湘南くらすらいふ第58回 芦沢さゆりさんのClass Lifeな暮らし

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鎌倉、七里ガ浜で波がある日には、必ずと言っていいほど海に浮かんでいる。サーファーの多くが憧れるそんなライフスタイルを実践しているのが、ヨガインストラクターで、アーユルヴェーダの講師でありプラクティショナーでもある芦沢さゆりさんです。七里ガ浜の「正面」と呼ばれるサーフポイントから、歩いて5分のマンションの一室。リビングとダイニングキッチンがシームレスにつながる部屋の窓からは、キラキラ輝く海が望めます。春以降は、オンラインを主流にレッスンを開きながら、その合間にサーフィンを楽しむさゆりさんに、このライフスタイルを手に入れるまでの話やヨガやアーユルヴェーダをベースにした心と体の調え方を聞かせてもらいました。

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10月の半ば、まだ夏の名残の日差しが降り注ぐマンションのエントランスで、満面の笑みで出迎えてくれたさゆりさん。少し前に宮崎へ行っていたと言うだけに、肌はこんがりと灼け、タイダイのドレスがとてもよく似合っています。部屋まで案内され中に通されると、「あら?!」と思うほど建物の外観とは雰囲気が違いちょっと驚かされます。スケルトンになった室内は天井が高く、コンクリートの質感を生かした空間にセンス良くウッド素材が効いています。中古の物件を自分たちのテイストにリフォームした一室。ここでパートナーと元保護犬nikoと一緒に暮らしています。

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自分に合うものを探して、アーユルヴェーダへと

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 リビングの片隅にはロングボードが5〜6枚横たわり、まるでインテリアを飾るアイテムのよう。ライフスタイルがサーフィンを軸に巡っているのが、一目瞭然です。ダイニングテーブルとキッチンが一体化したカウンターが部屋の中央に置かれ、その横のリビングスペースには海に向かって大きく開かれたベランダへのガラス戸があります。「さっきまでそこでオンラインのクラスをやっていたんです」と言いながら、椅子に腰掛けて話始めるさゆりさん。弾むような声と軽やかな口調が、心地よく耳に響きます。

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 かつて保険会社に十数年間勤めていたさゆりさんですが、会社員だったという片鱗があまりみつかりません。「忙しく働く毎日が苦に思ったことはほとんどない」と言うのは正直なところなのでしょう。その当時ヨガにはまってしまい、始発でクラスに通いそこから出社していたというのだから、潜在意識で求める何かがほかにあったのを知っていたのかもしれません。それは20代後半のこと。さゆりさんは東京に住み、会社の仕事と並行して、湘南、藤沢のサーフショップでヨガを教え始めます。最初に学んだアシュタンガヨガの師匠の影響でローフードのライフスタイルにもストイックにはまっていったそうです。それは「食」と心や体との関係に目を向けるきっかけになりました。さらに「生命」そのものへの好奇心から自分に合うものを追及していった結果、アーユルヴェーダに出会いました。

 会社員を卒業する1年ほど前から、新たな人生に向けてアーユルヴェーダの世界観や生命観の哲学、食、そしてボディトリートメントなどを真剣に学んだそうです。そしていよいよフリーになったときには、ヨガという柱に加え、アーユルヴェーダという柱が立ちました。話を聞いていると、さゆりさんの前向きな姿勢が伝わってきます。きっと教室の参加するみなさんもそんな彼女に元気をもらい、励まされるのでしょう。新型コロナ感染対策のため、オフラインの教室は都内は辞め湘南のスタジオのみ。ほかはすべてオンラインに切り替えたという潔さに、清々しさが感じられます。

「瞑想は散っていた気を自分の中に戻す時間です」

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 湧き上がる元気は、どこからきているのだろう?と思っていると、「今、朝晩の毎日瞑想のクラスを担当しています」とワクワクした様子で、今の自分の興味のあることを熱心に説明してくれます。瞑想が深いヒーリングに繋がっているのだと。「動くのもとても大事なのですが、何より自分に戻る時間をつくるのが大切。瞑想ではそれが体験できるんです」。実はさゆりさん自身、今年の5月に友人のインスタライブで瞑想を知り、以来毎日続けていて、「自分の見ている世界が変わる」という体験をしました。 

 瞑想による効果は具体的には人それぞれかもしれませんが、もともとヨガやアーユルヴェーダの鍛錬をしてきたさゆりさんにとって、その素地とつながるものが明らかだったのでしょう、「散っていた気が自分の中に戻ってきて、今日も最高な1日だと思えるんです」と自身の感覚を教えてくれます。それを早速多くの方々に体験してもらおうと、瞑想のクラスを始めました。

 「心は揺れ動くことが仕事。それを止めようとするのではなく、観察すること、揺れることに気づくことが瞑想なんです。気を外に向けてないと生きていけないけれど、気が散ったままでは自分の軸に戻れないままでよく眠れない。1日の終わりには出かけていった気を内側に戻してゆっくり休む」。それができるのは自分しかいないし、自分軸に戻ることで豊かな1日になるとさゆりさんは語ります。「スタジオだと、感情が溢れて泣きたくなっても我慢してしまったりして、一人になれるオンラインのほうがフリーなので、瞑想するにはいいのかもしれませんね」と。クラスにはすでに100名近い方々がジョインしているそうです。

「これがしたかった」と思える暮らし

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なるほど、ヨガはもちろん日々の心のリセットがさゆりさんの元気の素なのでしょう。そしてサーフィンのある暮らし。「会社員だった十数年の時間があったからこそ、今がある。生活は180度違うけれど、自分の中では当時が嫌だったとは思っていないんです。ただ今は『これがしたかった!』と心から感じています」。都内で毎日遅くまで仕事をしていた日々には想像のつかなかった、自然を肌で感じながらのライフスタイル。サーフボードを持って海まで行き、波乗りをして、戻って打ち合わせ、そしてまた海に入る。心のどこかでずっと憧れていた生き方をしていることが元気につながっているのです。
 「海まで歩いていけるところ」という条件で、パートナーと共に家を探し始めたときには、七里ヶ浜に住むなんて理想にも登らないほどの夢だったと言います。けれどたまたま紹介されたこの物件を迷わず即決。リフォームはほぼ自分たちの手で行ないました。天井を剥がし、フローリングに床材を貼り、白い壁も塗りました。デザインはパートナーが担当。彼が住んでいた家で使っていた木材が、リサイクルされてアクセントのように天井や壁にあしらわれています。

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 毎週末、サーフィンやヨガの仲間に手伝ってもらったそうです。今は、その仲間たちが自分たちの家のように集まる場になっているそう。海辺の暮らしならでは気のおけないつながりです。家の中心にウッディな存在感のあるキッチンカウンター。みんなが集まる場として、また料理の講座などができることを見越した選択でした。部屋はこのほかに、寝室と荷物や衣裳を入れたクローゼット部屋。無駄なものが外に出ていないすっきりとしたインテリアは、そのふた部屋を有効に利用しているからなのでしょう。上手に暮らしています。

日々の料理はアーユルヴェーダのコンセプトに沿って

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日々の料理は、アーユルヴェーダのコンセプトを大切にしつつも、パートナーの好みも考えてあまりスパイスを使わないものにしていると言います。アーユルヴェーダでは6つの味、「甘味、辛味、酸味、苦味、塩味、渋味」を一度の料理でとるとエネルギーが調うと言われています。「和食だと全部揃うんですよね」と、改めて和食のよさを感じているよう。話しを続けながら、アーユルヴェーダの料理教室で教えているカレーを作ってくれました。ほどよくスパイスの効いた野菜たっぷりのカレーは、肩に力の入っていない優しい味。(無水カレーレシピ

水面に弾む光のような話し声。ときおり上がる笑い声と熱い思い。現代社会の構造も知り、自然を体感し、宇宙の在り方を学んでいる彼女が、今発信していることはとても軽やかで深みがあります。きっと多くの人の心に触れ、元気のエッセンスとなっていくのでしょう。

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interview & text : sae yamane
photo : yumi saito
coordination : yukie mori 
芦沢さゆり
Suute haite主宰 ヨガインストラクター
神奈川県出身。2015年、20年近く続けていた会社員生活から、以前より学び、教え始めていたヨガとアーユルヴェーダを中心とした生活に転換する。現代人に必要な癒しとセルフヒーリングの知恵を伝えることをテーマに、アシュタンガヨガやリストラティブヨガを主流に独自の経験から構成したメソッドで、ヨガや瞑想の教室を開く。講師として、トータルライフセラピストとしても活動範囲を広げている。
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