鎌倉くらすらいふ第46回 武藤裕子さんのClass Lifeな暮らし

海と街を一望できる鎌倉極楽寺の高台に佇む、クラシカルなマンション。家主は、イギリスのデザイナー、テレンス・コンランが世界中から厳選した家具やインテリア雑貨を扱う『THE CONRAN SHOP』に16年務めたという武藤裕子さん。武藤さんの審美眼によって完成した自宅は、ハイセンスなインテリア雑誌の1ページのよう。

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家づくりに関して、「私のなかの“こうしたい”という想いを、内装を手がけてくださった方にすべて伝えました」という武藤さん。

長い間最高の住環境やインテリアに触れ、扱ってきた武藤さんにとって、今回の自宅づくりには特別な想いがありました。16年務めた『THE CONRAN SHOP』を退職し、鎌倉へと移住。武藤さんにとっては、公私ともに新しい生活のスタートという節目ともなったからです。

“私らしい暮らし”をはじめる

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「コンランショップはすごく好きな職場でしたが、色んなタイミングもあって退職しました。それを機に以前から好きだったアクセサリーの事業をはじめたんです。ちょうどその頃、この物件とも出合いました。

「古いので色々と不具合はありますが、逆にそれがいい味になっていくなと思ったんです。自分の好みに合うものを手入れして丁寧に使いたいなと思い、購入を決めました。もともと横浜に住んでいたので、母とはよくこの辺りに遊びに来て、散歩したりしていました。両親もこのエリアを気に入っていますし、拠点ができたことを喜んでいます」

シンプルで使い勝手の良い建物とはいえ、築年数がかなり経っており、全体的にリノベーションは必要だったそう。信頼できるハウスメーカーに今回の内装を手がけた葉山在住のアイアン作家の橋本大輔さんを紹介してもらい、建物のもつ良さは活かしつつ、武藤さん“らしさ”を全面に打ち出しました。

「私の好みを具現化できる方に出会えたことは本当にラッキーでした。家づくりに関しては、“こうしたい”という自分のリクエストをすべて伝え、自分でできるところはDIYしたり。壁は、仲の良い友人たちと4人がかりで塗ったんです。みんな自分のことのように一生懸命塗ってくれて…。それも良い思い出ですね」

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圧巻なのは、大きな窓一面に広がる景色。極楽寺、稲村の町と海を一望できる眺望は素晴らしく、何時間でも眺めていたくなります。10分おきに通る江の電も、この部屋からは、まるでミニチュア電車のように可愛らしく見えます。

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「やはりここの良さはこの眺め。海辺のシャビーでフリー&イージーな感じにしたいというイメージは早い段階で固まっていました。カチっとしたものではなく、手抜き感というか、気が抜けた感じ。あとは本物の素材を使うことにこだわりました。そういったイメージを、この家づくりに携わってくれた人たち皆さんと共有できたことはとても良かったです」

この部屋は私にとっての「作品」

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武藤さんが長年務めた『THE CONRAN SHOP』は、世界中から選りすぐられたハイセンスなインテリアアイテムが集結する場所。そのような環境で磨かれた審美眼は、何にも勝る強力な判断基準です。

「コンランショップという素晴らしい環境のなかで、たくさんの家具やインテリア雑貨を見てきたことで、自分のなかでの好みが明確になりました。働いていた16年の年月のなかで、絶対的なもの、一生残るようなものが淘汰された感じです。そういう意味では、今回の家づくりは自分にとってひとつ『作品』を創り上げたような気持ちですね」

昔ながらの床や窓ガラス、ドアノブなど、古き良きデザインはあえて残し、部屋のアクセントに。どこか懐かしくもあり、でも今の時代には逆に新しくも感じられます。

「新築のマンションを購入して、内装は自分で手を加えるとしても、こういう風合いにはなかなかできませんよね。古いからこそ味がある、そこに惹かれました。シミや汚れのある床も、逆にそれが良いかなって。家具もこの家のために新調したのはダイニングテーブルだけ。他は、以前から使っていたものをこの家に合うようにDIYしました。例えば、部屋の中心にあるチェストは、長年使っていたものを白いペンキで塗り直したんです。リビングにある椅子は、近所のアンティーク家具屋さんで見つけました。購入時にはクッションがなかったので、コンランショップでオリジナルのシートクッションとクッションを誂えたんです。それだけでとても座り心地の良い椅子になりました」

部屋にあるものすべてから、それぞれがそこに在るべき意味が感じられる…。そんな洗練された空間です。

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ヴェネツィアングラスの女性作家との出合い

現在はここ鎌倉での暮らしに軸をおきながら、『pecora』というアクセサリーセレクトブランドの事業にも力を入れているそうです。

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リング Vescovo Roberto 9,200円(税抜き) ロングネックレス Braided beads 8,500円(税抜き)

「まだコンランショップで働いていた頃、イタリアでヴェネツィアングラスの女性作家に出合ったのがそもそものきっかけです。ヴェネツィアングラスというと、ゴージャスでデコラティブなイメージがありますが、繊細でシンプルなデザインだからこそ、ガラス本来の存在感や温もりなどが伝わります。今は、私が日本人に合うようなデザインをディレクションし、オリジナルアクセサリーを作ってもらっています」

すべてが徒歩圏内にある、居心地の良い暮らし

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会社員として働いていた頃は、仕事は楽しかったけれど忙しい毎日だったという武藤さん。豊かでリッチな生活をお客さまに提案する仕事内容と、自分自身の生活との間に乖離があることを感じていたといいます。

「極楽寺での暮らしは、徒歩圏内に温泉があり、買い物もでき、美味しいレストランもある。まるで自分の庭のなかにすべてがあるみたいなんです。鎌倉の中心地とはまた違った雰囲気もすごく居心地がいいですし、ここには、自分が納得できるライフスタイルと仕事があるなって感じですね。母もこの土地を気に入ってくれ、よく遊びに来てくれるんです」

今後は、今の事業に力を入れながらも、大好きなインテリアも仕事にしていきたいと考えているそう。

「インテリアに関しては、友だちからもよく相談を受けるんです。これまで培ってきた経験や情報がありますので、そういったことをアドバイスできればと思っています」

部屋はそこに住む人を表すとも言われるように、その人の思考や生き方までも反映されるもの。シンプルでありながら温かみを感じられる武藤さんのお部屋から、武藤さんのお人柄そのものを感じられました。

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photo : atsushi sanada
interview & text : asami tomioka
coordinate : yukie mori
『pecora』
※鎌倉では「M2プリュス」、「patrone」で購入できます。

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