料理上手だったお母さまの影響で、料理や食べることが好きだったという水本さん。
あるとき、ローマで行きつけのレストランのシェフと知り合いになり、そのシェフが新たにオープンするお店を手伝うことになりました。和洋折衷のメニューを開発しているうちに、日本の野菜を育てて新鮮な材料で料理を提供したいという思いが募り、その際、バイオダイナミク農法で野菜を育てている農家さんと知り合ったことが、水本さんと自然農との最初の出合いでした。
IMG_0056.jpg
イタリアでの暮らしが17年余り経った頃、水本さんはお父さまの病気を機に帰国することになりました。
それが、今から9年ほど前のこと。
イタリアで農家さんから頂いた大切な在来の種を託されたこともあり、帰国後、日本でイタリア野菜もやってみたいという想いが強くなり、鎌倉で畑を探す日々が続きました。そしてある日、鎌倉山に理想的な畑を見つけたのです。
その畑では、偶然にもイタリアと同じバイオダイナミク農法で作物が育てられており、そこにも運命を感じたといいます。
IMG_0156.jpg
「その場所の大家さんがとても良い方で、好きなようにやって良いよと言ってくださったんです。何名かの仲間たちと畑をつくりました。
多いときには500種くらいの果樹、野菜、ハーブを育てたましたね。そのときホーリーバジルも育てはじめました。
畑で採れた野菜を調理し、ランチとして提供しはじめたり、月に一度ワークショップをスタートしたり。皆でお祭りもしましたね。
ところが3年程経った頃、大家さんが亡くなってしまい、立ち退かなければならなくなりました。
畑というのは1、3、5、7年という感覚でバランス取れていくので、3年目の畑というのは非常にバランスの取れた素晴らしい状態だったんです。そんなこともあり、とても残念でした」

IMG_0105.jpg
新たな土地が見つかるまでの期間限定で、裏長谷にあるご実家のお庭でホーリーバジルを栽培することに決めた水本さん。そして今もなお、畑探しは続いているそうです。

IMG_0001 のコヒ?ー.jpg


オールマイティなホーリーバジル

現在、水本さんが製造・販売するプロダクトは6種類。
IMG_0113.jpg
『ホーリーバジルアロマウォーター』
鎌倉の自然農の畑で育ったホーリーバジルを朝摘みし蒸留した100%天然のアロマウォーター。
芳香蒸留水は、アロマセラピーで用いる精油を水蒸気蒸留法で抽出する際の副産物。
精油成分も溶け出しているため、ほのかな香りも楽しめる。古代インドでは抗菌作用のある万能スプレーとして活用されており消臭効果もあるそう。
フェイスから手荒れ予防、フットケアのほか、ルームスプレーとしても活用できます。特に眼の疲労、鼻、口腔の抗菌作用に効果があります


『椿ホーリー』
ホーリーバジル「OYA種」と相性の良い椿オイルをブレンド。椿オイルも国産無農薬で手摘みされたもの。
紫外線予防、手足の爪抜け毛や白髪ケアなどにも効果が期待できるそう。

『ホーリーソルト』
ホーリーバジルの成分が浸透した桜色の塩。メキシカンタラゴン、ホーリーバジル6種のミックスハーブソルト。
古代インドでは、ホリーバジルと塩は抗菌作用があると言われ、口腔内のトラブルの改善や、バスソルトとして使われていた。料理に活用するほか、そのまま食べても◎

『ホーリーカカオハニー』
国産の日本ミツバチハチミツに、ホーリーバジルとメキシコの森林カカオを伊賀焼きの焙烙でゆっくり焙煎したものを漬け込んだ栄養効果の高い逸品。少量でもしっかりと効果が感じられるため、生薬のような位置づけ。


他にも、お茶やお香(期間限定)などがあります。
IMG_0186.jpg
ホーリーソルト
IMG_0183.jpg
ホーリーカカオハニー
「今はプロダクトをつくる時なのかもしれませんね」と話す水本さん。
ふとした瞬間に、プロダクトのアイデアが湧いてくるのだそう。
それぞれに用途は違えど、どれも太陽と大地のエネルギー、植物のエキス、そして水本さんの愛がたっぷりと詰ったものばかりです。

簡単で美味しい!本場仕込みの絶品料理

イタリア時代には、イタリア人のシェフとともにケータリングビジネスをしていたという水本さん。持ち前のセンスも手伝って、その腕はプロ並です。今回は、簡単に作れるおもてなし料理を二品教えていただきました。
IMG_0306.jpg
「貧乏人のキャビア」

1.なすを焼き、皮をむく
2.皮を剥いたなすに、しょうが、ホーリーバジル、塩漬けケッパーを加えて叩く
3.塩とオリーブオイル、ライムで味をととのえ完成!
IMG_0256.jpg
IMG_0286.jpg
IMG_0299.jpg
「豚のソテイ ホーリーカカオハニーソース」

1. 豚肉ロースをフライパンでこんがりと焼く
2. 焦げ目がついたら、黒酢をまわしかけ蒸し焼きにする
3. ホーリーソルトで味をととのえる
4.お皿に盛りつけ、ホーリーカカオ、モスタルダ(北イタリアでよく使われるフルーツをマスタード風味のシロップに漬けたもの)を添えて完成!
IMG_0327.jpg
IMG_0327.jpg
どちらも見栄えがよいのに、あっという間にできてしまう優れもの。そして何より、素材の味が引き立っていて美味しい!誰の料理でもない、水本さんらしいお料理です。
IMG_0366.jpg
今後は、まずは新たな畑を見つけ、そこでで引き続き自然農を続けながら、プロダクトも合わせて広めて行く予定。ゆくゆくは食事を提供したり、料理教室を開催したりと、夢は膨らみます。

自然とつながりながら、豊かですべてが循環する水本さんのライフスタイル。すべてを真似るのは難しくても、私たちの暮らしのなかにも取り入れられそうなヒントをいただきました。



photo : yumi saito
interview & text : asami tomioka
coordinate : yukie mori
『エルボステリア鎌倉山』
FBページ:エルボステリア鎌倉山FB
連絡先:yama0467@gmail.com

※次なる新商品、和紙とホーリー染めの財布、バックを考案中。
ホーリー茶は毎年12月末から販売。お香もリニューアルで来年発売予定。

Life Style

Follow me!